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マメ柴のシバ
誰の選択
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「シバ。ちょっと話があるんだけど。」
病み上がりだからと無理せず家のことをシバに教えながら過ごした日曜日の終わりに、さゆりは切り出した。
多くの社会人にほんのりした明日への憂鬱をもたらす、国民的日常系ほのぼのアニメを二人で見た後のことである。
シバは画面から目を外してさゆりを見た。
「あと1週間でお兄ちゃんがシバを迎えにくるけど、シバは、このままうちにいたい?それとも戻りたい?」
それは、公園でえりかと二人で話して以来ずっと考えていたことだった。
仮に、向こうの世界がシバにとって厳しいものだったとして、自分はどうするか。
結局、シバの気持ちを尊重する事にした。
幸いいざとなったら犬の姿になってくれることは分かっている。
それであれば、さゆりも何とかシバと暮らしていけるだろう。
獣人の寿命がどれほどかは分からないが、万一自分が先に死んだ時だけ、迎えに来てもらうように兄に頼めば良い。
さゆりが100歳になってもみつるはまだアラサーのはずだ。
ペットを飼ったら婚期を逃すというが、飼わなかったところでそれが何の保障になるというのか。
シバが望むなら、私もきっちり腹を括ろう。
公園での約束が口から出まかせだったわけではないが、さゆりのために助けを呼んでくれたシバを見てやっと決意がつき、さゆりは聞いたのだった。
「さゆりがご主人様になってくれるの?」
「お兄ちゃんに聞いてみなきゃだけど、シバがそうしたいなら何とか頼んでみる。」
「僕が決めるの?」
「そうだよ。シバの生き方のことだからね。シバが決めて良いんだよ。」
「……さゆりはどうしたい?」
「私のことは気にしなくて良いの。シバが、自分の意思でどうしたいか決めるんだよ。」
シバは黙り込んでしまった。
考えているのだろう。
本能で生きてるとしか思えなかったこれまでを考えると少し意外だった。
もっとあっさり決めると思っていた。
何なら、即答でこっちに残ると言うんじゃないかと自負すらしていた。
案外戻りたい気持ちもしっかりある事に、さゆりは少しショックを受けた。
「シバ、別にすぐ答えなくて良いよ。
まだ時間はあるし、じっくり考えて見て。」
黙ったままのシバに助け舟を出したところで、さゆりはギョッとした。
シバがボロボロと涙をこぼして泣き出したからだ。
「し、シバ!?」
「ぼ、っぼく、かっ、かぇっう。」
シバの顔は見る間に涙と鼻水だらけになった。
「かえる?向こうに戻るの?」
「うっぅ、っん」
シバはこくりと頷いた。
必死に喋ろうとするが、嗚咽が邪魔をしてまともに話せていない。
そんなに泣くくらい悲しいのに、シバは向こうに戻るのだ。
その姿に胸が詰まって、さゆりまで泣きそうになった。
シバは泣き続けていたが、落ち着こうとしているのかしばらく無言で息を整えている。
「ふっ、ふーっ。……僕、……立派な獣人になりたいから、かっかぇ、るね。さゆり。」
「…………うん。わかった。」
「さゆりっ、ぼくのっ……こっ、と、…ゎっわす、れっ、ヒクッ、ぇ、ないでぇっ、ねぇっクッ」
「わっ忘れないよぉ。」
完全にもらい泣きしてしまった。
目を潤ませながら抱き寄せると、シバからもギュッと抱きつかれる。
シバはちゃんと選んだのだ。
それは正直なところすごく寂しいことだったが、
さゆりは、シバにここに残るよう言わなくてよかったと思った。
もしそれで先々シバが後悔してしまったら、償いきれる自信がない。
これでよかったのだ。
そう自分に言い聞かせた。
病み上がりだからと無理せず家のことをシバに教えながら過ごした日曜日の終わりに、さゆりは切り出した。
多くの社会人にほんのりした明日への憂鬱をもたらす、国民的日常系ほのぼのアニメを二人で見た後のことである。
シバは画面から目を外してさゆりを見た。
「あと1週間でお兄ちゃんがシバを迎えにくるけど、シバは、このままうちにいたい?それとも戻りたい?」
それは、公園でえりかと二人で話して以来ずっと考えていたことだった。
仮に、向こうの世界がシバにとって厳しいものだったとして、自分はどうするか。
結局、シバの気持ちを尊重する事にした。
幸いいざとなったら犬の姿になってくれることは分かっている。
それであれば、さゆりも何とかシバと暮らしていけるだろう。
獣人の寿命がどれほどかは分からないが、万一自分が先に死んだ時だけ、迎えに来てもらうように兄に頼めば良い。
さゆりが100歳になってもみつるはまだアラサーのはずだ。
ペットを飼ったら婚期を逃すというが、飼わなかったところでそれが何の保障になるというのか。
シバが望むなら、私もきっちり腹を括ろう。
公園での約束が口から出まかせだったわけではないが、さゆりのために助けを呼んでくれたシバを見てやっと決意がつき、さゆりは聞いたのだった。
「さゆりがご主人様になってくれるの?」
「お兄ちゃんに聞いてみなきゃだけど、シバがそうしたいなら何とか頼んでみる。」
「僕が決めるの?」
「そうだよ。シバの生き方のことだからね。シバが決めて良いんだよ。」
「……さゆりはどうしたい?」
「私のことは気にしなくて良いの。シバが、自分の意思でどうしたいか決めるんだよ。」
シバは黙り込んでしまった。
考えているのだろう。
本能で生きてるとしか思えなかったこれまでを考えると少し意外だった。
もっとあっさり決めると思っていた。
何なら、即答でこっちに残ると言うんじゃないかと自負すらしていた。
案外戻りたい気持ちもしっかりある事に、さゆりは少しショックを受けた。
「シバ、別にすぐ答えなくて良いよ。
まだ時間はあるし、じっくり考えて見て。」
黙ったままのシバに助け舟を出したところで、さゆりはギョッとした。
シバがボロボロと涙をこぼして泣き出したからだ。
「し、シバ!?」
「ぼ、っぼく、かっ、かぇっう。」
シバの顔は見る間に涙と鼻水だらけになった。
「かえる?向こうに戻るの?」
「うっぅ、っん」
シバはこくりと頷いた。
必死に喋ろうとするが、嗚咽が邪魔をしてまともに話せていない。
そんなに泣くくらい悲しいのに、シバは向こうに戻るのだ。
その姿に胸が詰まって、さゆりまで泣きそうになった。
シバは泣き続けていたが、落ち着こうとしているのかしばらく無言で息を整えている。
「ふっ、ふーっ。……僕、……立派な獣人になりたいから、かっかぇ、るね。さゆり。」
「…………うん。わかった。」
「さゆりっ、ぼくのっ……こっ、と、…ゎっわす、れっ、ヒクッ、ぇ、ないでぇっ、ねぇっクッ」
「わっ忘れないよぉ。」
完全にもらい泣きしてしまった。
目を潤ませながら抱き寄せると、シバからもギュッと抱きつかれる。
シバはちゃんと選んだのだ。
それは正直なところすごく寂しいことだったが、
さゆりは、シバにここに残るよう言わなくてよかったと思った。
もしそれで先々シバが後悔してしまったら、償いきれる自信がない。
これでよかったのだ。
そう自分に言い聞かせた。
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