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最終話

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 夏に引っ越しなんてするもんじゃない。脱水症状になるよっ。でも、早朝から鹿島さんが僕の前を何度も行き来する姿を見るのは嬉しい。
 ノースリーブのTシャツは、鹿島さんの逞しい肩や腕をこれでもかと披露してて、そこに汗が浮き出てる様に、僕はキュンキュンしてしまった。

「祥、ぼさっとしてないで働きなさいよ!」

 手伝いに来てくれた舞に怒られてしまった。こう見えても僕は力もちなんだ。意外に料理って腕力いるんだよね。僕は重そうな段ボール箱をいくつも運んで頑張った。

「無理しなくていいぞ、祥」

 わあっ。鹿島さん、優しい! 舞に聞かせてやりたい。だけど、ここは僕だって役に立ちたいんだ。

「大丈夫。早いとこ済ませてしまおう」

 ようやく敬語を使わなくなった。でもまだ、ちょっと照れちゃう。



 荷物もそれほど多くなかったし、朝早くから動いたおかげで、昼前には完了した。僕は手伝ってくれた舞や、鹿島さんのお友達に昼ごはんを振舞った。これこそ僕の腕の見せ所だもんね。

「祥、鹿島さんはホントにあんたのこと好きみたいだから、大事にしなさいよ」

 帰り際、舞が僕に言う。

「わかってるよ。舞に心配されるようなことしないから」
「本当にねえ。あんたみたいな好きモノ、苦労するって忠告したんだけどね。物好きな人だよ」
「酷いなっ! まあ、否定できないけど」

 舞はからかうような口ぶりから真面目な表情に変え、こう続けた。

「これを逃したら、あんた一生、誰とも寝る男になっちゃうんだよ。わかってるよね」
「わ、わかってます」
「私は……祥に幸せになってもらいたいんだよ。一度は好きになった男だから……」
「舞……ありがとう……」

 ずっと舞には感謝していたけれど、こんな風に思ってくれてたなんて知らなかった。僕は涙ながらに彼女の手を握った。

「これからも、友達でいてください……」
「馬鹿ね。親友だよ。言われなくても、目、光らせてるから」

 ふっと和らかな笑顔とともに舞は言った。僕は握った手を放すことなく、何度も頷いた。


 二階の僕の隣の部屋が鹿島さんの部屋になった。元々客間として使っていたから、クローゼットもあるし、広さも十分だ。

「寝室は別に欲しいな」
「寝室?」
「ああ、お互いの部屋は、そうだな、まあ荷物置き場みたいなもんでいいだろう。寝室には大きなベッドを置くんだ。だって俺達、別々に寝るわけじゃないだろう? ずっと一緒にいたい」

 なんて嬉しいことを言ってくれるんだろう。僕のも鹿島さんのもベッドはシングルだ。そうだ、ダブルベッドを買ってこよう。出来るだけ大きなベッドがいいな。

「それはそうと、今日は疲れたな。どうだ? 横にならないか?」
「う、うん。なる!」

 とりあえず今日は、鹿島さんが持ってきたベッドに二人で横になった。その後は……。

「あんたは俺だけのモンだから、手錠嵌めてやる!」

 なんて、慣れないやり方で奮闘してくれたってことだけは書いておくね。





                            完結




最後まで読んでくださりありがとうございます。番外編をご用意していますので、よろしければお立ち寄りください!

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