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人形師編
「ドリームランド」 VS暗闇の盲獣4
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ビチャ! ビチャ!ビチャ!
暗闇の中から、激しい水音が迫ってくる…。
秋山は一人、その闇と対峙していた。
「さあ来やがれ…!獲物はここだ…!」
ハッ…ハッ…ハッ…
ビチャ!ビチャ!ビチャ!
水音に混じり、何者かの息遣いも聞こえてくる。敵はもうすぐそこまで来ている…!
「…来やがったな…!さあ、第2ラウンドといこうや…!」
……………………
…先程までの水音が止んだ。
辺りを静寂が包み込む。
「…なんだ?どうした?」
秋山の問いに闇は答えない。
ただただ無音の返事を繰り返すばかりであった。
…無音すら音のように聞こえるような静寂の中、秋山は闇の向こうから静かな殺気を感じていた。
(…奴があの向こうにいるのは間違いない。来るなら早く来やがれってんだ…!)
しびれを切らし、ゆっくりと前に進む秋山…。
と、その瞬間。
「USYAAA!!」
突然暗闇から、ミイラ男が両手首の刃物を前に突き出し槍のような格好で上空から飛びついて来た。
「うぉっ…!?」
思わず身を翻してこれを躱す秋山。だがミイラ男の刃物は彼の身体を捉え、肩の肉をえぐり取っていった。
ミイラ男は秋山の背面に着地。と同時に上体を後方に反らしてブリッジの体勢へ。そこから足の刃物で再び秋山へと襲いかかる。
「くっ…そ…!」
秋山は後ずさりながらこれを凌ぐ。しかしミイラ男はブリッジの体制のまま連撃を止めない。徐々に近づきつつ、秋山に向けて蹴りを繰り出し続ける。
…と、秋山はその男の繰り出す脚を掴んだ。
「調子に…!」秋山は振り返って、その掴んだ脚を自分の肩に乗せた。「…乗んなぁっ!」
秋山は腰をかがめて、一気に投げ下ろす。脚を掴んだ「一本背負い」である。
「GUU!?」
突然の無重力の感覚に戸惑うミイラ男。そうして彼はそのままコンクリートの地面に叩きつけ……られなかった。
なんとミイラ男は叩きつけられる寸前で両腕を地面に突き刺し、地面への直撃を免れていた。続けて、掴まれていない片脚を秋山に向けて突き刺す。
「うぐ…!くそ…!」
刃は秋山のみぞおちを捉えていた。秋山の身体を貫く脚に血が滴り落ちる。
苦痛のあまり、秋山は掴んだ手を緩めてしまう。その隙を逃すまいと、自由になった脚をミイラ男は秋山の頸に巻きつける。
「SYAAAA!!」
奇声とともに、ミイラ男は地面に突き刺した両腕を支点にして、両脚で秋山を持ち上げた。
(う…嘘だろ…!?俺の体重は90㎏はあるぞ…!それを軽々と持ち上げるなんて…!?)
戸惑う秋山に構わず、ミイラ男は持ち上げた秋山を自分の背面に叩き落とす。プロレス技で言えば、「フランケンシュタイナー」の型に酷似している。
「グハッ……!」
地面にうつ伏せに叩きつけられた秋山。叩きつけた後もミイラ男は組んだ脚を緩めずそのまま上体を反らして秋山に馬乗りの形になった。そのまま、両腕の刃を秋山に向ける。
(く……くそ……!ここまでか……!)
パァン!
突然どこかで破裂音が聞こえた。
「!」
音に驚いたミイラ男は秋山から跳びのき、辺りを警戒する。
(なんだ…?銃声か…?いや、少し違う…。)
パパパパン!
今度は破裂音が連続して鳴る。ミイラ男は音の正体がわからず、警戒したまま身構えている。
…秋山は顔を上げた。そこには相棒、西馬の姿があった。
「よお!間に合ったか!?秋山!」
「…ちょいとおせえよ。おせっかい野郎め。」
西馬の姿に安心したか、秋山はくっくっ…と笑った。
「…あのヒカルって奴はどうした?」
「先に行ってもらったよ。俺たちもこいつをぶっ飛ばして先に進もう!」
「ああ…。しかし、どうやって奴を…。」
と、西馬の存在に気づいたミイラ男が西馬目掛けて飛びかかって来た。
「あ…危ない!西馬!」
だが西馬は慌てず、懐から何かに火をつけ、それを放り投げた。
パパパパン!
またも連続した破裂音。
「GI!?」
ミイラ男は怯み、また距離を取った。
「……なるほど。あの音の正体は爆竹か。お前、そんなもんどこで…?」
「遊園地の入り口に土産屋があったろ?あそこにあまってたのをくすねて来たんだ。何かに使えると思ってな。」
「はっはっ…。警官の前で堂々と窃盗とは、大した奴だ。お前は。」
秋山はゆっくりと立ち上がり、ミイラ男へと歩み寄った。
秋山が近づく間、西馬は爆竹を鳴らし続ける。ミイラ男はその音に怯えるあまり、秋山の接近に気づかない。
秋山は怯えるミイラ男の背後から両腕を回した。
「GUU!?」
掴まれたことに気づいたミイラ男だが、時すでに遅し。両腕、両脚をばたつかせたが、背後の秋山には届かない。
「さっきのお返しだ…。化けもん!」
秋山はミイラ男を抱えて、背後に叩きつけた。俗に言う「ジャーマンスープレックス」である。
「SYAAA!」
ミイラ男は先程と同様、両腕を地面に突き刺して直撃を免れようとした。…が、秋山の体重を乗せたジャーマンが地面に刺さったミイラ男の刃を叩き割ったため逃れられず、ミイラ男はそのまま頭部を地面に強打した。
「GYAAA…!」
ミイラ男はしばらく痙攣していたが、やがてこと切れたように動かなくなった。
「……やった…!やったぞ……!」
「……ああ!」
秋山と西馬がハイタッチを交わす。
「リベンジマッチは…俺たちの勝利だ!」
暗闇の中から、激しい水音が迫ってくる…。
秋山は一人、その闇と対峙していた。
「さあ来やがれ…!獲物はここだ…!」
ハッ…ハッ…ハッ…
ビチャ!ビチャ!ビチャ!
水音に混じり、何者かの息遣いも聞こえてくる。敵はもうすぐそこまで来ている…!
「…来やがったな…!さあ、第2ラウンドといこうや…!」
……………………
…先程までの水音が止んだ。
辺りを静寂が包み込む。
「…なんだ?どうした?」
秋山の問いに闇は答えない。
ただただ無音の返事を繰り返すばかりであった。
…無音すら音のように聞こえるような静寂の中、秋山は闇の向こうから静かな殺気を感じていた。
(…奴があの向こうにいるのは間違いない。来るなら早く来やがれってんだ…!)
しびれを切らし、ゆっくりと前に進む秋山…。
と、その瞬間。
「USYAAA!!」
突然暗闇から、ミイラ男が両手首の刃物を前に突き出し槍のような格好で上空から飛びついて来た。
「うぉっ…!?」
思わず身を翻してこれを躱す秋山。だがミイラ男の刃物は彼の身体を捉え、肩の肉をえぐり取っていった。
ミイラ男は秋山の背面に着地。と同時に上体を後方に反らしてブリッジの体勢へ。そこから足の刃物で再び秋山へと襲いかかる。
「くっ…そ…!」
秋山は後ずさりながらこれを凌ぐ。しかしミイラ男はブリッジの体制のまま連撃を止めない。徐々に近づきつつ、秋山に向けて蹴りを繰り出し続ける。
…と、秋山はその男の繰り出す脚を掴んだ。
「調子に…!」秋山は振り返って、その掴んだ脚を自分の肩に乗せた。「…乗んなぁっ!」
秋山は腰をかがめて、一気に投げ下ろす。脚を掴んだ「一本背負い」である。
「GUU!?」
突然の無重力の感覚に戸惑うミイラ男。そうして彼はそのままコンクリートの地面に叩きつけ……られなかった。
なんとミイラ男は叩きつけられる寸前で両腕を地面に突き刺し、地面への直撃を免れていた。続けて、掴まれていない片脚を秋山に向けて突き刺す。
「うぐ…!くそ…!」
刃は秋山のみぞおちを捉えていた。秋山の身体を貫く脚に血が滴り落ちる。
苦痛のあまり、秋山は掴んだ手を緩めてしまう。その隙を逃すまいと、自由になった脚をミイラ男は秋山の頸に巻きつける。
「SYAAAA!!」
奇声とともに、ミイラ男は地面に突き刺した両腕を支点にして、両脚で秋山を持ち上げた。
(う…嘘だろ…!?俺の体重は90㎏はあるぞ…!それを軽々と持ち上げるなんて…!?)
戸惑う秋山に構わず、ミイラ男は持ち上げた秋山を自分の背面に叩き落とす。プロレス技で言えば、「フランケンシュタイナー」の型に酷似している。
「グハッ……!」
地面にうつ伏せに叩きつけられた秋山。叩きつけた後もミイラ男は組んだ脚を緩めずそのまま上体を反らして秋山に馬乗りの形になった。そのまま、両腕の刃を秋山に向ける。
(く……くそ……!ここまでか……!)
パァン!
突然どこかで破裂音が聞こえた。
「!」
音に驚いたミイラ男は秋山から跳びのき、辺りを警戒する。
(なんだ…?銃声か…?いや、少し違う…。)
パパパパン!
今度は破裂音が連続して鳴る。ミイラ男は音の正体がわからず、警戒したまま身構えている。
…秋山は顔を上げた。そこには相棒、西馬の姿があった。
「よお!間に合ったか!?秋山!」
「…ちょいとおせえよ。おせっかい野郎め。」
西馬の姿に安心したか、秋山はくっくっ…と笑った。
「…あのヒカルって奴はどうした?」
「先に行ってもらったよ。俺たちもこいつをぶっ飛ばして先に進もう!」
「ああ…。しかし、どうやって奴を…。」
と、西馬の存在に気づいたミイラ男が西馬目掛けて飛びかかって来た。
「あ…危ない!西馬!」
だが西馬は慌てず、懐から何かに火をつけ、それを放り投げた。
パパパパン!
またも連続した破裂音。
「GI!?」
ミイラ男は怯み、また距離を取った。
「……なるほど。あの音の正体は爆竹か。お前、そんなもんどこで…?」
「遊園地の入り口に土産屋があったろ?あそこにあまってたのをくすねて来たんだ。何かに使えると思ってな。」
「はっはっ…。警官の前で堂々と窃盗とは、大した奴だ。お前は。」
秋山はゆっくりと立ち上がり、ミイラ男へと歩み寄った。
秋山が近づく間、西馬は爆竹を鳴らし続ける。ミイラ男はその音に怯えるあまり、秋山の接近に気づかない。
秋山は怯えるミイラ男の背後から両腕を回した。
「GUU!?」
掴まれたことに気づいたミイラ男だが、時すでに遅し。両腕、両脚をばたつかせたが、背後の秋山には届かない。
「さっきのお返しだ…。化けもん!」
秋山はミイラ男を抱えて、背後に叩きつけた。俗に言う「ジャーマンスープレックス」である。
「SYAAA!」
ミイラ男は先程と同様、両腕を地面に突き刺して直撃を免れようとした。…が、秋山の体重を乗せたジャーマンが地面に刺さったミイラ男の刃を叩き割ったため逃れられず、ミイラ男はそのまま頭部を地面に強打した。
「GYAAA…!」
ミイラ男はしばらく痙攣していたが、やがてこと切れたように動かなくなった。
「……やった…!やったぞ……!」
「……ああ!」
秋山と西馬がハイタッチを交わす。
「リベンジマッチは…俺たちの勝利だ!」
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