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ドッグフード
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我が家では犬と猫を一匹ずつ飼っていた。
犬の名前は「ポンスケ」。猫の名前は「チーコ」。
それぞれ私が生まれた頃から飼われていた。
犬のポンスケは秋田犬のオスで、とてもおとなしく利口であった。ただ少し臆病で、車の来客などがあれば、これでもかというほど吠え立てた。
散歩に連れていくのは私と祖父の役割だった。
午後の五時に出発し、山の入り口のところまで行ってUターンして帰る、というのがいつものルートだった。
思えば、ポンスケは祖父によく懐いていた。祖父の言うことはよく聞いていたし、祖父もそんなポンスケを信頼していた。
一方の猫のチーコは三毛猫のメスでこれがなかなかの厄介者だった?よく晩飯を荒らしたりあちこちで爪を研いだりしていたので、祖母が目くじらを立てていた。
だがその一方で私はチーコを気に入っていて、一緒に寝ようとしたこともある。(それはすぐに見つかって怒られたが。)
野飼いなので基本は外をプラプラしているのだが、夕方になると、「開けろ」とばかりにニャーニャー鳴いて戻ってくる。家だとちゃんと認識しているのだろうか。なんとも不思議な習性である。
この二匹の餌やりの世話も私の役目だった。
朝と晩の二回。いつも決まった量のドッグフードをそれぞれの器に盛る。(うちは猫にもドッグフードをやっていた。)
ポンスケには餌をやるときにきまりがあり、「お手」、「おかわり」、「ワン」の三つの手順をふんでから食べさせるようにしていた。
特にこの決まりに理由はないのだが、ポンスケは私の言葉をよく理解して付き合ってくれた。そうしてドッグフードを美味そうにがっつくのだ。
私はある日思った。
「ドッグフードって美味いのか?」と。
そんな思いが脳裏をよぎったが、私はためらった。なんか手を出したらいけない、禁断の味のような気がしたのだ。それをやってはいけない。なんか、人としてダメな気がする。
だが私は遂に敢行してしまった。
人しての尊厳よりも、知的好奇心の方がわずかに上回ってしまったのた。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけと、とりあえず一粒だけ口に含んでみた。
……
……
味がしない。
むしろ、なんか臭みを感じる。
ドッグフードには様々な形や色があり、それぞれ味の違いはあるのかと他のものも試してみたが、どれも似たような味だった。
なんというか、その辺りの雑草を乾燥させて固めたような味だった。(雑草の味は分からないが、イメージで伝わってもらうとありがたい。)
ううむ。ポンスケやチーコはこんなものを毎日食ってるのか。
その日私は、彼らの日常に少し理解が深まりつつ、人として何かをなくしたような気がした。
しかしこんな奇行、私の他にやる奴はいないだろう、なんて思っていたら、ペットフード業界での味見は実際に人間がやっているというから驚きだ。業界では肉の硬さや香り、そして人間が食べても大丈夫かどうかまできちんとチェックされてから販売されているそうだ。あの日私がペットフードを食べても問題なかったのも、日夜研究されているペット食品の研究員のおかげというわけである。ありがたい話だ。
さてそんな彼らだが、私が成人する頃には残念ながら二匹とも死んでしまった。
犬のポンスケは祖父が肺ガンで亡くなったあと、後を追うようにすぐに死んでしまった。
猫のチーコは、突然姿を消したかと思うと、雨上がりのある日にびしょ濡れの状態で死んでいるのが見つかった。
ポンスケもチーコも、私はとても大好きだった。彼らはとても素敵な思い出を残してくれた。
それこそ死ぬのがわかった時、家族同様に泣いて悲しんだのを覚えている。
彼らは死後、私の一族の墓地の隅っこに埋葬された。毎年墓参りの時には、父や親戚は覚えていないが、私だけはその場所に線香を立てている。
ゴルゴ13「黄金の犬」のエピソードのラストにて、次のような言葉が綴られている。
「犬はかけがいの無い、人間のパートナーであり、その関係は神秘的ですらある。そんな犬好きの、誰かが言った。
『子供が産まれたら子犬を飼うがいい、
子犬は子供より早く成長して、子供を守ってくれるだろう。
そして子供が成長すると良き友となる。
青年となり多感な年頃に犬は年老いて、死ぬだろう。
犬は青年に教えるのである、死の悲しみを』」
私もこれから先、もし家族を持つことになり、子供が生まれたら、何かペットを与えてあげたいと思う。
犬の名前は「ポンスケ」。猫の名前は「チーコ」。
それぞれ私が生まれた頃から飼われていた。
犬のポンスケは秋田犬のオスで、とてもおとなしく利口であった。ただ少し臆病で、車の来客などがあれば、これでもかというほど吠え立てた。
散歩に連れていくのは私と祖父の役割だった。
午後の五時に出発し、山の入り口のところまで行ってUターンして帰る、というのがいつものルートだった。
思えば、ポンスケは祖父によく懐いていた。祖父の言うことはよく聞いていたし、祖父もそんなポンスケを信頼していた。
一方の猫のチーコは三毛猫のメスでこれがなかなかの厄介者だった?よく晩飯を荒らしたりあちこちで爪を研いだりしていたので、祖母が目くじらを立てていた。
だがその一方で私はチーコを気に入っていて、一緒に寝ようとしたこともある。(それはすぐに見つかって怒られたが。)
野飼いなので基本は外をプラプラしているのだが、夕方になると、「開けろ」とばかりにニャーニャー鳴いて戻ってくる。家だとちゃんと認識しているのだろうか。なんとも不思議な習性である。
この二匹の餌やりの世話も私の役目だった。
朝と晩の二回。いつも決まった量のドッグフードをそれぞれの器に盛る。(うちは猫にもドッグフードをやっていた。)
ポンスケには餌をやるときにきまりがあり、「お手」、「おかわり」、「ワン」の三つの手順をふんでから食べさせるようにしていた。
特にこの決まりに理由はないのだが、ポンスケは私の言葉をよく理解して付き合ってくれた。そうしてドッグフードを美味そうにがっつくのだ。
私はある日思った。
「ドッグフードって美味いのか?」と。
そんな思いが脳裏をよぎったが、私はためらった。なんか手を出したらいけない、禁断の味のような気がしたのだ。それをやってはいけない。なんか、人としてダメな気がする。
だが私は遂に敢行してしまった。
人しての尊厳よりも、知的好奇心の方がわずかに上回ってしまったのた。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけと、とりあえず一粒だけ口に含んでみた。
……
……
味がしない。
むしろ、なんか臭みを感じる。
ドッグフードには様々な形や色があり、それぞれ味の違いはあるのかと他のものも試してみたが、どれも似たような味だった。
なんというか、その辺りの雑草を乾燥させて固めたような味だった。(雑草の味は分からないが、イメージで伝わってもらうとありがたい。)
ううむ。ポンスケやチーコはこんなものを毎日食ってるのか。
その日私は、彼らの日常に少し理解が深まりつつ、人として何かをなくしたような気がした。
しかしこんな奇行、私の他にやる奴はいないだろう、なんて思っていたら、ペットフード業界での味見は実際に人間がやっているというから驚きだ。業界では肉の硬さや香り、そして人間が食べても大丈夫かどうかまできちんとチェックされてから販売されているそうだ。あの日私がペットフードを食べても問題なかったのも、日夜研究されているペット食品の研究員のおかげというわけである。ありがたい話だ。
さてそんな彼らだが、私が成人する頃には残念ながら二匹とも死んでしまった。
犬のポンスケは祖父が肺ガンで亡くなったあと、後を追うようにすぐに死んでしまった。
猫のチーコは、突然姿を消したかと思うと、雨上がりのある日にびしょ濡れの状態で死んでいるのが見つかった。
ポンスケもチーコも、私はとても大好きだった。彼らはとても素敵な思い出を残してくれた。
それこそ死ぬのがわかった時、家族同様に泣いて悲しんだのを覚えている。
彼らは死後、私の一族の墓地の隅っこに埋葬された。毎年墓参りの時には、父や親戚は覚えていないが、私だけはその場所に線香を立てている。
ゴルゴ13「黄金の犬」のエピソードのラストにて、次のような言葉が綴られている。
「犬はかけがいの無い、人間のパートナーであり、その関係は神秘的ですらある。そんな犬好きの、誰かが言った。
『子供が産まれたら子犬を飼うがいい、
子犬は子供より早く成長して、子供を守ってくれるだろう。
そして子供が成長すると良き友となる。
青年となり多感な年頃に犬は年老いて、死ぬだろう。
犬は青年に教えるのである、死の悲しみを』」
私もこれから先、もし家族を持つことになり、子供が生まれたら、何かペットを与えてあげたいと思う。
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