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マメ柴のシバ
何で
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「何でえりかさんは、私に良くしてくれるんですか?」
公衆浴場の広い浴槽に並んで浸かりながら、さゆりはずっと疑問だった事を聞いた。
「え、普通じゃない?特別な事何もしてないと思うけど。」
「話しかけてくれたり、ごはんに誘ってくれたり、心配してくれたりしたじゃないですか。」
「いや、普通のことじゃん。」
「でも、今まで全然接点なかったのに……。」
そういうとえりかは、あーと唸って少し逡巡していた。
「実はさ、さゆりちゃんのことは、望月君のことでちょっと他人事に思えなかったんだよね。」
そう言った後、えりかは自分の話をした。
えりかの母も、えりかが幼い頃行方不明になったという事。
当時えりかの両親は離婚していてえりかは母親と暮らしていたが、母親が行方不明になったため父親に引き取られた。
「私はお母さんがいなくなった時子供で何も出来なかった。だからさゆりちゃんがお兄さんを探すのを手伝いたかったんだよね。自己満足かもしれないけど。でもハチの事があって出来なくなっちゃって。それであの時さゆりちゃんみつけて、元気なさそうだったから、声掛けたの。」
「そうだったんですか……。」
「そしたらさゆりちゃんとんでもないことになってるし、望月君はもっと凄いことになってるし。まあ、ハチの友達が出来たのはよかったけど。」
「あの、ひょっとしたらえりかさんのお母さんも向こうに行ってるのかも!兄に聞いてみたら何かわかるかもしれません!」
無責任なのは分かっていたが、思いつくまま言った。
「ありがとね。でも、それは無いんだ。もう死んじゃってるの。体が見つかってる。」
「あ……すみません。」
「いいよ。昔の話だし。ハチのおかげでなんだかんだ寂しく無いしね。」
「……シバがきみやさんに迷惑かけてないか心配です。」
話題を変えるために、男性浴場にいるはずの二人の事に触れた。
「大丈夫でしょ。ハチはああ見えて面倒見が良いし、慣れてるよ。」
「へぇ。」
きみやがえりかを風呂に入れているというシバの話を思い出して、変な反応になる。
事実だとしたら、それを「面倒見が良い。」で片付けているえりかの認知に若干の不安を感じざるを得ない。
「さゆりちゃんさ、ハチと私の関係、めちゃくちゃ不気味がってるでしょ。」
「そんなこと……」
あります、と正直に言うわけにもいかず、さゆりは語尾を濁した。
「いいって。反応見てたらわかるよ。」
「……すみません。」
「いや、むしろ安心する。みんなあの外見に騙されるけどさ、やっぱあいつおかしいから。」
どう反応して良いか分からなかったが、えりかは自分の言葉にうんうんと頷いた。
「私が家事するとさ、泣くんだよ?やらせて下さいーって、ポロポロ泣くの。最初にあのペンマイク持って来られた時もさ、当然キレるじゃん。ざけんなって拒否したらさ、ハンストだよ。1週間くらい何も食べずイジイジしてんの。まじあいつ、どうかしてる。」
ひえ、と思う事をえりかは早口で語った。
普通に縁切り案件だと思うが、身内なだけあってそうもいかないのかもしれない。
切れるに切れない結果、無策に成り果て、面倒見が良いだけと言い聞かせて今に至るということだろうか。
「あーすっきりした。本人が聞こえるとこで悪口言うと泣くしさ。ハチが聞いてない状態で話すなんて何年振りだろう。本当にシバ君とさゆりちゃんに感謝だわ。」
これまでの振る舞いから、えりかがきみやを嫌っているとは思えないし、むしろさゆりやシバと関わるのはきみやのためじゃないかとすら感じる。
しかし、それはそれとして、やはりきみやの自分に対する執着振りには色々耐えかねるところがあるようだ。
さゆりはなんと反応したら良いか分からず、また話題を変えるため無難にえりかが使っている基礎化粧品の話を振ってしまった。
公衆浴場の広い浴槽に並んで浸かりながら、さゆりはずっと疑問だった事を聞いた。
「え、普通じゃない?特別な事何もしてないと思うけど。」
「話しかけてくれたり、ごはんに誘ってくれたり、心配してくれたりしたじゃないですか。」
「いや、普通のことじゃん。」
「でも、今まで全然接点なかったのに……。」
そういうとえりかは、あーと唸って少し逡巡していた。
「実はさ、さゆりちゃんのことは、望月君のことでちょっと他人事に思えなかったんだよね。」
そう言った後、えりかは自分の話をした。
えりかの母も、えりかが幼い頃行方不明になったという事。
当時えりかの両親は離婚していてえりかは母親と暮らしていたが、母親が行方不明になったため父親に引き取られた。
「私はお母さんがいなくなった時子供で何も出来なかった。だからさゆりちゃんがお兄さんを探すのを手伝いたかったんだよね。自己満足かもしれないけど。でもハチの事があって出来なくなっちゃって。それであの時さゆりちゃんみつけて、元気なさそうだったから、声掛けたの。」
「そうだったんですか……。」
「そしたらさゆりちゃんとんでもないことになってるし、望月君はもっと凄いことになってるし。まあ、ハチの友達が出来たのはよかったけど。」
「あの、ひょっとしたらえりかさんのお母さんも向こうに行ってるのかも!兄に聞いてみたら何かわかるかもしれません!」
無責任なのは分かっていたが、思いつくまま言った。
「ありがとね。でも、それは無いんだ。もう死んじゃってるの。体が見つかってる。」
「あ……すみません。」
「いいよ。昔の話だし。ハチのおかげでなんだかんだ寂しく無いしね。」
「……シバがきみやさんに迷惑かけてないか心配です。」
話題を変えるために、男性浴場にいるはずの二人の事に触れた。
「大丈夫でしょ。ハチはああ見えて面倒見が良いし、慣れてるよ。」
「へぇ。」
きみやがえりかを風呂に入れているというシバの話を思い出して、変な反応になる。
事実だとしたら、それを「面倒見が良い。」で片付けているえりかの認知に若干の不安を感じざるを得ない。
「さゆりちゃんさ、ハチと私の関係、めちゃくちゃ不気味がってるでしょ。」
「そんなこと……」
あります、と正直に言うわけにもいかず、さゆりは語尾を濁した。
「いいって。反応見てたらわかるよ。」
「……すみません。」
「いや、むしろ安心する。みんなあの外見に騙されるけどさ、やっぱあいつおかしいから。」
どう反応して良いか分からなかったが、えりかは自分の言葉にうんうんと頷いた。
「私が家事するとさ、泣くんだよ?やらせて下さいーって、ポロポロ泣くの。最初にあのペンマイク持って来られた時もさ、当然キレるじゃん。ざけんなって拒否したらさ、ハンストだよ。1週間くらい何も食べずイジイジしてんの。まじあいつ、どうかしてる。」
ひえ、と思う事をえりかは早口で語った。
普通に縁切り案件だと思うが、身内なだけあってそうもいかないのかもしれない。
切れるに切れない結果、無策に成り果て、面倒見が良いだけと言い聞かせて今に至るということだろうか。
「あーすっきりした。本人が聞こえるとこで悪口言うと泣くしさ。ハチが聞いてない状態で話すなんて何年振りだろう。本当にシバ君とさゆりちゃんに感謝だわ。」
これまでの振る舞いから、えりかがきみやを嫌っているとは思えないし、むしろさゆりやシバと関わるのはきみやのためじゃないかとすら感じる。
しかし、それはそれとして、やはりきみやの自分に対する執着振りには色々耐えかねるところがあるようだ。
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