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1章
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時は少し戻り、甚六の提案を受け入れた甲四郎は、崖を少し下り、丘の「窪み」をよじ登り始めた。
その絶好の頃合いに甚六の弓矢が見張り台にいる者を狙い始めた。
正面から三郎兵衛の本隊が攻めて来る中、思わぬ方角からの攻撃をうけ、東側の見張り台の数人が撃たれた事に砦の者達は気づかず、東側は一瞬で手薄になった。
その好機を見逃さず、甲四郎達は一気に見張り台によじ登り入り、叫んだ。
「行けぇ!攻めろ蹴倒せ!」
甲四郎率いる足軽衆は、砦の東西を繋ぐ足場を駆け出し、敵兵を見つけるなり次々と槍で突き殺していった。
後は甲四郎達の独壇場だ。
板塀の上から攻撃する者は弓矢しか持たされておらず、突然刀や斧や鉈をもった者どもが猛獣のように襲いかかって来るのだからたまったものではない、ほとんどの者が命乞いをして逃げてゆく。
その中、一人の足軽が声を上げた。
「大将じゃ!大将がおるぞい」
「ぶち当たれ!ブチ当たるんじゃ!」
すかさず甲四郎が声をあげる。
「当たれ」とは体当たりせよ、という意味で、鎧武者の大将は見た目に強そうに見えるが、体当たりを決めて尻餅をつかせてしまえば、鎧を着ているのが仇となり、人の手を借りなければ立ち上がることもできないのである。
足軽は二人ががりで大将と見られる鎧武者に体当たりをし、見事に転ばせた。
「うおぉぉぉ」
戦いの中でか、木が生い茂る中を進撃したせいか、甲四郎の髪はザンバラ髪になり、それをなびかせ獅子のようになりながら、尻餅をついて慌てふためいている敵大将の胸元へ飛びかかった。
甲四郎は飛びかかると同時に短刀を抜き、倒されもがいている大将の胸を一突きした。
断末魔の呻きを上げたのを耳元で聞くと、甲四郎は短刀を納め、刀で敵の大将の首に一刀を加え、討ち取ろうとした。が、鎧を着用しているせいもあり、一太刀では首は落ちず、二刀目を入れたが、それでも首は、三割ほど胴体から切り離されただけで、胴体から赤い塊を放出させ、ドサリと鎧武者は地面に落ちた。
甲四郎は、崩れ落ちた大将の眉庇を掴み、三太刀目を入れ、胴体と首を分離させることが出来た。
とても武士の礼儀とは思えない、首の取り方であったが、甲四郎は興奮状態で天に向かって吠えた。
「大将討ち取ったりぃぃ!」
甲四郎は高々と大将の首を掲げ、もぎ取った首からしたたり落ちる血と膿状の何かを浴びながら周囲を見渡し叫んだ。
「大将の首はここじゃ!」
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時は少し戻り、甚六の提案を受け入れた甲四郎は、崖を少し下り、丘の「窪み」をよじ登り始めた。
その絶好の頃合いに甚六の弓矢が見張り台にいる者を狙い始めた。
正面から三郎兵衛の本隊が攻めて来る中、思わぬ方角からの攻撃をうけ、東側の見張り台の数人が撃たれた事に砦の者達は気づかず、東側は一瞬で手薄になった。
その好機を見逃さず、甲四郎達は一気に見張り台によじ登り入り、叫んだ。
「行けぇ!攻めろ蹴倒せ!」
甲四郎率いる足軽衆は、砦の東西を繋ぐ足場を駆け出し、敵兵を見つけるなり次々と槍で突き殺していった。
後は甲四郎達の独壇場だ。
板塀の上から攻撃する者は弓矢しか持たされておらず、突然刀や斧や鉈をもった者どもが猛獣のように襲いかかって来るのだからたまったものではない、ほとんどの者が命乞いをして逃げてゆく。
その中、一人の足軽が声を上げた。
「大将じゃ!大将がおるぞい」
「ぶち当たれ!ブチ当たるんじゃ!」
すかさず甲四郎が声をあげる。
「当たれ」とは体当たりせよ、という意味で、鎧武者の大将は見た目に強そうに見えるが、体当たりを決めて尻餅をつかせてしまえば、鎧を着ているのが仇となり、人の手を借りなければ立ち上がることもできないのである。
足軽は二人ががりで大将と見られる鎧武者に体当たりをし、見事に転ばせた。
「うおぉぉぉ」
戦いの中でか、木が生い茂る中を進撃したせいか、甲四郎の髪はザンバラ髪になり、それをなびかせ獅子のようになりながら、尻餅をついて慌てふためいている敵大将の胸元へ飛びかかった。
甲四郎は飛びかかると同時に短刀を抜き、倒されもがいている大将の胸を一突きした。
断末魔の呻きを上げたのを耳元で聞くと、甲四郎は短刀を納め、刀で敵の大将の首に一刀を加え、討ち取ろうとした。が、鎧を着用しているせいもあり、一太刀では首は落ちず、二刀目を入れたが、それでも首は、三割ほど胴体から切り離されただけで、胴体から赤い塊を放出させ、ドサリと鎧武者は地面に落ちた。
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とても武士の礼儀とは思えない、首の取り方であったが、甲四郎は興奮状態で天に向かって吠えた。
「大将討ち取ったりぃぃ!」
甲四郎は高々と大将の首を掲げ、もぎ取った首からしたたり落ちる血と膿状の何かを浴びながら周囲を見渡し叫んだ。
「大将の首はここじゃ!」
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