3 / 44
3 隣人の偏屈な親切
しおりを挟む
つくづく思う。コンビニは偉大だ。
スマホで探してたどり着いたコンビニでトイレを借り、食料と温かいお茶と使い捨てカイロを仕入れた時宗は、アパートの玄関が見える道に陣取った。うまい具合に静かな裏通りで、ほとんど誰も通らない。道路の縁には雪が積み上がって、いい感じに見通しも悪い。怪しまれたら移動しよう。
立ったままパンを頬張る。この仕事は「待ち」を嫌がったらやっていけない。隣の住人の言葉に賭けて、時宗は今野が帰ってくるまで、少なくとも今日明日は外で粘る覚悟だった。
パンを食べ終わると、時宗は弥二郎に電話をかけた。気になることがあったからだ。
『おっ札幌着いたか? 寒いか?』
人に仕事を振っておいて、開口一番これだ。
「くっそ寒い。そして俺は今、その寒い外で今野がアパートに帰ってくるのを待ってる」
『お~凍死しない程度にがんばれ』
「聞きたいことがある」
『なんだ?』
「ファイルに、じいさんの名前がない。住所もだ。俺は今野を見つけたら、どこに連れて行けばいいんだ? どうなってんだ。具体的な事情の説明も乏しいし、これじゃ今野をどうやって説得すればいいのか、材料がない」
『あ~、それね。じいさんの意向で、一切書けないんだ』
「は? 書類に起こせないんなら、なんで自分でやらないんだ。なんにも知らない俺を札幌に送り込んだって仕事にならないだろ」
『ん~、まぁ……そうなんだけど、寒そうだったから』
「ふざけんな、じいさんの名前は? 俺と今野の目的地は?」
『じいさんに、どこまで話していいか聞いてからじゃないとな……』
「どこに住んでるかも知らないんじゃ、こっちは信用してもらえない。なんでこんな半端な仕事してんだ」
『お前の言いたいことはわかるんだが……夜はホテルに泊まっていいから、時間かけて見つけて話してみてくれ。それと今野を見つけたら、まず事務所に連れてきてくれ。そこで今野とお前に全部話す』
「俺?」
『知りたいだろ?』
いや……まぁ知りたいけど。そんなに隠してるのに、最後は教えてもらえるって変じゃないか?
『とにかくその~、何日かかってもいいから、なんとか説得してくれ。なにせじいさんが偏屈でな。すまん』
「すまんじゃねぇよ、大丈夫なのか? この仕事。もしかして、じいさんって有名人、とか?」
『……あぁ。そうだな……有名人だな、確かに』
なるほど。日本中の誰もが知ってる名前なら、名乗ったら逆に詐欺っぽい。そういうことなんだろうか。
『ま、あんまり寒かったらホテルに避難しろよ~。死なれたら困る』
そう言うと、弥二郎はさっさと電話を切った。
なんか今回の仕事、こんな適当な感じでいいのかね? 何度か手紙は送ったっていうから、「手紙を送った」っていう事実を知ってるっていうところで信用してもらうか……もらえるのか?
どうにもわからない仕事だ。弥二郎はいつも以上にのらくらした感じだし、ホテルに泊まっていいって何言ってんだ?
しょうがない。まずは今野を見つける。そこから何とかするしかない。
それにしても……。ダウンジャケットのフードをかぶってポケットに両手を突っ込んだ時宗は、じっと考え事を始めた。
母親を10代で亡くし、父親もどこかの時点でいなくなった今野は、時宗と同じ歳で何の仕事をしてるんだろう。けっこう長期で家を空けるんだろうか。それとも毎日帰ってきてる? 運送業、建築業……。高校や大学は出てるんだろうか。
時宗自身、まぁまぁ色々トラブルが多い人生だとは思うが、一応弥二郎に面倒を見てもらったので、孤独について文句を言うべきじゃない。この寒い土地で、今野はひとりでどうやって生きてきたのか。
白い息を吐きながら、時宗は斜め向かいのガラスの玄関ドアを眺め、視線を上げた。3階建てで、一階はシャッター付きの車庫が並んでいる。雪が降るから、シャッターは大事なんだろうな。部屋は2階と3階に3つずつ、6世帯の小さなアパートだった。
玄関は左隅っこにあり、右の端が201、301だ。真ん中の302はカーテンが閉められて中は見えない。301もだ。
あいつ……昼間っから自分の部屋で何してんだろな。
時宗はさっきの住人を思い浮かべた。切れ長の目に、皮肉っぽい、なのにちょっと優しい笑みを浮かべた唇。
別に自分の部屋にいるからっておかしくはない。平日が休みの仕事はたくさんあるし、在宅でできる仕事もある。もしかしたら夜勤か何かで、帰ってきて寝ていたのかも。そうなら、ピンポン連打であんなふうにブチ切れたのも納得がいく。悪いことしたな。
あれこれ考えているうちに寒くなる。途中で2度ほどコンビニへ行き、トイレを借りたり温かい物を仕入れたりしながら、時宗は黙々と待った。気晴らしに仕入れたチロルチョコは寒さで硬くなっていたが、時宗は口の中で溶かすのを楽しんだ。
2時間、3時間。3時を過ぎると、とにかく寒くなった。日はもう傾き始め、気温は容赦なく下がってきている。鼻をすすると奥の方がキンと冷えた。自分でも意識しないうちに足踏みをしている。
これは……まずいかもしれないな。
時宗はぼんやり思った。夜も張り込みしたら凍死すんじゃね?
割と冗談じゃなくそう思えた。
ここを離れるわけにはいかないし、交代要員はいない。センサーカメラは持ってきてるから、夜中はそれをどこかに仕掛けて、ホテルを見つけるべきか……。ただこの気温だと、機械類が動かなくなる可能性があった。
トレッキングシューズを通して足元もガンガン冷えてきているし、ヒートテックはまったく足りない。気が付けば、歯がカチカチ鳴っていた。
諦めて引き上げるか……。でもたった数時間で?
そう思っていた時、見張っていたアパートの玄関ドアが開いた。中から、例の住人がひょいと顔をのぞかせた。
目が合うと、住人は顔をしかめた。それから諦めたようにアパートを出て、道路を横切ってくる。タートルネックの上に毛糸のセーター、さらにコートを着ていた。
「……ここで待ってんのか?」
雪道に慣れた足取りで近づいてきた男は、無表情のまま時宗にそう言った。
背の高さは同じぐらい。いや、ほんの少し向こうが高いか? そのセーター貸してくれ。ぼんやりとそんなことを思いながら、時宗はうなずいた。
「ふ~ん。天気予報確認したんか?」
「あ~、そういや」
ポケットからスマホを取り出し、ボタンを押す。ざく、と雪を踏みしめる音がした。顔を上げると、奴は立ち去るところだ。丸めた背中は遠ざかり、交差点を左に曲がって消えた。
なんなんだよあいつ。
どこに行くのか知らないが、北海道はあのぐらいの重装備じゃないとダメなんだな、と時宗は察した。スノーブーツはもこもこしてたしな。うらやましい。
足踏みをしながら、時宗はスマホを見た。この手袋、脱がないと操作できない……。諦め、決死の覚悟で手袋を外すと、震える指でスマホを動かす。ポケットの中で握っていたおかげで、スマホ自体はまだ正常に作動している。
天気予報を開き、『寒波』の二文字を見て時宗は絶望した。今夜の最低気温がマイナス11度? やめてくれよ……。
これはもう諦めた方がいい。ホテルを取って、明日出直しだ。
マジか、こんな……札幌に着いてから3時間ちょいしか経ってないんだぞ……。
呆然とアパートを見上げる。ついでに日の入りを確認したら、4時過ぎには太陽が沈んでしまうらしい。もうあと30分ないぞ。
なんていうか、体感としてヤバイのはわかってきていた。歯の根が合わず、足の指は常に動かしていないと耐えられない。一刻も早く逃げ出したい。でも……。
時宗の悪いところはこういうところだ。なんだかんだ、途中で逃げ出すのは嫌だった。自分の負けを認めたような気分にさせられて、抵抗せずにいられなくなる。もう何度も失敗したのに、まただ。高校2年の時だって……。
「おい」
ふと気づくと、住人が戻ってきていた。右手に少し大きいビニール袋をぶら下げている。買い物に行ってきたのか。
黙って見返してやると、住人の男はむすっとした顔のまま時宗に言った。
「今夜ここで粘るつもりなんか?」
「まぁ……しょうがないですよ。会わないといけないから来たわけで。適当でいいなら、手紙の返事がない時点でおじいさんも諦めてるでしょ」
「ふ~ん」
相変わらず、どうでもいいって感じの反応だ。
「でもお前、ここに一晩立ってたら確実に死ぬけど」
うん俺もそう思う。
「仕事だし……。逃げたら報酬ももらえないし、おじいさんがなんか、かわいそうだなって」
「ふ~ん」
男は時宗をしげしげ眺め、しばらく考えている様子だった。自分の部屋を見上げ、隣の部屋を見る。口をきゅっと引き結んだ横顔がちょっと凛々しくて、時宗は心中密かに溜息をついた。やっぱりお近づきにはなれないのか。
「あのさ」
男は突然こっちを向いた。時宗のトレッキングシューズを見下ろし、目を合わせずに男はもそもそ口を動かす。
「その、もしあれだったら、オレの部屋で待っても構わねぇが」
「は?」
「だからその……凍死されるのも寝覚めが悪いっちゅうか」
え、お前、実は神? 隣の部屋で待たせてもらうなんて、こんな幸運ありかよ。控えめに言って……。
「ぜひお願いします」
「あっそ」
くるりと向きを変え、男はアパートにさっさと入っていく。時宗はさっきからジンジンしている足の指を踏みしめ、コケないように慎重に男の後をついて行った。
スマホで探してたどり着いたコンビニでトイレを借り、食料と温かいお茶と使い捨てカイロを仕入れた時宗は、アパートの玄関が見える道に陣取った。うまい具合に静かな裏通りで、ほとんど誰も通らない。道路の縁には雪が積み上がって、いい感じに見通しも悪い。怪しまれたら移動しよう。
立ったままパンを頬張る。この仕事は「待ち」を嫌がったらやっていけない。隣の住人の言葉に賭けて、時宗は今野が帰ってくるまで、少なくとも今日明日は外で粘る覚悟だった。
パンを食べ終わると、時宗は弥二郎に電話をかけた。気になることがあったからだ。
『おっ札幌着いたか? 寒いか?』
人に仕事を振っておいて、開口一番これだ。
「くっそ寒い。そして俺は今、その寒い外で今野がアパートに帰ってくるのを待ってる」
『お~凍死しない程度にがんばれ』
「聞きたいことがある」
『なんだ?』
「ファイルに、じいさんの名前がない。住所もだ。俺は今野を見つけたら、どこに連れて行けばいいんだ? どうなってんだ。具体的な事情の説明も乏しいし、これじゃ今野をどうやって説得すればいいのか、材料がない」
『あ~、それね。じいさんの意向で、一切書けないんだ』
「は? 書類に起こせないんなら、なんで自分でやらないんだ。なんにも知らない俺を札幌に送り込んだって仕事にならないだろ」
『ん~、まぁ……そうなんだけど、寒そうだったから』
「ふざけんな、じいさんの名前は? 俺と今野の目的地は?」
『じいさんに、どこまで話していいか聞いてからじゃないとな……』
「どこに住んでるかも知らないんじゃ、こっちは信用してもらえない。なんでこんな半端な仕事してんだ」
『お前の言いたいことはわかるんだが……夜はホテルに泊まっていいから、時間かけて見つけて話してみてくれ。それと今野を見つけたら、まず事務所に連れてきてくれ。そこで今野とお前に全部話す』
「俺?」
『知りたいだろ?』
いや……まぁ知りたいけど。そんなに隠してるのに、最後は教えてもらえるって変じゃないか?
『とにかくその~、何日かかってもいいから、なんとか説得してくれ。なにせじいさんが偏屈でな。すまん』
「すまんじゃねぇよ、大丈夫なのか? この仕事。もしかして、じいさんって有名人、とか?」
『……あぁ。そうだな……有名人だな、確かに』
なるほど。日本中の誰もが知ってる名前なら、名乗ったら逆に詐欺っぽい。そういうことなんだろうか。
『ま、あんまり寒かったらホテルに避難しろよ~。死なれたら困る』
そう言うと、弥二郎はさっさと電話を切った。
なんか今回の仕事、こんな適当な感じでいいのかね? 何度か手紙は送ったっていうから、「手紙を送った」っていう事実を知ってるっていうところで信用してもらうか……もらえるのか?
どうにもわからない仕事だ。弥二郎はいつも以上にのらくらした感じだし、ホテルに泊まっていいって何言ってんだ?
しょうがない。まずは今野を見つける。そこから何とかするしかない。
それにしても……。ダウンジャケットのフードをかぶってポケットに両手を突っ込んだ時宗は、じっと考え事を始めた。
母親を10代で亡くし、父親もどこかの時点でいなくなった今野は、時宗と同じ歳で何の仕事をしてるんだろう。けっこう長期で家を空けるんだろうか。それとも毎日帰ってきてる? 運送業、建築業……。高校や大学は出てるんだろうか。
時宗自身、まぁまぁ色々トラブルが多い人生だとは思うが、一応弥二郎に面倒を見てもらったので、孤独について文句を言うべきじゃない。この寒い土地で、今野はひとりでどうやって生きてきたのか。
白い息を吐きながら、時宗は斜め向かいのガラスの玄関ドアを眺め、視線を上げた。3階建てで、一階はシャッター付きの車庫が並んでいる。雪が降るから、シャッターは大事なんだろうな。部屋は2階と3階に3つずつ、6世帯の小さなアパートだった。
玄関は左隅っこにあり、右の端が201、301だ。真ん中の302はカーテンが閉められて中は見えない。301もだ。
あいつ……昼間っから自分の部屋で何してんだろな。
時宗はさっきの住人を思い浮かべた。切れ長の目に、皮肉っぽい、なのにちょっと優しい笑みを浮かべた唇。
別に自分の部屋にいるからっておかしくはない。平日が休みの仕事はたくさんあるし、在宅でできる仕事もある。もしかしたら夜勤か何かで、帰ってきて寝ていたのかも。そうなら、ピンポン連打であんなふうにブチ切れたのも納得がいく。悪いことしたな。
あれこれ考えているうちに寒くなる。途中で2度ほどコンビニへ行き、トイレを借りたり温かい物を仕入れたりしながら、時宗は黙々と待った。気晴らしに仕入れたチロルチョコは寒さで硬くなっていたが、時宗は口の中で溶かすのを楽しんだ。
2時間、3時間。3時を過ぎると、とにかく寒くなった。日はもう傾き始め、気温は容赦なく下がってきている。鼻をすすると奥の方がキンと冷えた。自分でも意識しないうちに足踏みをしている。
これは……まずいかもしれないな。
時宗はぼんやり思った。夜も張り込みしたら凍死すんじゃね?
割と冗談じゃなくそう思えた。
ここを離れるわけにはいかないし、交代要員はいない。センサーカメラは持ってきてるから、夜中はそれをどこかに仕掛けて、ホテルを見つけるべきか……。ただこの気温だと、機械類が動かなくなる可能性があった。
トレッキングシューズを通して足元もガンガン冷えてきているし、ヒートテックはまったく足りない。気が付けば、歯がカチカチ鳴っていた。
諦めて引き上げるか……。でもたった数時間で?
そう思っていた時、見張っていたアパートの玄関ドアが開いた。中から、例の住人がひょいと顔をのぞかせた。
目が合うと、住人は顔をしかめた。それから諦めたようにアパートを出て、道路を横切ってくる。タートルネックの上に毛糸のセーター、さらにコートを着ていた。
「……ここで待ってんのか?」
雪道に慣れた足取りで近づいてきた男は、無表情のまま時宗にそう言った。
背の高さは同じぐらい。いや、ほんの少し向こうが高いか? そのセーター貸してくれ。ぼんやりとそんなことを思いながら、時宗はうなずいた。
「ふ~ん。天気予報確認したんか?」
「あ~、そういや」
ポケットからスマホを取り出し、ボタンを押す。ざく、と雪を踏みしめる音がした。顔を上げると、奴は立ち去るところだ。丸めた背中は遠ざかり、交差点を左に曲がって消えた。
なんなんだよあいつ。
どこに行くのか知らないが、北海道はあのぐらいの重装備じゃないとダメなんだな、と時宗は察した。スノーブーツはもこもこしてたしな。うらやましい。
足踏みをしながら、時宗はスマホを見た。この手袋、脱がないと操作できない……。諦め、決死の覚悟で手袋を外すと、震える指でスマホを動かす。ポケットの中で握っていたおかげで、スマホ自体はまだ正常に作動している。
天気予報を開き、『寒波』の二文字を見て時宗は絶望した。今夜の最低気温がマイナス11度? やめてくれよ……。
これはもう諦めた方がいい。ホテルを取って、明日出直しだ。
マジか、こんな……札幌に着いてから3時間ちょいしか経ってないんだぞ……。
呆然とアパートを見上げる。ついでに日の入りを確認したら、4時過ぎには太陽が沈んでしまうらしい。もうあと30分ないぞ。
なんていうか、体感としてヤバイのはわかってきていた。歯の根が合わず、足の指は常に動かしていないと耐えられない。一刻も早く逃げ出したい。でも……。
時宗の悪いところはこういうところだ。なんだかんだ、途中で逃げ出すのは嫌だった。自分の負けを認めたような気分にさせられて、抵抗せずにいられなくなる。もう何度も失敗したのに、まただ。高校2年の時だって……。
「おい」
ふと気づくと、住人が戻ってきていた。右手に少し大きいビニール袋をぶら下げている。買い物に行ってきたのか。
黙って見返してやると、住人の男はむすっとした顔のまま時宗に言った。
「今夜ここで粘るつもりなんか?」
「まぁ……しょうがないですよ。会わないといけないから来たわけで。適当でいいなら、手紙の返事がない時点でおじいさんも諦めてるでしょ」
「ふ~ん」
相変わらず、どうでもいいって感じの反応だ。
「でもお前、ここに一晩立ってたら確実に死ぬけど」
うん俺もそう思う。
「仕事だし……。逃げたら報酬ももらえないし、おじいさんがなんか、かわいそうだなって」
「ふ~ん」
男は時宗をしげしげ眺め、しばらく考えている様子だった。自分の部屋を見上げ、隣の部屋を見る。口をきゅっと引き結んだ横顔がちょっと凛々しくて、時宗は心中密かに溜息をついた。やっぱりお近づきにはなれないのか。
「あのさ」
男は突然こっちを向いた。時宗のトレッキングシューズを見下ろし、目を合わせずに男はもそもそ口を動かす。
「その、もしあれだったら、オレの部屋で待っても構わねぇが」
「は?」
「だからその……凍死されるのも寝覚めが悪いっちゅうか」
え、お前、実は神? 隣の部屋で待たせてもらうなんて、こんな幸運ありかよ。控えめに言って……。
「ぜひお願いします」
「あっそ」
くるりと向きを変え、男はアパートにさっさと入っていく。時宗はさっきからジンジンしている足の指を踏みしめ、コケないように慎重に男の後をついて行った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。


雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる