41 / 181
41 【2年前】(18)
しおりを挟む
サキがエトウとタジマに会った月末から、10日経とうとしていた。気温はさらに暑くなり、そろそろエアコンが欲しい季節だ。ソーラーパネルか発電機をもう一台手に入れたいという話が事務室で上がるような時期だった。
その日、レンの所属する第3チームは中央線ぎりぎりの警備をしていた。このエリアのバリケードやトラップは完成しているが、高架を包み込むように建つガラス張りの旧駅舎の上には敵陣営の者の姿がチラつく。
上から銃撃されないように注意しながら、タケとレンは路線沿いを巡回していた。シフトで順番にバディを組まされる以上、定期的にこうして2人になるのを避けることはできない。
少し距離を開けて、レンはタケの後ろをついて行く。11時を回り、そろそろ昼ご飯のことを考える時間帯だった。
駅の下、かつて人が通り抜けるコンコースだったところは、鉄板やありあわせの建材で塞いである。タケは上をざっと見渡してから、行き止まりのトンネルのようになったその場所へ入っていった。
レンも同じように足を踏み入れる。陽射しがきつくなってきていたが、日陰に入ると、ほっとする。全身が陰に入った途端、奥から静かな声がした。
「レン、そういえば、さ」
「はい」
「この間のこと、考えてくれたかなって」
やっぱりな。レンは心の中で溜息をついた。
「考えましたけど……やっぱり」
「ちょっと前に、おれ見たんだけど」
「何を?」
薄暗い空間の中、壁の状態を確認していたタケが、ゆっくりと振り向く。微かな怒りの気配。冷たい声がトンネルを吹き抜ける。
「嘘つきはお前だったんだな。図書館の奥で、サキさんに抱かれて寝てただろ」
レンの体がぎくりと強張った。ガラス玉のような目がレンを見ていた。
何か言おうと口を開きかけたその瞬間──ドォンという耳をつんざく爆発音と共に壁が吹っ飛び、タケとレンの体は地面に叩きつけられた。
あぁ……始まってしまった。
黒いものに意識を鷲掴みにされ引きずりこまれる一瞬、レンが思ったのはそれだけだった。
その日、レンの所属する第3チームは中央線ぎりぎりの警備をしていた。このエリアのバリケードやトラップは完成しているが、高架を包み込むように建つガラス張りの旧駅舎の上には敵陣営の者の姿がチラつく。
上から銃撃されないように注意しながら、タケとレンは路線沿いを巡回していた。シフトで順番にバディを組まされる以上、定期的にこうして2人になるのを避けることはできない。
少し距離を開けて、レンはタケの後ろをついて行く。11時を回り、そろそろ昼ご飯のことを考える時間帯だった。
駅の下、かつて人が通り抜けるコンコースだったところは、鉄板やありあわせの建材で塞いである。タケは上をざっと見渡してから、行き止まりのトンネルのようになったその場所へ入っていった。
レンも同じように足を踏み入れる。陽射しがきつくなってきていたが、日陰に入ると、ほっとする。全身が陰に入った途端、奥から静かな声がした。
「レン、そういえば、さ」
「はい」
「この間のこと、考えてくれたかなって」
やっぱりな。レンは心の中で溜息をついた。
「考えましたけど……やっぱり」
「ちょっと前に、おれ見たんだけど」
「何を?」
薄暗い空間の中、壁の状態を確認していたタケが、ゆっくりと振り向く。微かな怒りの気配。冷たい声がトンネルを吹き抜ける。
「嘘つきはお前だったんだな。図書館の奥で、サキさんに抱かれて寝てただろ」
レンの体がぎくりと強張った。ガラス玉のような目がレンを見ていた。
何か言おうと口を開きかけたその瞬間──ドォンという耳をつんざく爆発音と共に壁が吹っ飛び、タケとレンの体は地面に叩きつけられた。
あぁ……始まってしまった。
黒いものに意識を鷲掴みにされ引きずりこまれる一瞬、レンが思ったのはそれだけだった。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説



鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる