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マスク

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 さて、スカル野郎をどうやって倒そう?打撃技もダメ、スリーパーでの窒息もダメ、かわいそうだけど足か腕の関節か骨に重大なダメージを与えて、試合続行不可能な状態にしてしまおうか?頭部や腹部へのダメージは命に関わってくるけど、足や腕ならそこまではいかないし。
 ビキィ。ビリブルビリブル。俺のキックがスカルの膝の真横へとヒットする。その破壊の衝撃波が跳ね返ってきて俺の足へと帰ってくる。
 ビキィ。ビキィ。執拗なまでの俺の鬼攻撃に観客たちは恐ろしさに飲み込まれ、沈黙してしまう。ヒールのようになってしまうかも知れないけど、致し方ないだろう。
 あと、もう少し。スカルの膝へ大きなダメージを与えられるはずだ。流石に立ち続けることはできないだろう。根性ではなく物理的に、人体の構造的に。
 ブブブブー!またしても、奴はオナラをした。マジ強烈に臭い奴を。もし、身体のどこかしらに大きなダメージを受けて戦闘不能状態になるその寸前に、防衛機能が働いて強烈な屁をこくように魔改造されているのなら、本当に恐るべき敵だ。ブラックモア!

 万事休す。弱音と焦燥、さらになんと言っても攻め疲れが重なり、俺は相手に対して攻撃ができなくなてしまう。そこへ、相手のパンチがキックが襲いかかってくる!
 俺はディフェンス一辺倒になってしまう。あれだけ余裕でかわせていたスカルの攻撃に、迫力を感じてズルズル後退してしまう。
 くっ。打つ手なしか……。いや、もう一回奴の動きや身体の状態を見てみよう。俺の弱気を感じて図に乗っているせいか、パンチもキックもキレが増してきたように感じる。俺の方に問題もあるのだろうけど、あれほど俺や他の拳闘士たちにキックやパンチをたくさん打ち込まれて来たのに、凄いタフネスさバイタリティの高さだと思う。
 腹部も脚部もあざだらけだ。紫色に腫れあがっている箇所もある。やはり凄過ぎる。これだけダメージを食らったら普通はもうとっくに倒れている。負けん気だって挫けてしまうはず。クスリとか手術による肉体改造とか、人の手が入っていなければこんな風には闘えないと思う。
 頭部。顔面。マスクがあるのでどんな状態なのかは分からない。マスクの破れているところから髪の毛が覗けるぐらい。ただ、かなりのダメージは受けているのは確実なはずなのだ。

 う……うん?マスク。そうか!マスクだ。マスクを破って仕舞えば良いんだ。
 試合中の時、マスクが破れてしまったら、その拳闘士の負けになる。命の化身ともいうべきマスクを敵の攻撃に晒され続け壊されてしまい、素顔を試合中に観客の面前で露わにされてしまうなど、拳闘士として最も醜態であり失態とされているのだ。
 彼のプライドを考えたら躊躇うものがあるけどこれより方法がないのだから仕方ない。ちなみに、相手のマスクを故意に攻撃して破ってしまった場合、反則負けになってしまう。また、拳闘士として最も卑劣な行為であり不名誉な負け方ともされている。
 
「ぎゃあああああ!」
 俺はギランのような怪鳥ボイスを絶叫して、スカルへ空手チョップの雨嵐を食らわせる。なぜ、怪鳥ギランなのか俺にもよくは分からない。
 兎にも角にも、空手チョップ、チョップ、チョップ!スカルのマスクをビリビリに破いてしまおう!
「おお!」
 観客席から一際大きな歓声が沸き起こる。ついに、俺はスカルマスクを破ることに成功したのだ!
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