【完結】(R18)先生、今日のレシピはなんですか？

番外編 男たちの野望 ～祥を取り巻く男達の実情を描く！～

エピソード１ 鹿島の気持ち

　
♡おまけの番外編です♡

　料理研究家城山祥のお料理教室に集まった男たち。彼らの野望をご紹介します！

・・・　・・・　・・・　・・・　・・・　・・・　・・・


　世話好きの妹が、俺のために料理教室を予約してくれた。いつも仏頂面の俺だから、料理くらい出来ないと結婚できないというのが応募の理由だ。俺が仏頂面なのは刑事の仕事柄仕方ないし、結婚なんか全く興味がない。
　しかし、婚活目的なら、何故男性限定の料理教室をあいつは選んだのだろうか。もしかして、俺の趣味嗜好をわかってるのかもしれない。

　物凄い倍率を勝ち抜いたと聞いてはいたが、あまり行く気はなかった。だが、妹が知ってるのかどうかは別にして、出会いもあるかも。と、僅かな下心を抱きつつ教室に向かった。
　あった……。衝撃の出会いがそこにあった。なんと、ここの先生、てっきり男好きの女性教師と思っていたが、めちゃくちゃ可愛い男の先生だったんだ！

「城山祥と申します。これから一年間、よろしくお願いします」

　キッチンルームとかいう、生徒用の調理台が二つと、先生用の大きな調理台が一つ、の綺麗な教室に俺ら８人の生徒は集まった。老若取り交ぜた、職業もバラバラな面々だ。
　そこににこやかな笑顔を振りまく先生。背筋をピンと伸ばし、スリムな体には長い手足がすらりと伸び、小さな顔が乗っている。切れ長の双眸に長い睫毛。中性的な美少年というに相応しい顔立ちだ。

　――――顔もタイプだ！

　俺は心の中でガッツポーズした。心から妹に感謝。
　俺は先生に嫌われたくない一心で一生懸命予習して料理教室に挑んだ。いつも柔らかな笑顔で俺を見てくれる先生。いや、もうたまんないんだけど！

　――――先生はどっちなんだろう。やっぱりノンケなのか。昼間の教室では物凄くモテてると関西弁の野郎が言ってた。

　俺はそれを何とかして確かめたかった。もちろんノンケだろうが、アタックする気は満々だったが、やり方があるってもんだ。

「鹿島さん、ほら、こうして……」

　そのチャンスは三回目のレッスンで突然訪れた。熱々のジャガイモの皮むきに辟易していた俺に、先生が手を貸してくれたんだ。図らずも触れる俺と先生の綺麗な手。先生はハッとして俺の方を見た。

　――――可愛い！

　先生は頬を赤らめ、手を引っ込めた。俺はその時確信した。先生はノンケじゃない。多分、ゲイだ。その日の肉じゃがの味を、俺は全く覚えていない。

　教室を出て、しばらく逡巡した。このまま帰るのが物凄く惜しい気がしたのだ。俺のハートはダッシュした時みたいに激しく打ち、血圧がどんどん上がる。もう我慢も限界だった。

「あの、忘れ物しました」

　取って帰って、俺は先生の家に上がり込む。俺の前を歩く先生の後ろ姿。飛びついて襲いたいっ！

「あの、何を忘れました？」

　おずおずと振り向いた先生。その花びらのような唇を見たら、俺を抑えていたものは吹っ飛んだ。

「んんっ！」

　先生をひしと抱き、唇を重ねる。なんて柔らかで甘い唇なんだ。俺は夢中で吸い付いた。先生も俺を受け入れるように、抵抗もせず、じっとしてくれたんだ。

　その日、意気地のないことに、俺はその場を逃げ出すように帰っていった。だが、これで俺の勘が当たっていたことはわかった。と、その時、一つの疑問が頭をもたげた。
　教室には、俺と同世代の男が三人いる。あいつらも、もしかして先生目当てなんじゃないか？　応募には写真データを送ったと妹が言っていた。まさか、城山先生、自分好みを揃えたのでは。

　俺はそう思うと気が気でなかった。その日から、ひそかな料理教室の恋愛バトルが始まった。