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魔性のラスボス、キャンディス

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 場所は全ての拳闘士たちにとっての聖地、フィロソフィーコロッセオ。キャンディスが歴史と伝統ある拳闘士たちの闘いを己の身体、そして、魂で体感したいと、自ら申し出てきた。また、キャンディス側の譲渡とも呼べる条件もあり、話しはとんとん拍子に決まっていき、俺とキャンディスとの対決はあっという間に決まってしまった。
 準備期間はたったの一ヶ月。もちろん、これは相手のキャンディスも同じことではあるが。彼女はよほど俺に勝てる自信があるのか、それとも何か卑劣な計画を企んでいるのか。いずれにせよ、俺は不安を感じてしまう。
 いいや。後者の方は考えるのはやめにしよう。試合をするのは俺とキャンディスの二人だけであるが、その関係者、共に闘う仲間はそれぞれの陣営にたくさんいる。もし、ブラックモアが悪巧みを企んでいるのなら、そのことは他の人たちに任せておけば良い。彼らならきっと暴いてくれる。仲間のことは信頼しているのだ。
 俺はドラゴンAだ!くだらないことは考えずに、キャンディスとの闘いだけを考えることにしよう。きっと彼女は俺に勝つ自信がある、あるいはその算段があるはずだから。
 俺はドラゴンAとして、生涯最大級の強敵との闘いに向けて、短い時間内でしっかりと身体を鍛え、技を磨き、試合で最大限のパフォーマンスが出せるよう調整していく、ただそれだけだ。

 おおおぉぉ!ピュぃぃ!パンパンパパパン!観客席からはどよめきのような歓声、口笛、手拍子。様々な興奮の音が響いてきている。俺は適度の緊張感、そして最高レベルの集中力と試合への気合い、おそらく今後のこの世界、スクエアジャングルの情勢であり趨勢が大きく変わるであろう、本当の意味での世界タイトル戦へ臨むに当たって、最高のメンタル状態で入場していく。
「ドラゴンA!」「ドラゴンA!」「ドラゴンA!」「ドラゴンA!」
 フィロソフィーコロッセオという拳闘士の聖地であり、旧勢力の総本山とでもいうべき場所ということもあるけど、東西南北下層中層上層、あらゆる所の客席から俺の名を叫び、俺の勝利を期待してくれている。
 キャンディスとの対決が決まってから一ヶ月、あっという間であったけど、準備はできていたし、彼らのためにも負けないぞ!と強く思い気合いを高めていくぜ!

 入場している時の気合い入りまくりだった俺は一体どこにやら……。
 ドキドキドキ……。なんて綺麗なんだ!美しんいんだ!いやいや、対戦相手にも関わらず色っぽすぎだろ!キャンディス!
 妻子がある身にも関わらず、俺は15歳も若い17歳の悪徳と背信の令嬢の色香、女としての美貌に完全に目線を吸い込まれてしまっていた。心を、ファイティングスピリッツを、拳闘士としてのプライドを、ドラゴンAとしての誇りや威厳までも、17歳の妖艶ささえ漂わす美少女の魔力めいた美貌に奪い去られてしまっていた。
 胸元が大胆にオープンされた真っ赤なドレス。まん丸な文字通り乳白色の二つの胸。人間の身体の確か8、90パーセントは水でできているはずだけど、彼女の乳房だけは水ではなくミルクでできていそう。ミルクとザクロが一体となったザクロミルクのような甘い香りが、少し距離のある俺の所まで広がってきている。
 いや、これは俺の妄想か。キャンディスのおっぱいが見ているだけであまりに甘そうだから。目が嗅覚器官になってしまうほど。
 上腕や脇は真っ白な素肌が露出しているが、前腕は白に近い薄いピンク色の長手袋をはめ込んでいる。それがまたなんとも艶めかしい。スカートの裾はブアーと広がっていているが、それゆえ脚の長さが露わになってもいる。
 
 ブラックモアという苗字をしているくせして、どんな暗闇の中でも光明を照らしてくれそうな黄金色に輝くブロンドヘア。長い髪は闘っている時に邪魔にならないようポニテにしているが、それがまた色っぽさにつながり、俺の心をかき乱してくれるのだ。
 長くて光量の多いブロンドの中心点にある貌は長身という理由もあるが、かなりのコンパクトサイズであった。そして、その小さめの貌に納められた赤い色の眼も長く高い鼻梁も赤く塗られた唇も、各パーツだけで十分魅力的なのに、寸分の狂いもない配置の仕方によって、とんでもない別嬪美貌になっているのだ。別嬪というより別次元の美しだ!
 はあはあ。キャンディスはそもそも人間なのか?妻も母も女神のように美しいが、キャンディスの美貌は女神クラスでありながらそれでいて魔性がプンプン凄いのだ!ベスや母さんの清楚さとは真逆の魔性の色香に、俺はすごく引き寄せられて男として興奮してしまっている……。
 

 

 

 
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