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15,転生悪役令嬢の逃避。
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「何でここにいるかですか?
一言で言うなら昔取った杵柄でしょうか?
はい。
まだ処刑エンドを逃れようとしていた頃、もし捕まった時も脱出に使えそうなスキルは一通り身につけました。
変装とか、鍵開けとか、締め技とかですね。
この荷物は、随分前に秘密の場所に隠した逃亡用の荷物です。
まさかまだ残っているとは思いませんでしたが。
ええ。
それでちょいちょいと。
何だか拍子抜けするくらい順調にあなたが謹慎しているこの部屋まで来れましたね。
侮られているんでしょうか?
そんな事より、ことは急ぐのです。
とうとう両親が、私を自宅軟禁から司法機関への引き渡しを決めたようなので。
これは、苦労して会得した遠耳のスキルで分かりました。
思っていたとおり、私の運命は処刑エンドまっしぐらですね。
物語の力は一個人では敵わないくらい強大なようです。
私は、その大きな壁に気付いた時、運命を変えることをすっかり諦めてしまいました。
はい。今のあなたに会いに来たのも、せめて最後のお別れだけでも言いたい、そう考えたからです。
と、少し昔の私なら言っていたでしょう。
しかし、私が今日ここに来たのは、あなたと一緒に逃げるためです。
私は、やっぱり誰かに決められた筋書きで死にたくない。
死に場所くらいは選びたいのです。
そしてそれは、あなたの近くでないと嫌です。
もちろん、我儘なのは分かっています。
あなたは私に脅されていただけということに結局なりましたし、私亡き後のこの家の後継者です。
このままここにいれば、あなたは不自由ない生活を送れます。
でも、でもですよ。
今だからこそいうけど、私がこうなったのはあなたのせいもあるのです。
覚えていますか?
私があなたに私の秘密を話した夜のこと。
あの日、私はこの家から逃げるつもりであなたの部屋の近くを通りました。
物語とおりにしたくないなら、物語から離れてしまえば良いのですから。
はい。
そして、中庭で泣いているあなたに見つかり、慌てて持っていた荷物を植え込み奥の崩れた壁の隙間に隠して話をしたのです。
適当に言いくるめて部屋に返した後、改めて逃げるつもりでした。
秘密を話したのも、どうせもう会わない相手だと思ったからです。
作戦はうまくいきました。
あなたは慰めているうちに寝てくれたので、すぐにでも逃げようと思いました。
でも、実行出来なかった。
朝あなたが起きて私がいなくなっていたらどう思うか考えたら、何故か動けなくなりました。
そして今に至ります。
だから、あなたには私が逃げられなかった事への責任があるのです。
責任とって一緒に逃げてください。
分かった?
いいえ、断ってもダメです。
そう言われるのは分かってましたよ。
あなたにとって何のメリットもない選択ですし、理由も混じり気なしの言いがかりですから。
しかし、私だって必死です。
斯くなる上は……
……へ?
今分かったって言いました?
つまり、イエスですか?
え、ちょっと、本気ですか?
下手したら一生お尋ね者ですよ?
ちょっと、何ヘラヘラ笑ってるんですか。
あなたは自分の将来をちゃんと見据えた選択をするべきだとーー
え?逃げてから聞く?
ちょうどよかったとはどういう事ですか?
馬車ですか?
すみません私そこまで手配してなくて。
あなたが用意してる?
何故?
……え?
…………え?」
一言で言うなら昔取った杵柄でしょうか?
はい。
まだ処刑エンドを逃れようとしていた頃、もし捕まった時も脱出に使えそうなスキルは一通り身につけました。
変装とか、鍵開けとか、締め技とかですね。
この荷物は、随分前に秘密の場所に隠した逃亡用の荷物です。
まさかまだ残っているとは思いませんでしたが。
ええ。
それでちょいちょいと。
何だか拍子抜けするくらい順調にあなたが謹慎しているこの部屋まで来れましたね。
侮られているんでしょうか?
そんな事より、ことは急ぐのです。
とうとう両親が、私を自宅軟禁から司法機関への引き渡しを決めたようなので。
これは、苦労して会得した遠耳のスキルで分かりました。
思っていたとおり、私の運命は処刑エンドまっしぐらですね。
物語の力は一個人では敵わないくらい強大なようです。
私は、その大きな壁に気付いた時、運命を変えることをすっかり諦めてしまいました。
はい。今のあなたに会いに来たのも、せめて最後のお別れだけでも言いたい、そう考えたからです。
と、少し昔の私なら言っていたでしょう。
しかし、私が今日ここに来たのは、あなたと一緒に逃げるためです。
私は、やっぱり誰かに決められた筋書きで死にたくない。
死に場所くらいは選びたいのです。
そしてそれは、あなたの近くでないと嫌です。
もちろん、我儘なのは分かっています。
あなたは私に脅されていただけということに結局なりましたし、私亡き後のこの家の後継者です。
このままここにいれば、あなたは不自由ない生活を送れます。
でも、でもですよ。
今だからこそいうけど、私がこうなったのはあなたのせいもあるのです。
覚えていますか?
私があなたに私の秘密を話した夜のこと。
あの日、私はこの家から逃げるつもりであなたの部屋の近くを通りました。
物語とおりにしたくないなら、物語から離れてしまえば良いのですから。
はい。
そして、中庭で泣いているあなたに見つかり、慌てて持っていた荷物を植え込み奥の崩れた壁の隙間に隠して話をしたのです。
適当に言いくるめて部屋に返した後、改めて逃げるつもりでした。
秘密を話したのも、どうせもう会わない相手だと思ったからです。
作戦はうまくいきました。
あなたは慰めているうちに寝てくれたので、すぐにでも逃げようと思いました。
でも、実行出来なかった。
朝あなたが起きて私がいなくなっていたらどう思うか考えたら、何故か動けなくなりました。
そして今に至ります。
だから、あなたには私が逃げられなかった事への責任があるのです。
責任とって一緒に逃げてください。
分かった?
いいえ、断ってもダメです。
そう言われるのは分かってましたよ。
あなたにとって何のメリットもない選択ですし、理由も混じり気なしの言いがかりですから。
しかし、私だって必死です。
斯くなる上は……
……へ?
今分かったって言いました?
つまり、イエスですか?
え、ちょっと、本気ですか?
下手したら一生お尋ね者ですよ?
ちょっと、何ヘラヘラ笑ってるんですか。
あなたは自分の将来をちゃんと見据えた選択をするべきだとーー
え?逃げてから聞く?
ちょうどよかったとはどういう事ですか?
馬車ですか?
すみません私そこまで手配してなくて。
あなたが用意してる?
何故?
……え?
…………え?」
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