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人形師編
「ドリームランド」 VS人形師2
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暗闇の鏡の迷宮の中、穴取のクロスボウから辛うじて逃れ続けるヒカル。
穴取は一発のボウガンを撃ってはヒカルの死角へ隠れ、また一発撃っては隠れてを繰り返していた。ヒカルとの距離は付かず離れず。一定の距離を保ちながら。
周りが鏡だらけで魔眼の使えないヒカルは、この穴取の戦法に徐々に、しかし確実に追い詰められていた。
(…全くもって厄介だな。鏡が視界に映らない至近距離ならまだチャンスはあるんだが、奴もそれを警戒してか、クロスボウを使ってきてる。しかも僕を見失わないよう離れ過ぎず、なおかつ反撃をされないよう近づきすぎずの距離を保って…。)
ヒカルが思案する間も、穴取はクロスボウを打ち続けてくる。ヒカルにはただ逃げるしか手はなかった。
…と、逃げるうちにヒカルはある事に気づく。矢で撃ち抜かれた鏡の壁の隙間から僅かながら木目が見えている。
(…この鏡の壁…。ベニヤ板か何かの両面に鏡を引っ付けてあるのか。…待てよ。それならいい事を思いついた。)
一方のヒカルを追う穴取は、ボスを追い詰めている手応えに、一人興奮していた。
(くくく……。闇クラブの元ボスもこうなると可愛いものですねぇ…。もうすぐあなたの魔眼が私のものに……。あの美しい魔眼が……!フフククク……!)
溢れ出しそうな笑いをこらえて、穴取はボウガンの矢をこめ直す。
(…いかんいかん。まだボスを討ち取ったわけじゃない。焦るな…。焦ると事を仕損じる。慎重に…確実にやるんだ。ふふふ…。)
鏡に映るヒカルが移動するのを確認すると、穴取はまたヒカルを追うのだった。
逃げるヒカル。追う穴取。
鏡はその様を写しだす。時に三面に、あるいは六面に、あるいは八面に……。
幾たびかのやりとりが続いた頃、ついに…。
「ウグッ…!?」
穴取の矢が、ヒカルを捉えた。
獲物を捉えた穴取は狂喜する。
「あっははは…!!当たった!当たった!とうとう当たりましたよ!」
ヒカルは嘲笑う穴取は意に介さず、刺さった矢を引き抜いた。そうして傷口を壁に当てながらも、なおも逃げ続けた。
ヒカルを見失わないよう、穴取は後を追う。
「逃げるんですかぁ?ボスぅ?あはははははは!」
先を走るヒカルが角を曲がった。
「かかった…!その先は袋小路。もう逃げ道はありません!私の勝ちだ…!」
喜び勇んで後を追う穴取。自身も角を曲がる。
「さあ。詰みです!ボス!」
穴取はクロスボウを構えた。
…だが、その先にヒカルの姿はなく、鏡に同じくクロスボウを構えた自分自身の姿が映るだけだった。
「え…?」
驚愕する穴取は思わず壁に目を向ける。
横の壁にはヒカルがつけていた血の跡が続いていたが、それもプッツリと途切れていた。
「ば…ばかな…!ここは行き止まり。逃げ場所なんてどこにもない。一体どこに…!?」
うろたえる穴取は正面の鏡に近づく。
「どこだ!?ボス!どこにいる!?」
「……ここだよ。」
突然、穴取の目の前の鏡が割れた。
千々と砕け散る破片。その間から、穴取に向けて矢じりが突き立てられる。
「…うぅっ!?ぐっ…。これは…!」
砕けた鏡の向こうから、ヒカルが現れた。その手には、さっき穴取から受けた矢が握られ、その矢は穴取の腕に突き刺さっている。
「あ…あなた…。一体どうやって…隠れたんだ!?」
「もちろん、鏡を使ってさ。」
鏡の向こうにいるヒカルの側の横の壁を見ると、鏡が剥がされ、木目が露わになっといた。
「そ…そうか…!壁の鏡を剥がして自分の前に立てかけて、あたかも消えたように見せかけていたのか…!」
「剥がすために…君の矢を使わせてもらったよ。片手で剥がすのはちょいと苦労したがね。」
「だが…状況は変わらない…!あんたはこの鏡の迷宮の中では魔眼は使えない…!今のあんたに私は殺せない…!」
「それはどうかな…?」
穴取の背後から何者かが近づいていた。
「無事か!?ヒカル!」
「……穴取。」
秋山と西馬が駆けつけていたのだ。
自身の置かれた状況が信じられないと言った表情の穴取。
「何故だ…!何故…!どうしてお前たちがここに来れる!?ここは迷宮の中でもかなりの奥。ただでさえ迷うというのに、どうして…!」
「答えは…。」
ヒカルはコンコン、と横の壁を叩いた。壁には何かで引っ掻いたような傷で矢印が書かれていた。
「ここが迷宮だとわかった時から、後からくる西馬君たちのためにつけていた目印だよ。合流できるようにね。加えて君につけられた傷口を壁に押し当てた事で、緊急事態だってことも伝える事が出来た。それで彼らはここまで来れたって訳さ。」
「バカな…!バカな…!!」
青ざめる穴取に、ヒカルは言い放つ。
「さあ。詰みだ。穴取。」
穴取は一発のボウガンを撃ってはヒカルの死角へ隠れ、また一発撃っては隠れてを繰り返していた。ヒカルとの距離は付かず離れず。一定の距離を保ちながら。
周りが鏡だらけで魔眼の使えないヒカルは、この穴取の戦法に徐々に、しかし確実に追い詰められていた。
(…全くもって厄介だな。鏡が視界に映らない至近距離ならまだチャンスはあるんだが、奴もそれを警戒してか、クロスボウを使ってきてる。しかも僕を見失わないよう離れ過ぎず、なおかつ反撃をされないよう近づきすぎずの距離を保って…。)
ヒカルが思案する間も、穴取はクロスボウを打ち続けてくる。ヒカルにはただ逃げるしか手はなかった。
…と、逃げるうちにヒカルはある事に気づく。矢で撃ち抜かれた鏡の壁の隙間から僅かながら木目が見えている。
(…この鏡の壁…。ベニヤ板か何かの両面に鏡を引っ付けてあるのか。…待てよ。それならいい事を思いついた。)
一方のヒカルを追う穴取は、ボスを追い詰めている手応えに、一人興奮していた。
(くくく……。闇クラブの元ボスもこうなると可愛いものですねぇ…。もうすぐあなたの魔眼が私のものに……。あの美しい魔眼が……!フフククク……!)
溢れ出しそうな笑いをこらえて、穴取はボウガンの矢をこめ直す。
(…いかんいかん。まだボスを討ち取ったわけじゃない。焦るな…。焦ると事を仕損じる。慎重に…確実にやるんだ。ふふふ…。)
鏡に映るヒカルが移動するのを確認すると、穴取はまたヒカルを追うのだった。
逃げるヒカル。追う穴取。
鏡はその様を写しだす。時に三面に、あるいは六面に、あるいは八面に……。
幾たびかのやりとりが続いた頃、ついに…。
「ウグッ…!?」
穴取の矢が、ヒカルを捉えた。
獲物を捉えた穴取は狂喜する。
「あっははは…!!当たった!当たった!とうとう当たりましたよ!」
ヒカルは嘲笑う穴取は意に介さず、刺さった矢を引き抜いた。そうして傷口を壁に当てながらも、なおも逃げ続けた。
ヒカルを見失わないよう、穴取は後を追う。
「逃げるんですかぁ?ボスぅ?あはははははは!」
先を走るヒカルが角を曲がった。
「かかった…!その先は袋小路。もう逃げ道はありません!私の勝ちだ…!」
喜び勇んで後を追う穴取。自身も角を曲がる。
「さあ。詰みです!ボス!」
穴取はクロスボウを構えた。
…だが、その先にヒカルの姿はなく、鏡に同じくクロスボウを構えた自分自身の姿が映るだけだった。
「え…?」
驚愕する穴取は思わず壁に目を向ける。
横の壁にはヒカルがつけていた血の跡が続いていたが、それもプッツリと途切れていた。
「ば…ばかな…!ここは行き止まり。逃げ場所なんてどこにもない。一体どこに…!?」
うろたえる穴取は正面の鏡に近づく。
「どこだ!?ボス!どこにいる!?」
「……ここだよ。」
突然、穴取の目の前の鏡が割れた。
千々と砕け散る破片。その間から、穴取に向けて矢じりが突き立てられる。
「…うぅっ!?ぐっ…。これは…!」
砕けた鏡の向こうから、ヒカルが現れた。その手には、さっき穴取から受けた矢が握られ、その矢は穴取の腕に突き刺さっている。
「あ…あなた…。一体どうやって…隠れたんだ!?」
「もちろん、鏡を使ってさ。」
鏡の向こうにいるヒカルの側の横の壁を見ると、鏡が剥がされ、木目が露わになっといた。
「そ…そうか…!壁の鏡を剥がして自分の前に立てかけて、あたかも消えたように見せかけていたのか…!」
「剥がすために…君の矢を使わせてもらったよ。片手で剥がすのはちょいと苦労したがね。」
「だが…状況は変わらない…!あんたはこの鏡の迷宮の中では魔眼は使えない…!今のあんたに私は殺せない…!」
「それはどうかな…?」
穴取の背後から何者かが近づいていた。
「無事か!?ヒカル!」
「……穴取。」
秋山と西馬が駆けつけていたのだ。
自身の置かれた状況が信じられないと言った表情の穴取。
「何故だ…!何故…!どうしてお前たちがここに来れる!?ここは迷宮の中でもかなりの奥。ただでさえ迷うというのに、どうして…!」
「答えは…。」
ヒカルはコンコン、と横の壁を叩いた。壁には何かで引っ掻いたような傷で矢印が書かれていた。
「ここが迷宮だとわかった時から、後からくる西馬君たちのためにつけていた目印だよ。合流できるようにね。加えて君につけられた傷口を壁に押し当てた事で、緊急事態だってことも伝える事が出来た。それで彼らはここまで来れたって訳さ。」
「バカな…!バカな…!!」
青ざめる穴取に、ヒカルは言い放つ。
「さあ。詰みだ。穴取。」
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