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第18話

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 鹿島さんの体、大きくて引き締まってて胸板が厚くて、要するに惚れ惚れするほど素敵なんだ。腕も肩もしっかりしてる。だけどごつ過ぎなくてしなやかな獣のよう。その中で包まれるように僕は抱かれている。なんだか夢見てるみたいだ。

 応募者のプロフ見てるときから、ずっと気になってた。鹿島さんには絶対来て欲しいって思ったんだ。
 応募書類にスナップショットのデータを送ってもらうなんて、どこのオーディションだって舞には言われたけど、自宅教室の場合は女性も男性もこれは譲れない。でも、貫いて良かった。こうして、鹿島さんに会えたんだもの。

「今度、どこかに出掛けないか?」

 うっとりしてる僕の耳元で、鹿島さんがそう囁いた。

「はいっ、喜んで。僕、お弁当作ります」
「祥のお弁当か。それは贅沢だな。よし、決まりだ」

 デートだ。鹿島さんはお休みが不規則だから、なかなか時間が取れない。だからこうしてレッスン終わりに会ったりしてるんだけど、二人で外に出掛けられるなんて幸せだあ!

 次の鹿島さんの非番が僕のお休みの日と重なってた。初夏の海辺に行くことが決まって、僕は有頂天だ。楽しみで仕方ない!



 楽しいことがあると仕事がスイスイ進む。教室もウィチューブも雑誌の取材もテレビ出演も何でも来いだよ! これが恋だよ(笑)!

「随分とテンション高いわね。はあ、もう現金過ぎて目も当てられないわ」

 ずっと口角上がりっぱなしの僕に、舞の冷めたお言葉が。色々心配かけてるので、何も言い返せないけど。

「ごめん。でも、幸せなんだよ……」
「はいはい。幸せなのはいいけど、また泣きついてこないようにしてね。めんどくさいんだから」

 め、めんどくさい! ああ、でも思い当たることが星の数くらいある。たくさん恋して、フラれて、破れて……。その度に舞には話を聞いてもらったんだった。
 いっつも自業自得だって怒られたけど、結局慰めてくれて。優しいところもあるんだよ。

「こ、今度は大丈夫だよっ。鹿島さんとはきっと長続きするって思う」

 うん、きっと。

「そう願ってるわ。あんた、節操なくモテるし、節操なく惚れるから」

 うう……。最後の言葉が重すぎる。惚れっぽいのは昔からなんだよ。でも、これからは鹿島さん一筋でいくんだ。てか、いかなきゃ!

 そう固く誓ったのにも関わらず、海辺のデートの前に、僕はまた過ちを犯してしまった。

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