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第一章
5-4.「そんなんで彼氏作ろうとか人生舐め腐ってません!?」
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「寂しがっている、ですか。しかし私とチヒロさんは、そのような関係ではありません」
否定、というより事実として、ハタノはミカへ冷静に返答したつもりだった。
二人の繋がりは、帝国に僅か十数人しかいない”勇者”の才を後世に残すためのもの。ハタノも戸惑いはあったものの、チヒロに業務だと言われ納得し、身体を結ぶ間柄となった。
そこには愛もなく恋もなく、……もちろん夫婦らしいことを取り繕う努力はしたものの、到底、愛というものに至った記憶はない。
価値観が合うのは有難いが、それは日々を効率的に過ごしたいという双方の理念が合致しただけ。
そして愛情がなければ、寂しい、という心も生まれない。
「私と妻は、通常の夫婦のように愛し合っている訳ではありません。それに愛情とは本来、オリマー商人のような一家を示すのでしょう」
かの商人一家は魅力的な家族構成をしていた、と思う。
怖がりな父に、肝っ玉な母。子供達だって口は悪くも、父親を心配していた。
ハタノとチヒロの間には、それが無い。
戦地に赴く妻に対し、引き留めもせず心配もせず、相手の迷惑にならないようにと遠慮するのみ。
仮に明日チヒロが死んだとしても、ハタノは自然と受け止めるだろう。少しは悲みながらも、明日には仕事に励む。
そんなものは、愛ではない――
「えぇ~? でも別に、愛し方なんて人それぞれでいいじゃん。はぁ~肉うめぇ! 酒が進む! 彼氏欲しいー!」
運ばれてきた串焼きを掴み、豪快に頬張るミカ。
「んむ、仕事人間には仕事人間に合った恋が、むぐ、あふへしょお?」
「そうでしょうか。あと、食べながら喋るのは行儀悪いですよ」
「奥さんだからって、べたべたしなきゃいけない法律はないじゃん。あたしはしたいけどぉ。したいけどぉ! てかシィラちゃん彼氏は? 結婚は? あたしに男紹介して!」
「すみません、二級治癒師は帝国法のリストに入りますので、結婚相手は限定されてまして。それにミカさんに男性を紹介すると、紹介した私の株が下がりそうで……」
シィラは地味に毒舌が回るなぁとハタノは思うが、黙っておく。
その間に、ミカの矛先がハタノへ。
「てか先生ってそもそも仕事人間じゃん? で、奥さんの勇者さんも噂聞くと超仕事人間じゃん? なら馬が合うんじゃないの?」
「合理的な一面があるのは助かりますね」
「って先生が思うなら向こうもそう思ってるし感謝されてるって思わない? 思うっしょ!」
「確かに……そうかもしれませんが」
もしチヒロが女々しかったり酒癖が悪かったり、夫は妻を優しく立てるものだと強要してくるタイプだったら、ハタノは辟易してただろう。
チヒロの、相手の領分に深入りしない業務姿勢に、ハタノとしては心底から感謝している――のであれば、確かに、先方もそれを喜んでるとは思う。
「それに勇者様だって女なんだから、ベッドの上でしか見せない顔とかぁ、自分にだけちょろっとだけ甘えてきたりとかぁ。そういうトコないの?」
ない、とは言えない。
雷帝様に呼ばれた帰りの馬車で見せた、妻の小さな照れ隠し。
ベッドの上での出来事。
業務と分かっていても、可愛いな、と、ハタノが感じなかったと言えば嘘になる。
……と、事実を詰み重ねていくと。
自分はもしかして意外と、妻を気に入ってるのでは? という気に段々――いや、しかし。
「しかしですね、ミカさん。やはり私達の関係は、愛情ではなく。それに寂しいかと言われると……ミカさん?」
「先輩?」
反論しようとしたら、ミカがテーブルに突っ伏していた。
うー……と小さく唸るミカ。
どうしましたか、とシィラが不安そうに近づいた時、ミカの背中が「う」と震え、
危機を察した時には遅く、彼女は盛大にリバースした。
「ミカ先輩ぃ―――――っ!? そんなんで彼氏作ろうとか人生舐め腐ってません!?」
ミカの汚物に、シィラが悲鳴と毒舌を上乗せし。
ハタノはすかさず財布を取り出し、ギレ気味に頬をひくつかせながらやってきた店員に無言で現金を握らせた。
ミカは出禁になった。
*
そうしてミカを治癒院のベッドに(嘔吐物で窒息しないよう)うつ伏せに寝かせ、可哀想なシィラを励まして帰宅した夜。
ハタノは一人、今日の会話を振り返ることにした。
食事用のテーブル。
普段、対面で妻がもぐもぐと魔噛草を食べているはずの……今日はからっぽの席を対面にして、考える。
(家族とは。夫婦とは、商人オリマー一家のようなものだと、思っていたのですが)
ハタノは一般的な家族について、よく知らない。
恋人同士の愛も、家族愛も、知らない。
両親から、愛情を注がれなかった訳ではない。むしろ一般的な家族に比べれば、裕福な生活をさせて貰ったと自覚している。
が、与えられた愛情は常に利己と私見に塗れたものであった。
――お前は治癒師として、人を救いなさい。
それが人としての、正しいあり方。
治癒師として仕事に従事し成果を出すことが、お前の存在意義である、と。
両親はハタノに精緻かつ膨大な医学知識を叩き込んだ。
医学のためなら敵国ガルアの医学書だろうと構わずに持ち込んだ。
中でも傾倒したのは、異世界の医学書だ。
その本には魔力に関する項目が大きく欠落していたが、人体解剖の理解においては極めて有用かつ、この世界の知識の遙か先を進んでおり、ハタノの知識の大元になっている。
両親がそこまで医学に固執した理由は、知らない。
ただ、昔から仕事人間として育てられたハタノは……今までずっと、誰かに好意を寄せることもなければ、誰かが居なくて寂しい、という気持ちを意識したことも、ない。
時おり、砂漠の地に一人佇むような寂しさを感じたことはあれど。
誰かを待ち遠しいと思うことなど、人生で一度たりとも無かった――
はず、だったのだが。
(ですが、今の私は妻がいないことに、寂しさを覚えている)
自覚すると、確かに、ちいさく欠けている気はした。
馴染みの飲食店が閉店していたような。あって当然のものがない感覚。
何かが手元から、滑り落ちているかのような。
その事実を認め、ハタノは僅かに息をついて……
思考を切り上げ、医学書を開いた。
「勉強でもしますか」
寂寥感を覚えたのは事実だが、だからといって枕を濡らすことはない。
その時間があるのなら、別のことをした方が、効率がいい。
チヒロも、同じはずだ。
寂しいだの愛おしいだの考えるより、子作りに励み、刀を振る、それが彼女だ。
そもそも泣いた所でどうにか出来る訳ではないのだから、考えるだけ無意味である。
ハタノはわき上がる感情に屁理屈をつけ、パタパタと折りたたむ。
心の何処かでうっすらと、何かを間違えている気もしたが、論理的には問題ないと判断。
代わりに理性を動員し、今一度――雷帝様より命じられた”尻尾”について考察する。
(軍事転用。自分の体積を増やすことで、魔力貯蔵容量を増やす)
ハタノは雷帝メリアスの狙いを、正確に見抜いていた。
魔力は血流とともに全身へ運ばれ貯蔵される。竜がその巨体で飛行できる理由は、翼に膨大な魔力を有しているからだ。
よってもし人間が同様に、外部臓器をつけることが出来れば、帝国軍の大幅な増強が可能だろう。多少の人体実験を経てでも、実践する価値はある。
――無論、ハタノはそれを口にしない。
自分が気付いたと雷帝メリアスに知られれば、軍事機密保持のためハタノを始末する可能性がある。
ハタノは知らないフリをする――フリ、でよい。
雷帝様が、ハタノの態度がフリだと気付いても「自分は雷帝様の意を酌み口外しません」という意を暗に示せば、雷帝様は見逃してくれる可能性がある。
(とはいえ人の体躯に、他生物の臓器を移植というのは非現実的ですが)
ハタノは実家より持ち出した本を開く。
狂人が残した、人間に魔物の臓器を移植した禁書の一冊。
”才”が高い者を数名誘拐したその男は、人間の手足を切り落とし、魔物の手足を埋め込む実験をした。
結果は悉く失敗だったが、成功しかけた一例があったという。
瀕死の人間――魔力が激しく欠乏した者に魔物の腕を移植した結果、血管が異常な速度で成長し、魔物の体と繋がって魔力を奪おうとする事例が確認された。
元々、人間は血管が閉塞すると、側副血管と呼ばれる別の血管が成長し、血流を補おうとする機能がある。
もちろん触手のように伸びることはないが、”才”の高い者特有の自己再生能力が掛け合わされることで起きた現象と推測される。
(まあ狂人の与太話ですので、参考になるとは思えませんが)
この手法は、あてにならないだろう。
なにせ移植前に患者を瀕死の重傷へと追い込み、かつ、本人の再生力に賭けた博打。
”才”が高いものを瀕死にした後、死亡率99%の手術を施すなど冗談ではない。
ハタノは早々にアイデアを捨て、それなら人体内に人工臓器を埋め込んだ方が早いのでは――いやしかし”創造”魔法はハタノも使えるものの限度がある。やはり無理としか言いようがない。
(非現実的、としか思えません)
我ながら無益なことを妄想してるなと思い、けれど、何か別のことを考えていないと思考が詰まりそうな気がした。
……どうしてか。何か思考をしていないと、何となくモヤモヤするのだ。
(成程。これが、寂しい、ですか。案外私は、寂しさを誤魔化すために、益体も無いことを考えてるのかもしれません)
しばらくそんなことを考えつつ、ハタノは瞼を閉じる。
その日は随分と、寝付くのに時間がかかってしまった。
……チヒロさん。
早く、帰ってこないだろうか。
否定、というより事実として、ハタノはミカへ冷静に返答したつもりだった。
二人の繋がりは、帝国に僅か十数人しかいない”勇者”の才を後世に残すためのもの。ハタノも戸惑いはあったものの、チヒロに業務だと言われ納得し、身体を結ぶ間柄となった。
そこには愛もなく恋もなく、……もちろん夫婦らしいことを取り繕う努力はしたものの、到底、愛というものに至った記憶はない。
価値観が合うのは有難いが、それは日々を効率的に過ごしたいという双方の理念が合致しただけ。
そして愛情がなければ、寂しい、という心も生まれない。
「私と妻は、通常の夫婦のように愛し合っている訳ではありません。それに愛情とは本来、オリマー商人のような一家を示すのでしょう」
かの商人一家は魅力的な家族構成をしていた、と思う。
怖がりな父に、肝っ玉な母。子供達だって口は悪くも、父親を心配していた。
ハタノとチヒロの間には、それが無い。
戦地に赴く妻に対し、引き留めもせず心配もせず、相手の迷惑にならないようにと遠慮するのみ。
仮に明日チヒロが死んだとしても、ハタノは自然と受け止めるだろう。少しは悲みながらも、明日には仕事に励む。
そんなものは、愛ではない――
「えぇ~? でも別に、愛し方なんて人それぞれでいいじゃん。はぁ~肉うめぇ! 酒が進む! 彼氏欲しいー!」
運ばれてきた串焼きを掴み、豪快に頬張るミカ。
「んむ、仕事人間には仕事人間に合った恋が、むぐ、あふへしょお?」
「そうでしょうか。あと、食べながら喋るのは行儀悪いですよ」
「奥さんだからって、べたべたしなきゃいけない法律はないじゃん。あたしはしたいけどぉ。したいけどぉ! てかシィラちゃん彼氏は? 結婚は? あたしに男紹介して!」
「すみません、二級治癒師は帝国法のリストに入りますので、結婚相手は限定されてまして。それにミカさんに男性を紹介すると、紹介した私の株が下がりそうで……」
シィラは地味に毒舌が回るなぁとハタノは思うが、黙っておく。
その間に、ミカの矛先がハタノへ。
「てか先生ってそもそも仕事人間じゃん? で、奥さんの勇者さんも噂聞くと超仕事人間じゃん? なら馬が合うんじゃないの?」
「合理的な一面があるのは助かりますね」
「って先生が思うなら向こうもそう思ってるし感謝されてるって思わない? 思うっしょ!」
「確かに……そうかもしれませんが」
もしチヒロが女々しかったり酒癖が悪かったり、夫は妻を優しく立てるものだと強要してくるタイプだったら、ハタノは辟易してただろう。
チヒロの、相手の領分に深入りしない業務姿勢に、ハタノとしては心底から感謝している――のであれば、確かに、先方もそれを喜んでるとは思う。
「それに勇者様だって女なんだから、ベッドの上でしか見せない顔とかぁ、自分にだけちょろっとだけ甘えてきたりとかぁ。そういうトコないの?」
ない、とは言えない。
雷帝様に呼ばれた帰りの馬車で見せた、妻の小さな照れ隠し。
ベッドの上での出来事。
業務と分かっていても、可愛いな、と、ハタノが感じなかったと言えば嘘になる。
……と、事実を詰み重ねていくと。
自分はもしかして意外と、妻を気に入ってるのでは? という気に段々――いや、しかし。
「しかしですね、ミカさん。やはり私達の関係は、愛情ではなく。それに寂しいかと言われると……ミカさん?」
「先輩?」
反論しようとしたら、ミカがテーブルに突っ伏していた。
うー……と小さく唸るミカ。
どうしましたか、とシィラが不安そうに近づいた時、ミカの背中が「う」と震え、
危機を察した時には遅く、彼女は盛大にリバースした。
「ミカ先輩ぃ―――――っ!? そんなんで彼氏作ろうとか人生舐め腐ってません!?」
ミカの汚物に、シィラが悲鳴と毒舌を上乗せし。
ハタノはすかさず財布を取り出し、ギレ気味に頬をひくつかせながらやってきた店員に無言で現金を握らせた。
ミカは出禁になった。
*
そうしてミカを治癒院のベッドに(嘔吐物で窒息しないよう)うつ伏せに寝かせ、可哀想なシィラを励まして帰宅した夜。
ハタノは一人、今日の会話を振り返ることにした。
食事用のテーブル。
普段、対面で妻がもぐもぐと魔噛草を食べているはずの……今日はからっぽの席を対面にして、考える。
(家族とは。夫婦とは、商人オリマー一家のようなものだと、思っていたのですが)
ハタノは一般的な家族について、よく知らない。
恋人同士の愛も、家族愛も、知らない。
両親から、愛情を注がれなかった訳ではない。むしろ一般的な家族に比べれば、裕福な生活をさせて貰ったと自覚している。
が、与えられた愛情は常に利己と私見に塗れたものであった。
――お前は治癒師として、人を救いなさい。
それが人としての、正しいあり方。
治癒師として仕事に従事し成果を出すことが、お前の存在意義である、と。
両親はハタノに精緻かつ膨大な医学知識を叩き込んだ。
医学のためなら敵国ガルアの医学書だろうと構わずに持ち込んだ。
中でも傾倒したのは、異世界の医学書だ。
その本には魔力に関する項目が大きく欠落していたが、人体解剖の理解においては極めて有用かつ、この世界の知識の遙か先を進んでおり、ハタノの知識の大元になっている。
両親がそこまで医学に固執した理由は、知らない。
ただ、昔から仕事人間として育てられたハタノは……今までずっと、誰かに好意を寄せることもなければ、誰かが居なくて寂しい、という気持ちを意識したことも、ない。
時おり、砂漠の地に一人佇むような寂しさを感じたことはあれど。
誰かを待ち遠しいと思うことなど、人生で一度たりとも無かった――
はず、だったのだが。
(ですが、今の私は妻がいないことに、寂しさを覚えている)
自覚すると、確かに、ちいさく欠けている気はした。
馴染みの飲食店が閉店していたような。あって当然のものがない感覚。
何かが手元から、滑り落ちているかのような。
その事実を認め、ハタノは僅かに息をついて……
思考を切り上げ、医学書を開いた。
「勉強でもしますか」
寂寥感を覚えたのは事実だが、だからといって枕を濡らすことはない。
その時間があるのなら、別のことをした方が、効率がいい。
チヒロも、同じはずだ。
寂しいだの愛おしいだの考えるより、子作りに励み、刀を振る、それが彼女だ。
そもそも泣いた所でどうにか出来る訳ではないのだから、考えるだけ無意味である。
ハタノはわき上がる感情に屁理屈をつけ、パタパタと折りたたむ。
心の何処かでうっすらと、何かを間違えている気もしたが、論理的には問題ないと判断。
代わりに理性を動員し、今一度――雷帝様より命じられた”尻尾”について考察する。
(軍事転用。自分の体積を増やすことで、魔力貯蔵容量を増やす)
ハタノは雷帝メリアスの狙いを、正確に見抜いていた。
魔力は血流とともに全身へ運ばれ貯蔵される。竜がその巨体で飛行できる理由は、翼に膨大な魔力を有しているからだ。
よってもし人間が同様に、外部臓器をつけることが出来れば、帝国軍の大幅な増強が可能だろう。多少の人体実験を経てでも、実践する価値はある。
――無論、ハタノはそれを口にしない。
自分が気付いたと雷帝メリアスに知られれば、軍事機密保持のためハタノを始末する可能性がある。
ハタノは知らないフリをする――フリ、でよい。
雷帝様が、ハタノの態度がフリだと気付いても「自分は雷帝様の意を酌み口外しません」という意を暗に示せば、雷帝様は見逃してくれる可能性がある。
(とはいえ人の体躯に、他生物の臓器を移植というのは非現実的ですが)
ハタノは実家より持ち出した本を開く。
狂人が残した、人間に魔物の臓器を移植した禁書の一冊。
”才”が高い者を数名誘拐したその男は、人間の手足を切り落とし、魔物の手足を埋め込む実験をした。
結果は悉く失敗だったが、成功しかけた一例があったという。
瀕死の人間――魔力が激しく欠乏した者に魔物の腕を移植した結果、血管が異常な速度で成長し、魔物の体と繋がって魔力を奪おうとする事例が確認された。
元々、人間は血管が閉塞すると、側副血管と呼ばれる別の血管が成長し、血流を補おうとする機能がある。
もちろん触手のように伸びることはないが、”才”の高い者特有の自己再生能力が掛け合わされることで起きた現象と推測される。
(まあ狂人の与太話ですので、参考になるとは思えませんが)
この手法は、あてにならないだろう。
なにせ移植前に患者を瀕死の重傷へと追い込み、かつ、本人の再生力に賭けた博打。
”才”が高いものを瀕死にした後、死亡率99%の手術を施すなど冗談ではない。
ハタノは早々にアイデアを捨て、それなら人体内に人工臓器を埋め込んだ方が早いのでは――いやしかし”創造”魔法はハタノも使えるものの限度がある。やはり無理としか言いようがない。
(非現実的、としか思えません)
我ながら無益なことを妄想してるなと思い、けれど、何か別のことを考えていないと思考が詰まりそうな気がした。
……どうしてか。何か思考をしていないと、何となくモヤモヤするのだ。
(成程。これが、寂しい、ですか。案外私は、寂しさを誤魔化すために、益体も無いことを考えてるのかもしれません)
しばらくそんなことを考えつつ、ハタノは瞼を閉じる。
その日は随分と、寝付くのに時間がかかってしまった。
……チヒロさん。
早く、帰ってこないだろうか。
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