19 / 181
19 【2年前】(8)
しおりを挟む
数日後、昼食後に休憩しながら、レンは事務室のタブレットでこの間聞いた番号を調べていた。東京都内でまだ通信機器はあまり使えない。だが誰かの話ではケーブルを図書館まで引いたので、この施設内ではインターネットを使うことができる。どういう仕組みで、誰が使えるようにしているのか、レンにはさっぱりだったが。
例の番号が、本を内容に合わせて分類するためのものだということはわかった。939。アメリカ文学。ただ、それがなぜカウンターでミヤギからエトウに告げられたのかは、レンにはよくわからなかった。
本なんて、あまり読んだことがない。文字は一応読めるけれど、難しい漢字はわからないし、何よりじっと座ってただの紙を眺めていることに、なんの意味があるのかが理解できなかった。
タブレットをじっと眺めていると、後ろに人が来る気配があった。椅子の背に寄りかかりながら振り向く。同じチームのタケだった。レンがここに来たときから面倒を見てくれている男だ。26歳、レンより4歳年上の快活な男だった。
タケは奥へ向かう途中でレンを見ると、ひょいと手を挙げて近づいてきた。タブレットをのぞきこむ。
「何調べてんだ?」
「え、この間サキさんに会いに来た人に、ミヤギさんが番号を言っていて。何かなと思って」
「ふ~ん。あれだろ本の分類をする番号」
「えぇ。そこまではわかりました。でもなんでそれが話題になるのかなって」
タケはタブレットに手を伸ばした。
「おれも本は読まないけど……その番号を聞くと、エトウさんはサキさんの居場所がわかるらしい。サキさんはマスクの番人をしている時はいつも書庫にいるだろう? その番号の本のところに、サキさんがいるってことだ。」
それだけ説明すると、タケはレンが調べていたページを閉じ、代わりに音楽ソフトを立ち上げた。聞いたことのない音楽が始まる。女性ボーカルの高音が事務室に突如響く。
皆が一瞬、レンとタケの方を見たが、特に気にする様子もなく、それぞれが自分の手元に視線を戻した。タケはそうした全員の動きをちらりと確認すると、レンの耳元に口を近づけた。
「どういうつもりだ?」
? 何の話だろう? 通じていないレンに、タケはためらうような顔を見せた。それからもう一度レンに囁く。
「今夜お前の部屋に行っていいか。話がある」
「はぁ……大丈夫ですけど」
それだけを言うと、タケはレンの肩をポンと叩き、奥へ行ってしまった。音楽ソフトを閉じたものの、履歴をたどる前に第3リーダーのミヤギが呼ぶ声が聞こえた。
例の番号が、本を内容に合わせて分類するためのものだということはわかった。939。アメリカ文学。ただ、それがなぜカウンターでミヤギからエトウに告げられたのかは、レンにはよくわからなかった。
本なんて、あまり読んだことがない。文字は一応読めるけれど、難しい漢字はわからないし、何よりじっと座ってただの紙を眺めていることに、なんの意味があるのかが理解できなかった。
タブレットをじっと眺めていると、後ろに人が来る気配があった。椅子の背に寄りかかりながら振り向く。同じチームのタケだった。レンがここに来たときから面倒を見てくれている男だ。26歳、レンより4歳年上の快活な男だった。
タケは奥へ向かう途中でレンを見ると、ひょいと手を挙げて近づいてきた。タブレットをのぞきこむ。
「何調べてんだ?」
「え、この間サキさんに会いに来た人に、ミヤギさんが番号を言っていて。何かなと思って」
「ふ~ん。あれだろ本の分類をする番号」
「えぇ。そこまではわかりました。でもなんでそれが話題になるのかなって」
タケはタブレットに手を伸ばした。
「おれも本は読まないけど……その番号を聞くと、エトウさんはサキさんの居場所がわかるらしい。サキさんはマスクの番人をしている時はいつも書庫にいるだろう? その番号の本のところに、サキさんがいるってことだ。」
それだけ説明すると、タケはレンが調べていたページを閉じ、代わりに音楽ソフトを立ち上げた。聞いたことのない音楽が始まる。女性ボーカルの高音が事務室に突如響く。
皆が一瞬、レンとタケの方を見たが、特に気にする様子もなく、それぞれが自分の手元に視線を戻した。タケはそうした全員の動きをちらりと確認すると、レンの耳元に口を近づけた。
「どういうつもりだ?」
? 何の話だろう? 通じていないレンに、タケはためらうような顔を見せた。それからもう一度レンに囁く。
「今夜お前の部屋に行っていいか。話がある」
「はぁ……大丈夫ですけど」
それだけを言うと、タケはレンの肩をポンと叩き、奥へ行ってしまった。音楽ソフトを閉じたものの、履歴をたどる前に第3リーダーのミヤギが呼ぶ声が聞こえた。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。
七賀ごふん
BL
【何度失っても、日常は彼と創り出せる。】
──────────
身の回りのものの温度をめちゃくちゃにしてしまう力を持って生まれた白希は、集落の屋敷に閉じ込められて育った。二十歳の誕生日に火事で家を失うが、彼の未来の夫を名乗る美青年、宗一が現れる。
力のコントロールを身につけながら、愛が重い宗一による花嫁修業が始まって……。
※シリアス
溺愛御曹司×世間知らず。現代ファンタジー。
表紙:七賀



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる