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七瀬 2
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あれやこれやと話すうち、七瀬が頼んでいたカフェオレがやってきた。
「お待ちどうさま。じゃ、あとはごゆっくり。」
「あ、ありがとうございます。」
会釈をしながら受け取る七瀬。
女主人はと言うと、何やら下衆な勘ぐりをしているのか、七瀬と青島を見やってはニヤニヤ笑いながら、カウンターの方へと消えていった。
「いいところですね。ここ。店主さんもいい人そうだし。」
「そうかあ?」
「そうですよ。私に対しても、まるで昔からの知り合いみたいに接してくれて…。」
そう言って、七瀬はまた笑顔を見せる。心の底から、嬉しい、というような笑顔を。
本当に何でもないような日常の一コマが、彼女にはとても嬉しい事なのだろうか。
とはいえ、青島は手放しで彼女を信じるわけにはいかなかった。自身の相棒であり恩師であるチョーさんを殺した、「ミリア」。その化け物を探す目の前の女が、その「ミリア」とどう関わっているのか、目的はなんなのか、それが見えてこないからである。
(もしかして、あの化け物を目撃した俺を口封じに殺しに来た、とか……。いやしかし……。)
青島はあれやこれやと考えを巡らせるが、結論には至らなかった。至極当然であろう。目の前の女が信用に足るかどうか、それをどれだけ考えようと実際に話を聞かないことには判断のしようがないのだから。
意を決した青島は、改めて彼女に向き直って言った。
「……わかった。とにかくあんたの話を聞こう。協力するかはそれから考える。」
「ありがとうございます!」
青島の言葉を受けて、七瀬はそれは嬉しそうに返事をした。
(何とまあ、無邪気というか、なんというか……。)
あまりの屈託のない笑顔に、青島はなんだか毒気がぬけて、あれやこれやと思案を巡らせていた自分が馬鹿馬鹿しく思えた。どうにも自分を嵌めてやろう、だとか陥れてやろう、といった意思が、彼女からは感じられないのだ。信用していいかはともかく、敵意はないらしい。
しかし、それだけに彼女が「ミリア」とどう関わっているのかがますますわからなかった。目の前の無邪気に笑う女性が、あのおぞましい化け物とまるで接点がないように感じたのだ。
そこで青島は彼女に尋ねる事にした。
「まず、あんたのことについて教えてくれないか?どんな生い立ちか。なんで『ミリア』のことを知っているのか。」
青島の問いを聞いた七瀬は、先程までの笑顔から真顔に戻る。
「……分かりました。お話しましょう。どのみち、『ミリア』の事を教えるには、私の事は不可欠なことですから。」
「それは、一体どういう……?」
身を乗り出して尋ねようとした青島だったが、七瀬はそんな彼をグイと押し戻した。
「とりあえず、コーヒーのお代わりでも頼みますか?グラス、ずっと空ですよね?」
「は?いや、俺は別に構わないけど…。」
「話、長くなりますよ?」
「む…。」
七瀬の言う通り、青島のグラスはもう随分と空のままだった。さらにいうと、青島はさっきまで色々と緊張していたせいで喉がカラカラだった。彼女の話は気になるが、一息入れるのも悪くない……。
などと青島が考えているうちに、七瀬は先程の女主人に向かって、
「すいませーん!コーヒーお代わりー!」
と元気に注文をしていた。
呆気に取られる青島。七瀬はというと、鼻歌を口ずさみながら頬杖をつき、足をパタパタさせて次のコーヒーを待っている様子。
どうやらお代わりが来るまで話を始めてくれそうになさそうだ。
(…やれやれ。なんなんだ。この子は……。)
もどかしい気持ちを抑えながら、青島は七瀬と共に次のコーヒーが来るのを待つ事にしたのだった。
「お待ちどうさま。じゃ、あとはごゆっくり。」
「あ、ありがとうございます。」
会釈をしながら受け取る七瀬。
女主人はと言うと、何やら下衆な勘ぐりをしているのか、七瀬と青島を見やってはニヤニヤ笑いながら、カウンターの方へと消えていった。
「いいところですね。ここ。店主さんもいい人そうだし。」
「そうかあ?」
「そうですよ。私に対しても、まるで昔からの知り合いみたいに接してくれて…。」
そう言って、七瀬はまた笑顔を見せる。心の底から、嬉しい、というような笑顔を。
本当に何でもないような日常の一コマが、彼女にはとても嬉しい事なのだろうか。
とはいえ、青島は手放しで彼女を信じるわけにはいかなかった。自身の相棒であり恩師であるチョーさんを殺した、「ミリア」。その化け物を探す目の前の女が、その「ミリア」とどう関わっているのか、目的はなんなのか、それが見えてこないからである。
(もしかして、あの化け物を目撃した俺を口封じに殺しに来た、とか……。いやしかし……。)
青島はあれやこれやと考えを巡らせるが、結論には至らなかった。至極当然であろう。目の前の女が信用に足るかどうか、それをどれだけ考えようと実際に話を聞かないことには判断のしようがないのだから。
意を決した青島は、改めて彼女に向き直って言った。
「……わかった。とにかくあんたの話を聞こう。協力するかはそれから考える。」
「ありがとうございます!」
青島の言葉を受けて、七瀬はそれは嬉しそうに返事をした。
(何とまあ、無邪気というか、なんというか……。)
あまりの屈託のない笑顔に、青島はなんだか毒気がぬけて、あれやこれやと思案を巡らせていた自分が馬鹿馬鹿しく思えた。どうにも自分を嵌めてやろう、だとか陥れてやろう、といった意思が、彼女からは感じられないのだ。信用していいかはともかく、敵意はないらしい。
しかし、それだけに彼女が「ミリア」とどう関わっているのかがますますわからなかった。目の前の無邪気に笑う女性が、あのおぞましい化け物とまるで接点がないように感じたのだ。
そこで青島は彼女に尋ねる事にした。
「まず、あんたのことについて教えてくれないか?どんな生い立ちか。なんで『ミリア』のことを知っているのか。」
青島の問いを聞いた七瀬は、先程までの笑顔から真顔に戻る。
「……分かりました。お話しましょう。どのみち、『ミリア』の事を教えるには、私の事は不可欠なことですから。」
「それは、一体どういう……?」
身を乗り出して尋ねようとした青島だったが、七瀬はそんな彼をグイと押し戻した。
「とりあえず、コーヒーのお代わりでも頼みますか?グラス、ずっと空ですよね?」
「は?いや、俺は別に構わないけど…。」
「話、長くなりますよ?」
「む…。」
七瀬の言う通り、青島のグラスはもう随分と空のままだった。さらにいうと、青島はさっきまで色々と緊張していたせいで喉がカラカラだった。彼女の話は気になるが、一息入れるのも悪くない……。
などと青島が考えているうちに、七瀬は先程の女主人に向かって、
「すいませーん!コーヒーお代わりー!」
と元気に注文をしていた。
呆気に取られる青島。七瀬はというと、鼻歌を口ずさみながら頬杖をつき、足をパタパタさせて次のコーヒーを待っている様子。
どうやらお代わりが来るまで話を始めてくれそうになさそうだ。
(…やれやれ。なんなんだ。この子は……。)
もどかしい気持ちを抑えながら、青島は七瀬と共に次のコーヒーが来るのを待つ事にしたのだった。
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