53 / 54
マメ柴のシバ
贈り物
しおりを挟む
日曜日は、思ったよりも手厚いもてなしが待っていた。
えりか達の住む戸建てに迎えられてみれば、カレーはもちろん、ハンバーグとか、ナポリタンとか、唐揚げとか、ちらし寿司とか、こどもの日とクリスマスが一緒に来たような様相を呈していた。
「すごい。すみませんこんなにして頂いちゃって。全部2人で作ったんですか?」
「うん。私は酢飯をパタパタしたよ。サラダの草もちぎったし。」
手土産を渡すさゆりに、えりかが得意げに言う。
つまり全てきみやがやったのだろう。
「きみやさんもありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げると、目からもよだれが出そうな勢いで食卓を見ていたシバもさゆりに合わせてぺこりと頭を下げた。
「おなかいっぱい食べて良いから。」
きみやのその言葉に、シバが満面の笑みを浮かべる。
言われた通りに、彼はもりもりご馳走を平らげた。
「じゃーん。これはきみやと私から、シバ君へのプレゼントだよ!」
そう言って食事の最後にえりかが出して来たのは立派なイチゴのショートケーキだった。
シバには初めてのケーキだったが、大ヒットだったようで口の周りをクリームだらけにしてパクついた。
「おいしいね!すっごくおいしい!えりかもハチもありがとう!」
そう告げるシバの言葉の意味を2人に伝えたら、2人ともそれぞれ嬉しそうにしていた。
食事があらかた終わった後は、さゆりの番だった。
「シバ、これは私から。プレゼントだよ。」
そう告げてシバに小さな紙袋を渡す。
中には細長いジュエリーケースが入っていて、その中には金鎖のネックレスが納まっている。
このチョイスは、さゆりがヤカラ系の趣味を持っているわけではなく、ちゃんと熟慮した結果であった。
シバに何か記念になるものを、とは、シバが帰ると言った日から考えていた。
しかし問題は、何を、というところだった。
恋人なら時計や財布、父親なら靴下やシャツ、仕事仲間ならネクタイやハンカチを検討すれば間違えることはそんなに無い。
でもシバには?
それは検索しても出てこない難題だった。
ビジネスグッズは論外だろうが、日用品や雑貨も向こうの世界でどこまで通用するかわからない。
会社帰りに散々デパートのメンズフロアをうろつき、最終的に決めたのが、ホストかギラついたオヤジしか出入りしなさそうな黒を基調とした店の、このゴツい純金のネックレスだった。
ちなみに、男への贈り物としては過去最高額である。
それにもちゃんと理由があった。
「それ、さゆりちゃんの趣味?」
ジャラリとケースから取り出した鎖をシバに着けているさゆりに、えりかは思わず訪ねた。
さゆりが何を出して来ても盛り上げるつもりでいたが、斜め上すぎる。
「いえ、店にあった貴金属で一番丈夫だって言われたのでこれにしました。」
シバはこれまでネックレスをしたことがないのか、首に下がった鎖をつまんでフンスフンスとにおいを嗅いでいる。
「シバ、いい?もし向こうで嫌な場所とか、辛いところに行っちゃって、そこにいたくないなってなったら、このネックレスを売っぱらって逃げ出す資金にするんだよ。」
さゆりは果てしなくド真面目に語った。
シバはキョトンとしている。
えりかはなるほど……なのか?という顔をした。
きみやは特に何の感想もなかった。
みつるは向こうで裕福な暮らしをしているように見えたし、それを否定しなかった。
指輪をしていたので、宝飾品が富を示す文化があるのだと推測できる。
ファンタジー系のアニメやゲームのようだという説明からは、貨幣経済が成立している可能性を伺わせた。
つまり、向こうでも換金できそうなものを精一杯選んで買ったのが、さゆりからシバへのプレゼントだった。
「それがシバのためなの。わかった?」
「わかった。ありがと、さゆり。」
おそらくイマイチわかっていないが、さゆりの気持ちだけは伝わったのかシバはにぱっと笑ってさゆりに礼を告げた。
えりか達の住む戸建てに迎えられてみれば、カレーはもちろん、ハンバーグとか、ナポリタンとか、唐揚げとか、ちらし寿司とか、こどもの日とクリスマスが一緒に来たような様相を呈していた。
「すごい。すみませんこんなにして頂いちゃって。全部2人で作ったんですか?」
「うん。私は酢飯をパタパタしたよ。サラダの草もちぎったし。」
手土産を渡すさゆりに、えりかが得意げに言う。
つまり全てきみやがやったのだろう。
「きみやさんもありがとうございます。」
ぺこりと頭を下げると、目からもよだれが出そうな勢いで食卓を見ていたシバもさゆりに合わせてぺこりと頭を下げた。
「おなかいっぱい食べて良いから。」
きみやのその言葉に、シバが満面の笑みを浮かべる。
言われた通りに、彼はもりもりご馳走を平らげた。
「じゃーん。これはきみやと私から、シバ君へのプレゼントだよ!」
そう言って食事の最後にえりかが出して来たのは立派なイチゴのショートケーキだった。
シバには初めてのケーキだったが、大ヒットだったようで口の周りをクリームだらけにしてパクついた。
「おいしいね!すっごくおいしい!えりかもハチもありがとう!」
そう告げるシバの言葉の意味を2人に伝えたら、2人ともそれぞれ嬉しそうにしていた。
食事があらかた終わった後は、さゆりの番だった。
「シバ、これは私から。プレゼントだよ。」
そう告げてシバに小さな紙袋を渡す。
中には細長いジュエリーケースが入っていて、その中には金鎖のネックレスが納まっている。
このチョイスは、さゆりがヤカラ系の趣味を持っているわけではなく、ちゃんと熟慮した結果であった。
シバに何か記念になるものを、とは、シバが帰ると言った日から考えていた。
しかし問題は、何を、というところだった。
恋人なら時計や財布、父親なら靴下やシャツ、仕事仲間ならネクタイやハンカチを検討すれば間違えることはそんなに無い。
でもシバには?
それは検索しても出てこない難題だった。
ビジネスグッズは論外だろうが、日用品や雑貨も向こうの世界でどこまで通用するかわからない。
会社帰りに散々デパートのメンズフロアをうろつき、最終的に決めたのが、ホストかギラついたオヤジしか出入りしなさそうな黒を基調とした店の、このゴツい純金のネックレスだった。
ちなみに、男への贈り物としては過去最高額である。
それにもちゃんと理由があった。
「それ、さゆりちゃんの趣味?」
ジャラリとケースから取り出した鎖をシバに着けているさゆりに、えりかは思わず訪ねた。
さゆりが何を出して来ても盛り上げるつもりでいたが、斜め上すぎる。
「いえ、店にあった貴金属で一番丈夫だって言われたのでこれにしました。」
シバはこれまでネックレスをしたことがないのか、首に下がった鎖をつまんでフンスフンスとにおいを嗅いでいる。
「シバ、いい?もし向こうで嫌な場所とか、辛いところに行っちゃって、そこにいたくないなってなったら、このネックレスを売っぱらって逃げ出す資金にするんだよ。」
さゆりは果てしなくド真面目に語った。
シバはキョトンとしている。
えりかはなるほど……なのか?という顔をした。
きみやは特に何の感想もなかった。
みつるは向こうで裕福な暮らしをしているように見えたし、それを否定しなかった。
指輪をしていたので、宝飾品が富を示す文化があるのだと推測できる。
ファンタジー系のアニメやゲームのようだという説明からは、貨幣経済が成立している可能性を伺わせた。
つまり、向こうでも換金できそうなものを精一杯選んで買ったのが、さゆりからシバへのプレゼントだった。
「それがシバのためなの。わかった?」
「わかった。ありがと、さゆり。」
おそらくイマイチわかっていないが、さゆりの気持ちだけは伝わったのかシバはにぱっと笑ってさゆりに礼を告げた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説


せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる