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マメ柴のシバ
強制隔離措置
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浴室内に白い湯気が立ち込める中、頭からざぶざぶとシャワーを被った。
シバがやらかしたいつもの粗相と、全身を流れるお湯の刺激に、すっかり酔いの冷めた頭ではっきりわかる。
やっちまった…。と。
先ほど玄関先でシバが漏らしてしまったことに気づいたさゆりは、目の前のきみやに助けを求めることにした。
「あの、玄関にタオルが置いてあるので取ってもらえませんか?」
今動けば汚れが広がるし、大人2人が立ちはだかる玄関にシバを抱えて分け入ることは難しかった。
きみやはおとなしく後ろを向いてタオルを探そうとしてくれた。
その後ろからえりかがきみやを押しのけて近づいて来た。手にはタオルを持っていた。
「片付けておくから、お風呂入っておいで。」
そう促すえりかに半ば押し込まれるように近くの脱衣所に移動したさゆりはおとなしくシャワーを浴びた。
そして今に至る。
あらかじめ事情を説明していたとはいえ、えりか達が本当に異世界だなんだと言うのを信じていたとは思えない。
風呂に入る際にシバを預けた時、2人は冷静を保っているように見えた。
しかし、実際のところは分からない。全裸の少年を匿っている点は、明らかに事件だ。どう消極的に考えても。
もしそこを重く見られて通報されたら。
自分はどうなるのか。シバは。
この後どうしたら良いのか。
分からなさすぎて、ずっとシャワーを浴びていたくなる。
このまま消えてしまいたいと思う一方、案外外が静かなことが気になって来た。
普段さゆりが風呂に入っている時、シバは早く出て来いとギャンギャン騒いでいる。
彼女らがうまく相手をしているのだろうか。
これまでさゆりの言うことは全然聞かなかったくせに、あの2人にはやけに従順だったシバに違和感を覚え始めていた。
いや、2人、と言うよりおそらくはきみやだ。
えりかに飛びかかろうとした時はきみやの静止で止まったし、
えりかがシバを引き取ろうとした時も、きみやが割り込んで来たらあっさりさゆりのスーツを離した。
思えば、シバが大人しくなるのはこれが初めてじゃない。
長谷川が来た時も、シバは大人しくなったじゃないか。
ちゃんと躾けないと犬は人間の女をナメると聞くが、シバも男に対しては従順なのだろうか。
ふと、シャワーを止めてみる。
やっぱり、静かすぎる。
なんだか胸騒ぎがして、さゆりは慌てて浴室を出た。
脱衣所にある洗濯機から、適当に衣服を探して着る。
髪を乾かすのもそこそこに、雫の垂れるミディアムヘアを包むように軽くバスタオルを頭に巻いて脱衣所の扉を開けた。
視線を移した廊下の先には、シバ達がいるはずの居室がある。
しかし、そこには誰もいなかった。
「シバ?」
念のため呼んでみるが、返事はない。
咄嗟に玄関を確認すると、そこにはさゆりが脱いだパンプスしかなかった。
深く考える前にそのパンプスをつっかけてフックに引っ掛けた鍵を掴むと、玄関を飛び出す。
誰もいない廊下を小走りに通り、エレベーターを呼んだ。
機体は一階にあるらしく、五階に来るまでしばし掛かる。焦れながらも階段よりは早いはずと判断し、緩慢に開く扉に突っ込むように乗り込んで閉ボタンを連打した。一階に着いたらオートロックの自動ドアをすり抜けるように飛び出して一気に近隣のコインパーキングまで走る。半ば予想してはいたが、えりか達のレガシィは既にどこにも無かった。
シバがやらかしたいつもの粗相と、全身を流れるお湯の刺激に、すっかり酔いの冷めた頭ではっきりわかる。
やっちまった…。と。
先ほど玄関先でシバが漏らしてしまったことに気づいたさゆりは、目の前のきみやに助けを求めることにした。
「あの、玄関にタオルが置いてあるので取ってもらえませんか?」
今動けば汚れが広がるし、大人2人が立ちはだかる玄関にシバを抱えて分け入ることは難しかった。
きみやはおとなしく後ろを向いてタオルを探そうとしてくれた。
その後ろからえりかがきみやを押しのけて近づいて来た。手にはタオルを持っていた。
「片付けておくから、お風呂入っておいで。」
そう促すえりかに半ば押し込まれるように近くの脱衣所に移動したさゆりはおとなしくシャワーを浴びた。
そして今に至る。
あらかじめ事情を説明していたとはいえ、えりか達が本当に異世界だなんだと言うのを信じていたとは思えない。
風呂に入る際にシバを預けた時、2人は冷静を保っているように見えた。
しかし、実際のところは分からない。全裸の少年を匿っている点は、明らかに事件だ。どう消極的に考えても。
もしそこを重く見られて通報されたら。
自分はどうなるのか。シバは。
この後どうしたら良いのか。
分からなさすぎて、ずっとシャワーを浴びていたくなる。
このまま消えてしまいたいと思う一方、案外外が静かなことが気になって来た。
普段さゆりが風呂に入っている時、シバは早く出て来いとギャンギャン騒いでいる。
彼女らがうまく相手をしているのだろうか。
これまでさゆりの言うことは全然聞かなかったくせに、あの2人にはやけに従順だったシバに違和感を覚え始めていた。
いや、2人、と言うよりおそらくはきみやだ。
えりかに飛びかかろうとした時はきみやの静止で止まったし、
えりかがシバを引き取ろうとした時も、きみやが割り込んで来たらあっさりさゆりのスーツを離した。
思えば、シバが大人しくなるのはこれが初めてじゃない。
長谷川が来た時も、シバは大人しくなったじゃないか。
ちゃんと躾けないと犬は人間の女をナメると聞くが、シバも男に対しては従順なのだろうか。
ふと、シャワーを止めてみる。
やっぱり、静かすぎる。
なんだか胸騒ぎがして、さゆりは慌てて浴室を出た。
脱衣所にある洗濯機から、適当に衣服を探して着る。
髪を乾かすのもそこそこに、雫の垂れるミディアムヘアを包むように軽くバスタオルを頭に巻いて脱衣所の扉を開けた。
視線を移した廊下の先には、シバ達がいるはずの居室がある。
しかし、そこには誰もいなかった。
「シバ?」
念のため呼んでみるが、返事はない。
咄嗟に玄関を確認すると、そこにはさゆりが脱いだパンプスしかなかった。
深く考える前にそのパンプスをつっかけてフックに引っ掛けた鍵を掴むと、玄関を飛び出す。
誰もいない廊下を小走りに通り、エレベーターを呼んだ。
機体は一階にあるらしく、五階に来るまでしばし掛かる。焦れながらも階段よりは早いはずと判断し、緩慢に開く扉に突っ込むように乗り込んで閉ボタンを連打した。一階に着いたらオートロックの自動ドアをすり抜けるように飛び出して一気に近隣のコインパーキングまで走る。半ば予想してはいたが、えりか達のレガシィは既にどこにも無かった。
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