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人生終了のお知らせ

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王城のガーデンテラスに通された。バラ園はとても見事しか言いようがない。語彙力?あるわけないでしょう?

「ミリア嬢、そろそろ陛下がいらっしゃるよ。」

美丈夫の言葉で慌てて立ち上がる。馬車の中で敬語はやめてほしいと頼み込んだおかげで砕けた対応をしてもらっている。こちらの方が絶対いい。遥か上の位の方に敬われるのってかなり居た堪れないもの。口上や当座の所作は教えてもらったが、果たしてこれでいいものなのか。国王陛下が参られました。と言う言葉に、昔簡単に習ったことも思い出して何とか頭を下げる。

「よく来てくれた。」

すぐさま顔を上げるよう言われるが、あげていいものなのか。少し迷いながら体を起こす。ゆっくりと心掛けながら視線を上げた。いつもの穏やかな表情はそのままだが、威厳が感じられる。やはり、エルさんが陛下なのね。

「本日は、」
「いつも通りで構わない。非公式だからね。それでもまあ、いやはや、とても美しいな。」
「光栄にございます。」

表情は崩し過ぎてもいけないだっけ?40%くらいの微笑み。文字面だけじゃ意味わかんないよね。満足そうな顔をされているからこれで構わないのだろう。きっと。

「うちの息子だ。今日はひとつよろしく頼むよ。」

御子息、つまり王子殿下に目を移す。とてつもない男前だった。エルさんは息子の婚約者が決まらないと嘆いていたからどんなものかと思っていたが、想像以上だった。これ、きっと選り取り見取りよね?倦厭されるどころが群がられているんじゃない?何で私呼ばれたの?冷やかし?

「じゃあ、私は仕事に戻るからお若い2人だけで。」

そう告げるとエルさん、陛下は戻っていってしまった。え、待って。美丈夫も笑みひとつで去ってしまう。何話したらいいの?

「お初にお目に掛かります。ミリアと申します。よろしくお願いいたします。」
「別によろしくするつもりはない。」
「……はい?」

「女という奴はどいつもこいつも…男に合わせてヘラヘラ笑うだけで自分を持っていない。」
「は?」

「見てくれは、まあ悪くはないが、流行も終えないような田舎者に王妃が務まるわけがない。」
(ん?ディスられてる?)

腕を組み、横柄な態度で言ってのける。
ファーストインパクトで茫然としてしまったけど。前言撤回。これはモテないわ。
喧嘩売られているの?これ。
買っていいわけ?

「どうせ権力目当てなんだろう?」
「それとも財産か?」
「お前に渡す金なんて一文たりともありはしない。」
「残念だったな。」
「親父をどう言って丸め込んだのか知らないが、俺にはお見通しだ。」

…ドヤ顔されても、何というか強烈すぎる。
坊っちゃんのオンステージだ。

「国王陛下の御前に侍る前にマナーを見直してこい。両親は何をやっているんだ。お里が知れるな。どうせロクな親じゃないんだろう?」

(あ、やばい。)

「お言葉ですが、」

「不満なら何か言え。」
「……言って、よろしいのですか?」

いやいやミリア抑えなさい。こいつはじゃがいもだと思うの。いやじゃがいもに失礼ね。

「構わない。」
「…小娘の戯言として済ませてくださいね?」
「しつこい。どうせ大した仕事もしてないだろうに。」

ブチンっ

「ガタガタガタガタうるさいんだよ、坊ちゃん。こっちはお客様の顔を立てるために来たんだ。わかる?笑うに決まってるでしょう?恥をかかせるわけにいかないんだから。え?ドレスだって借り物よ。平民がドレスなんて持っているわけないでしょう?せっかく貸してくれた人の好意を無碍にするやつなんてこっちこそ願い下げよ。」
「…は?」
「権力?そんなの興味ないわ。調味料にもならないじゃない。」

「次期国王って言うならね、小娘の失態を笑顔でフォローするくらいの度量の広さ見せつけなさいよね。態度だけで、肝が小さいのよ。このボンボン坊っちゃんが。」

「な、不敬だぞ。」
「うるさい。首洗って出直してきな。」

(ふう。)

思いのままぶちまけてスッキリした。が、固まった男前、基、坊っちゃんを見て我に帰る。

(あ、やっちまった。)

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