奇談

《体験談？》キノコ

　食欲の秋…。

　街並みをぶらぶらと歩いていると、「ポルチーニ茸香るスパゲッティ」などと、秋を感じさせる新メニューの写真がちらほらと見えた。
　ポルチーニといえばイタリアを代表するキノコで豊かな香りが特徴であるが、近年では酸性雨の影響で激減してしまい、主に流通しているのは中国のものらしい。ポルチーニ茸自体、広義ではヤマドリタケ以外のイグチ科ヤマドリタケモドキなどの近縁のキノコもポルチーニに含まれるので、本物のポルチーニの定義も曖昧。写真ではいかにもイタリア産らしく振る舞っているが、それが本当にイタリア産かどうかも怪しいものだ。(その店には悪いが)

　とはいえ秋といえばキノコもまた秋の味覚の一つだ。中には市販のものでなく、自ら山に登ってきのこ狩りを行う、なんて方も世の中にはいらっしゃる。だが自分できのこ狩りを行う場合は毒キノコを取らないように要注意である。明らかに毒性のものもあれば、中には名人でも見分けがつかないほどに、食用のものと見た目が変わらないキノコだってある。更には同じキノコでも食べられる時期が決まっていたり、同じキノコなのに成長時期によって姿を大きく変える種もある。
　厄介なのが、今まで食用として扱っていたのに、突然毒性を持つようになったケースだ。
　その代表例として名高いのが「スギヒラタケ」だろう。
　かつて食用キノコとして普通に缶詰等で流通していたキノコなのだが、2004年にキノコ毒による中毒事件が起きて以来、死亡例もある毒キノコとして現在も食べてはならないとされている。何故急にスギヒラタケが毒性を持つようになったのかはいまだに謎らしい。
　そんな訳で、我々が普段何気なく食べているキノコも、急に毒性を持って食べられなくなる、なんてこともあるかもしれない。嗚呼、秋の味覚が一つなくなるなんて想像もしたくない。

　それにしてもキノコを調べてみると、毒キノコによる毒性が色々と分類されていることに驚く。
　厚生労働省が発表している誤食しやすいキノコにも詳しくその毒の症例が載っている。例えばツキヨタケは、食べると30分～1時間で嘔吐、下痢、腹痛等を起こす、とある。

　ふーん。このキノコを食べるとこんな症状になるんだ。なんでこのキノコを食べたらこんな症状になるって分かるんだろう？毒素から分析できるのかなあ？
　……などと思った方もいらっしゃるかもしれない。確かに医療技術も進化した今、このキノコから抽出される毒素から中毒症状を割り出すこともできるかもしれない。


　だが答えはいたってシンプル。
　それはそのキノコを食ったヤツがいたからである。


　そう。誤食しそうなキノコだけでなく、雨の後にニョキニョキ生えてくるみるからに変なキノコや、いやもうこれはダメだろ、って色をしたキノコも、少なくとも一度は食われた事例があるのだ。
　日本には200種類以上の毒キノコがあるとされているが、そのすべてが一度食べられた可能性がある。
　某漫画では「キノコを最初に食べようと思った者を尊敬する…」なんてセリフもあるが、そんな彼は、あからさまに食べたらダメなキノコを食べて死んだヤツは尊敬できるんだろうか？とくに「カエンタケ」などは少なくとも食べられる見た目はしていない。
　だがしかし彼らが食べてくれたおかげで、キノコの毒の症状がわかったのだ。先人達に「尊敬」はしないが「感謝」はしなければならないだろう。

　さて、ここまでキノコについて述べたのだが、キノコはここでは語りきれないほどの神秘性、未知の部分が多分にある。
　ある物は一晩のたった一度だけ美しい網傘を張るものがあったり、漢方や医療に使われたり、LSDなどのドラッグに用いられたり、別のキノコに寄生してち◯この形にさせられたり…とじつにさまざまだ。
　彼らの魅力はとても簡単には語りきれないので、皆さんはキノコについて解説している動画で彼らのことを知ってもらうと良いだろう。

　というわけで、オカルトとは全く関係ない注意喚起の内容となってしまったが、とにかく皆さんはきのこ狩りの際は絶対に以下のことを守っていただきたい。
　・気軽に素人一人できのこ狩りに行かないこと
　・きのこ狩りの専門家と最新版のキノコ図鑑を持つ事
　・間違えやすいキノコの名前と特徴と見分け方を知っていること
　・地元の迷信を信じないこと
　・食べられるキノコが生える場所を知っていること

　以上のことを厳守する。もちろん死ぬことも覚悟の上で行った方がいい。

　そこまでしてキノコ狩りなんか行きたくないって？
　じゃあ市販の物を食べなさい。それがもっとも確実で安全な方法だ。