コトノハ

hyui

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捨てられないもの

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どんなに歳を重ねても

捨てられないものがある

人がどんなにくだらないと笑っても

それは無価値だと言われても

どうしても捨てられないものがある




私にとってのそれは

「母子手帳」だった

一冊のボロボロの母子手帳

それだけが何故か捨てられない



私には母の記憶がない

どんな顔をしてどんな声をしていたのか

覚えていない

ただ一つ覚えているのは

私と自分の体に火をつけようとしていたこと

それだけだった



ちゃんちゃら可笑しい話だ

三十路を越えたいい大人になってなお

母の面影を断ち切れずにいる

顔も知らない女の面影を

私を殺そうとした女の面影を



だけど捨てられない

私には捨てられない

これを捨てれば

母との絆が無くなってしまいそうで

愛されていたという証拠を失ってしまいそうで



あなたには捨てられないものはありますか

誰かに笑われても

無価値とそしられても

捨てられないものはありますか
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