がらくたのおもちゃ箱

苛政は虎よりも猛し

とあるところに、あちこちを放浪する旅人がおりました。

ある日、旅人はお墓の前で泣いている女を見かけました。
旅人は問います。
「もし。一体何を泣いておられるのですか？」
すると女は答えました。
「実は私は国からここへ引っ越してきたのですが、この地では虎がよく出るのです。その虎に、私の息子と夫が食べられてしまったのです。」
旅人は言いました。
「それはお気の毒に。しかし、そんな恐ろしい所なら国に戻ればよろしいでしょう？」
しかし女は首を振って言いました。
「いいえ。国は私たちに重い税を課し、働けども働けども手に入るものはごくわずか。役人はまるで貴族のように振る舞い、自分達は贅沢三昧。一応私たちのためと政治のようなことを行うのですが、私たちの苦しみを理解できない役人達はまるでおままごとのような事しかやらず、それに振り回される私たちの苦しみは増すばかり。ここで暮らして虎に食われる方が遥かにマシなのでございます。」
女の答えに旅人は嘆きました。
「“苛政は虎よりも猛し"ですか。酷い政治は虎よりも恐ろしい。なんとも嘆かわしい話ですな。」

泣き続ける女に旅人は続けて問いました。
「ところであなたが来られた国というのは、一体どこの国ですかな？」
旅人の問いに女は答えました。
「はい。日本という所でございます。」
「その役人の名前は分かりますかな？」
「はい。名前は存じませぬが、私たちは“増税メガネ“と……。」