異世界パピーウォーカー〜イケメン獣人預かり〼〜

saito

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マメ柴のシバ

贈り物

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日曜日は、思ったよりも手厚いもてなしが待っていた。

えりか達の住む戸建てに迎えられてみれば、カレーはもちろん、ハンバーグとか、ナポリタンとか、唐揚げとか、ちらし寿司とか、こどもの日とクリスマスが一緒に来たような様相を呈していた。

「すごい。すみませんこんなにして頂いちゃって。全部2人で作ったんですか?」

「うん。私は酢飯をパタパタしたよ。サラダの草もちぎったし。」

手土産を渡すさゆりに、えりかが得意げに言う。
つまり全てきみやがやったのだろう。

「きみやさんもありがとうございます。」

ぺこりと頭を下げると、目からもよだれが出そうな勢いで食卓を見ていたシバもさゆりに合わせてぺこりと頭を下げた。

「おなかいっぱい食べて良いから。」

きみやのその言葉に、シバが満面の笑みを浮かべる。
言われた通りに、彼はもりもりご馳走を平らげた。

「じゃーん。これはきみやと私から、シバ君へのプレゼントだよ!」
そう言って食事の最後にえりかが出して来たのは立派なイチゴのショートケーキだった。
シバには初めてのケーキだったが、大ヒットだったようで口の周りをクリームだらけにしてパクついた。

「おいしいね!すっごくおいしい!えりかもハチもありがとう!」

そう告げるシバの言葉の意味を2人に伝えたら、2人ともそれぞれ嬉しそうにしていた。

食事があらかた終わった後は、さゆりの番だった。

「シバ、これは私から。プレゼントだよ。」

そう告げてシバに小さな紙袋を渡す。
中には細長いジュエリーケースが入っていて、その中には金鎖のネックレスが納まっている。
このチョイスは、さゆりがヤカラ系の趣味を持っているわけではなく、ちゃんと熟慮した結果であった。

シバに何か記念になるものを、とは、シバが帰ると言った日から考えていた。
しかし問題は、何を、というところだった。
恋人なら時計や財布、父親なら靴下やシャツ、仕事仲間ならネクタイやハンカチを検討すれば間違えることはそんなに無い。

でもシバには?

それは検索しても出てこない難題だった。
ビジネスグッズは論外だろうが、日用品や雑貨も向こうの世界でどこまで通用するかわからない。

会社帰りに散々デパートのメンズフロアをうろつき、最終的に決めたのが、ホストかギラついたオヤジしか出入りしなさそうな黒を基調とした店の、このゴツい純金のネックレスだった。
ちなみに、男への贈り物としては過去最高額である。
それにもちゃんと理由があった。

「それ、さゆりちゃんの趣味?」

ジャラリとケースから取り出した鎖をシバに着けているさゆりに、えりかは思わず訪ねた。
さゆりが何を出して来ても盛り上げるつもりでいたが、斜め上すぎる。

「いえ、店にあった貴金属で一番丈夫だって言われたのでこれにしました。」

シバはこれまでネックレスをしたことがないのか、首に下がった鎖をつまんでフンスフンスとにおいを嗅いでいる。

「シバ、いい?もし向こうで嫌な場所とか、辛いところに行っちゃって、そこにいたくないなってなったら、このネックレスを売っぱらって逃げ出す資金にするんだよ。」

さゆりは果てしなくド真面目に語った。
シバはキョトンとしている。
えりかはなるほど……なのか?という顔をした。
きみやは特に何の感想もなかった。

みつるは向こうで裕福な暮らしをしているように見えたし、それを否定しなかった。
指輪をしていたので、宝飾品が富を示す文化があるのだと推測できる。
ファンタジー系のアニメやゲームのようだという説明からは、貨幣経済が成立している可能性を伺わせた。
つまり、向こうでも換金できそうなものを精一杯選んで買ったのが、さゆりからシバへのプレゼントだった。

「それがシバのためなの。わかった?」

「わかった。ありがと、さゆり。」

おそらくイマイチわかっていないが、さゆりの気持ちだけは伝わったのかシバはにぱっと笑ってさゆりに礼を告げた。
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