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マメ柴のシバ
最後の週末
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とうとう、シバと過ごす最後の週末が来てしまった。
みつるは、ぴったり30日後といったので、
日曜日の夜にはまたぽっかりしてくるに違いない。
土曜日にシバに何がしたいかと聞いたら、きみやのカレーが食べたいと言われた。
散々作ってやった私の飯を差し置いてあいつの手料理かよ、とさゆりは思った。
しかもまだだいぶ気まずい。
しかし、なんでもリクエストを聞くと言った手前、恥を忍んでえりかに連絡する。
すると、
「今日でなくて明日なら良い。
サプライズで送別会を考えていて、明日迎えに行くつもりでいた」とちょっとバツが悪い体で言われた。
流石に自分には事前に言ってくれ、と懇願する。
そんな会話で、不思議とそれまでの気まずさが少し薄れた。
カレーは明日になったと伝えたら、じゃあ今日はディスクで遊びたいと言われた。
「そしたら、四つ足になれる?人の姿だと、また怪我するからダメ。」
「わかった。」
「怖くない?」
「さゆりが一緒だから大丈夫。」
はい可愛い。
さゆりはウキウキで支度した。
なんだかんだ言って、念願の犬型のシバとのお散歩である。
首輪とリードは、先日獣医に診せた時に持ってないことがバレてその場で医院にあった備品を持たされていた。
玄関先でサクッと犬型になってもらい、床にたごまった衣類をたたんでカゴに入れて置いておく。
その間シバは周りをうろちょろしていて、出かけ前にそのゆるふわボディをわしゃわしゃ撫で回してやった。
シバは尻尾をパタパタ降った後、ブルブルと全身を震わせて喜んだ。
リードをつけて、飛び出さないように注意を促してから出発する。
幸い天気は良く、さゆりは近所の河川敷に向かった。
都内のオシャレなドッグランに行くことも考えたが、大体予防接種の証明が必要で諦めた。
その河川敷は犬飼いの定番の散歩コースになっている。堤防下の草野球ができる原っぱは少年野球の練習試合が無ければ使う人もいないため、
一応ルール上はリードをつけることになっていても放し飼いで誰も気に留めないようなスポットだった。
そのため犬連れは大抵そこで相棒を走り回らせることができ、その魅力に惹かれて集まった犬飼い達のコミュニティが出来ていた。
さゆりは、以前から意味もなく独り散歩で立ち寄ってはそこに集う犬達を羨ましく見ていた。
その憧れの場所が、今は手が届く。
私、遅ればせながら公園デビューします。
そうドヤりながら原っぱに降り立ち、えりかにもらったディスクを取り出す。
それだけでシバがバッヒョンバッヒョン跳ねた。
リードを外し、ウズウズしているシバに見せつけるように円盤を繰り出す。
シバがあの日のように駆け出した。
そのまま舞い進むディスクに追いつき、
スルーして追い越した。
は?と思ううちに、捨て置かれたディスクはペソリと地面に落ち、シバは向こうから犬を連れてやってきていた1人の青年に駆け寄っていた。
みつるは、ぴったり30日後といったので、
日曜日の夜にはまたぽっかりしてくるに違いない。
土曜日にシバに何がしたいかと聞いたら、きみやのカレーが食べたいと言われた。
散々作ってやった私の飯を差し置いてあいつの手料理かよ、とさゆりは思った。
しかもまだだいぶ気まずい。
しかし、なんでもリクエストを聞くと言った手前、恥を忍んでえりかに連絡する。
すると、
「今日でなくて明日なら良い。
サプライズで送別会を考えていて、明日迎えに行くつもりでいた」とちょっとバツが悪い体で言われた。
流石に自分には事前に言ってくれ、と懇願する。
そんな会話で、不思議とそれまでの気まずさが少し薄れた。
カレーは明日になったと伝えたら、じゃあ今日はディスクで遊びたいと言われた。
「そしたら、四つ足になれる?人の姿だと、また怪我するからダメ。」
「わかった。」
「怖くない?」
「さゆりが一緒だから大丈夫。」
はい可愛い。
さゆりはウキウキで支度した。
なんだかんだ言って、念願の犬型のシバとのお散歩である。
首輪とリードは、先日獣医に診せた時に持ってないことがバレてその場で医院にあった備品を持たされていた。
玄関先でサクッと犬型になってもらい、床にたごまった衣類をたたんでカゴに入れて置いておく。
その間シバは周りをうろちょろしていて、出かけ前にそのゆるふわボディをわしゃわしゃ撫で回してやった。
シバは尻尾をパタパタ降った後、ブルブルと全身を震わせて喜んだ。
リードをつけて、飛び出さないように注意を促してから出発する。
幸い天気は良く、さゆりは近所の河川敷に向かった。
都内のオシャレなドッグランに行くことも考えたが、大体予防接種の証明が必要で諦めた。
その河川敷は犬飼いの定番の散歩コースになっている。堤防下の草野球ができる原っぱは少年野球の練習試合が無ければ使う人もいないため、
一応ルール上はリードをつけることになっていても放し飼いで誰も気に留めないようなスポットだった。
そのため犬連れは大抵そこで相棒を走り回らせることができ、その魅力に惹かれて集まった犬飼い達のコミュニティが出来ていた。
さゆりは、以前から意味もなく独り散歩で立ち寄ってはそこに集う犬達を羨ましく見ていた。
その憧れの場所が、今は手が届く。
私、遅ればせながら公園デビューします。
そうドヤりながら原っぱに降り立ち、えりかにもらったディスクを取り出す。
それだけでシバがバッヒョンバッヒョン跳ねた。
リードを外し、ウズウズしているシバに見せつけるように円盤を繰り出す。
シバがあの日のように駆け出した。
そのまま舞い進むディスクに追いつき、
スルーして追い越した。
は?と思ううちに、捨て置かれたディスクはペソリと地面に落ち、シバは向こうから犬を連れてやってきていた1人の青年に駆け寄っていた。
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