人生の意義:推し

Prologue

6

「特待生制度だと、学費、制服、施設管理費などはすべて免除。食堂利用費や文具などの必要経費として月10万が支給される。」
「は？」
「もらえるんだよ。最低限の成績と実績を保てば、という制約はつくけどな。」

自分でも目の色が変わった自覚はあるが、担任は苦笑していた。迷ったんだけどな、と続ける。

「一般生への風当たりは強いし、いじめに耐え切れなくて退学する生徒の噂も聞くが、お前なら大丈夫な気もするんだよな。」

(あの学園”から”推薦状がきた以上逃げられるは思えないんだがな。あの条件以外に顔面審査もあるっていうのは言う必要ないだろう。あの見た目で突破できないとも思えないし。)

そんなことを担任が考えていたなんて、私は知る由もない。
資料を持ち帰って両親とも相談し、さんざん考えて、出した答えは。



私、宮鷹志桜里みやおう　しおり。今、慶州学園の門前にいるの。
ロールスロイスやベンツなど貧乏人でも知っている車が学園の入り口に向かって大渋滞を起こしている。それを遠い目で見ながら、ちょっと今後悔しているのだ。場違い感半端ない。歩いて通学してるの私しかいないんだけど。

これは、前世で推しに会うために徳を積んできた女性がトラ転をして、超絶美少女に生まれ変わり、りょうくん似イケメンの目線の合った写真を手に入れようと奮闘する少女の物語である。

というのはあくまでも彼女の視点で、庶民がお金持ち学校に入学してイケメン攻略対象者に見初められてシンデレラストーリーを歩む乙女ゲームである。はずなのだが、彼女の推し似の彼、攻略対象者じゃないんだよなあ。主人公のサポート役でどうしたって恋愛対象になりえないキャラクターなのだが、どうなることやら。ま、いいよね。