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刃物強盗
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俺はお金に困っていた。現在、無職で親からの仕送りもないため、貯金は減っていく一方だった。
考えた末、あまりしたくはなかったが強盗という答えにありついた。
バレなければ俺の勝ちだ。もしも捕まったらおとなしく刑務所で暮らそう。これはゲームなんだ。そう、ゲーム...
狙ったのは飲食店だ。銀行にしようかとも思ったのだが、警備が厳重そうな気がしたのでやめた。
刃物は準備はしたが人を刺すつもりは無かった。余罪を追及されてしまうし、人殺しは金とは関係ない。しかし、この刃物がまさかあんな恐ろしい悲劇を招くとはこの時は思っていなかった...
普通の客の振りをして店に這入る。全国展開していない、小さなラーメン屋である。カウンターでラーメンを食べている、高校生ほどの少女が二人いたが、せいぜい客は5人ほどしかいない。
よし、今からが本番だ...
刃物を取り出す。
「おい!俺は強盗だ!大人しくしろ!」
テレビドラマでありがちなセリフを叫ぶ。何を言えばいいかよく考えていなかったため、少し焦った。しかし、言っていることは伝わったようだ。
店員も含め店の中にいる全員を部屋の隅に追いやる。恐怖のあまり震えていた人もいたが、俺の知ったことではない。金だけとってさっさと逃げよう...
「金を出せ!」
店員に刃物を突きつける。店員は怯えながらレジからお金を取ってきた。強盗するにしては低い、50万程だったが、今の俺にとっては助かる以外の何者でもなかった。
金をしまって逃げようとしたその時だった。1人の客が俺に体当たりしてきた。俺は体勢を崩す。つい、金を落としてしまった。必死で取り戻そうとしたが、それよりも早く店員が金を取った。
金が奪えない───焦りの感情が生まれ、刃物を振り回しながら近くにいた高校生の少女1人を人質にとり、刃物を首に当てた。
「こいつの命が惜しければ金を返せっ!!」
この言葉で皆動揺した。店員の金を持つ手が震えている。
本当は殺すつもりなんてない。でも殺すように見せかければ金を返してくれるだろう。そう思った。
その時、人質ではないほうの高校生の少女が涙を流して言った。
「お願い、花音を助けて...」
心がツンとした。痛い。解放してやろうと思った。でも、解放したら金は手に入らないだろう。躊躇してしまった。
「離さなくていいよ」
え?
人質にとっている少女が言った。離さなくていいよ?何を言ってるんだ?この子は...
困惑していた俺に少女は目を合わせてきた。
なんだ?人質にとられてるにも関わらず、この態度は...?
そして、少女が笑顔を浮かべた。その笑顔を見た俺はぞっとした。もう全てを悟ったかのような表情だった。
「ちょうど───」
その次の言葉で俺は恐怖に包まれた。
「───殺されたかったんだよ」
次の瞬間、少女は俺の刃物をひったくり、自分の喉元に突き刺した。
俺は唖然としてしまった。目の前で人が死んだ。血飛沫が俺にかかり、俺の服は血で染まってしまった。
俺はよろよろと地面に跪く。
その時丁度、店に警察が走ってやってきた。そこからは記憶が無い。気絶していたのだろうか。
気がつくと俺は警察に拘束され、パトカーの中にいた。
ああ、ゲームオーバーだ。
俺は大人しく刑務所で暮らそう、そう思った。
強盗をしたら普通、5年ほどの懲役期間である。それは覚悟していた。しかし、俺は殺人罪も求刑されてしまったため、懲役が5年伸びてしまった。殺してない、そう主張したが、信じてくれる人などいなかった。
刑務所の中でふと俺は考える。───あの少女は死にたかったのか、それとも───お れ を 社 会 的 に 殺 そ う と し た の か───その時の光景を思い出すと、普通に働いて暮らしている今でも、俺は恐怖で倒れそうになる...
考えた末、あまりしたくはなかったが強盗という答えにありついた。
バレなければ俺の勝ちだ。もしも捕まったらおとなしく刑務所で暮らそう。これはゲームなんだ。そう、ゲーム...
狙ったのは飲食店だ。銀行にしようかとも思ったのだが、警備が厳重そうな気がしたのでやめた。
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よし、今からが本番だ...
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「おい!俺は強盗だ!大人しくしろ!」
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店員に刃物を突きつける。店員は怯えながらレジからお金を取ってきた。強盗するにしては低い、50万程だったが、今の俺にとっては助かる以外の何者でもなかった。
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金が奪えない───焦りの感情が生まれ、刃物を振り回しながら近くにいた高校生の少女1人を人質にとり、刃物を首に当てた。
「こいつの命が惜しければ金を返せっ!!」
この言葉で皆動揺した。店員の金を持つ手が震えている。
本当は殺すつもりなんてない。でも殺すように見せかければ金を返してくれるだろう。そう思った。
その時、人質ではないほうの高校生の少女が涙を流して言った。
「お願い、花音を助けて...」
心がツンとした。痛い。解放してやろうと思った。でも、解放したら金は手に入らないだろう。躊躇してしまった。
「離さなくていいよ」
え?
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困惑していた俺に少女は目を合わせてきた。
なんだ?人質にとられてるにも関わらず、この態度は...?
そして、少女が笑顔を浮かべた。その笑顔を見た俺はぞっとした。もう全てを悟ったかのような表情だった。
「ちょうど───」
その次の言葉で俺は恐怖に包まれた。
「───殺されたかったんだよ」
次の瞬間、少女は俺の刃物をひったくり、自分の喉元に突き刺した。
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その時丁度、店に警察が走ってやってきた。そこからは記憶が無い。気絶していたのだろうか。
気がつくと俺は警察に拘束され、パトカーの中にいた。
ああ、ゲームオーバーだ。
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