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なんとか素手での戦いへは持っていくことができました

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「ここが貴様の墓場となるのだ。アミーゴ。いや、アクセル・アイアンバトラー!かははは!」
「やっぱり、俺がただの新緑のケヤキマスクの中の人ってだけではなく、その正体まで知っていたみたいだな」
「その通りよ!かははは!」
「さすがはブラックモア配下の者。その素性調査能力には敵ながら恐れいるぜ。っていうより、恐ろしいな、恐ろしすぎだぜ!」
「かははは!よもやあのアイアンバトラーの若旦那ともあろう者が、こうまでブラックモア様を恐れていたとはな!ブラックモア様が天下を取る日、つまり世界征服の野望を成し遂げる日は近いようだぜ!かははは!」
「ありがとうな、黒づくめのおっちゃん。自分からブラックモアの手先だと教えてくれて」
「げえ!しまった!」
 バカなやつだ。おだててあげたらこうもあっさりと正体をバラしてくれるとは。しかも何の言い繕いもしないし。これは貴重な情報になるな………
 って、俺の窮地は変わらない。閉鎖された赤レンガ倉庫の中。埃たつ木の床に、マンパンに膨れ上がった麻袋の山。
 そして、黒づくめ意外に10人ほどの手下たちがいる。それともう一人、遊び人風の女。背丈はそんなに高くはないが、小柄で細身ながらもほぼビキニだけ衣装から覗く手足やお腹周りの筋肉は引き締められている。女狐のような雰囲気を漂わせながら、戦闘時には女豹にでも豹変するのかも知れない。

「貴様は俺たちがブラックモア様の配下の者だと知ってしまった。ますます生かしちゃおけなくなった。というわけで、今から死んでもらうぜ!」
 黒づくめはダガーを抜き出す。さして戦闘能力は高くなさそうだけど、肉厚で刃渡りもそこそこある刃物には流石にビビる。
「多勢に無勢な上にそんな強力な刃物まで持ち出すなんて、随分とビビりだな。おっちゃんとはいえ、男として恥ずかしと思わないのかよ。全く、良い年こいて情けねえよな。あああ。情けねえったらありゃしねえ。男だったら素手でかかって来いや!」
「よくもそこまでほざきやがったな!そんなに言うんだったら素手でやってやるぞ!」
 黒づくめはブチ切れる。最近のおっちゃんは頭脳がお子ちゃまで助かるよ。あ、これスクエアジャングル、地球共通ね。

「お望み通り、正々堂々素手で勝負をしてやるぜ。いや、命を奪ってやるぜ、アミーゴ!」
 そう意気込む黒づくめであるが、俺と彼の周りはグルリと彼の手下が囲っている。ランバージャックデスマッチ状態だ。ランバージャック、つまり木こりたちは世にも恐ろしい試合形式を思いついたものである。
「実質的に多勢vs無勢じゃないか!これのどこが正々堂々としているんだ?」
「図に乗るなよ、アミーゴ。わざわざ素手で戦ってやるだけ俺に感謝するべきだろう!歴史的にみて全くの同人数の戦いなんて存在してないんだよ。何より、ここは俺たちのホームだからな。俺が有利な試合形式になるのは当然だろう!」
 流石にこれ以上は妥協してくれないようだ。まあ、彼が言うように素手で戦ってくれるだけ感謝すべきなのだろう。

「どりゃー、そりゃー、あちょー」
 黒づくめは大ぶりのパンチとキックを打ってくる。足は案外高く上がっている。まあ、荒事を稼業にしているので身体能力は普通に高くて当たり前だし、戦闘というか相手を痛めつける術を持っていもいるようだ。
 だけど、格闘技のプロである拳闘士の俺からみたら、身体能力が高いだけのハッタリ野郎、パンチやキックの当て方や格闘技バトルの展開や成り行きを読む能力、どのような闘い方をしていくか展開に合わせて組み立てる思考力などは欠けている。
 と、偉そうに分析してみたけど、今の俺は圧倒的に不利なディスアドバンテージがある。多勢に無勢ではない。ま、それもそうなんだけど、今の俺には酒の酔いが覚めきっておらず、吐き気がするのと足元がフラフラしているのだ。あと、頭も結構痛い。

 ちょい酔っ払っている状態でも黒づくめの攻撃を喰らうことはなかったが、足元がふらついている上に床が汚くて埃が立ち、凹凸もかなりあるのでなかなか苦戦してしまっている。
 そんな時、俺は小麦粉かなんかが少しばかり積もっている場所を踏んでしまい、身体のバランスを崩してしまった。そして、場外の方へ飛び出して行ってしまったのだ。
 黒づくめの手下たちが囲んでいる方へと。
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