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死神編
いざ死神の下へ
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囮作戦が功を奏し、とうとう尻尾を出した死神。果たしてこいつは探し人である洋子さんの行方を知っているのか…。
「そんで?死神がかかった、って言ってたけど?」
「はい。これを見て下さい。」
そう言って、須田が死神との会話のやり取りを見せて来た。
クラリス「死にたい。」
死神「本当に死にたいの?」
クラリス「本当に死にたいです。毎日が辛いです。」
死神「よかったら楽な死に方を教えてあげようか?」…
「クラリス?…って誰だ?」
「私のアカウント名ですよ。本名のままだったら、警察の素性がバレて近づかれないと思ったので。」
「なるほど…。でもなんでクラリス?」
「…別に深い意味はないですよ。なんでもいいじゃないですか。アカウントの名前なんて。」
顔を赤くして須田は答えた。
…死神「僕の言う通りに実行したら楽に死ねるよ。」
クラリス「本当ですか!?」
死神「もちろん。ただし、僕は真剣に死にたいと思っている人にしか教えない。いい加減な気持ちで実行したら逆に苦しむ羽目になるからね。よく考えて、決心がついたらまた返事をして。その時に僕の個人アドレスを教えるから。」…
「ここでしばらく時間をおきました。リアルに悩んだってフリをするためにね。」
…クラリス「決心がつきました。私、やっぱり死にます。」
死神「OK。じゃ、ここからは個人で連絡し合おう。僕のアカウントのページに直接連絡をくれ。」…
「この後、指示どおり死神のアカウントページに飛んでメッセージを送りました。そして来た返事がこれです。」
死神「望みどおり、君に安楽な死をプレゼントしよう。明日、○○公園で午後二時に待っている。」
…!奴からのラブコールだ!
「でかした!これで明日奴をとっ捕まえられる!」
「待って下さい。奴を公園で捕まえてもシラを切られるだけです。慎重なこいつのことです。一度接触に失敗すれば、私たちに二度と尻尾を掴ませないでしょう。」
む…。確かに。死神のやつに、洋子さんの居場所を強引に吐かせるのは良策ではないか。
「私が待ち合わせ場所に行きます。西馬さんたちは私と死神の側で待機していて下さい。」
「危険だぞ。」
「承知の上です。」
須田は力強く答えた。その目は、あのアカリを救う使命に燃えていたあの時と同じ輝きを放っていた。…やれやれ。肝の座った奴だ。
「…分かった。ヘマ、すんじゃねえぞ。」
彼女はふふっと笑ってこう言った。
「お互い様ですよ。」
翌日。午後2時。○○公園。
ここは住宅地の近くの公園で、子供が遊びまわったり、主婦の語らいの場でもある。しかし、平日のこの時間帯は子供は学校。主婦はパートということで人通りも少なくなっていた。
須田は公園の中で死神指定の服装で奴を待っている。その様子を公園の外から俺とアカリが見張っていた。
「大丈夫かな…。凛さん。」
「なに。あいつも元刑事だ。大抵の男なら返り討ちにできるだろう。それにいざとなったら、俺たちがいる。大丈夫だ。」
「そうだといいけど…。」
不安がるアカリをよそに、公園で待つ須田の元に、1人の男が近づいて来た。恐らくこいつが死神か…。
男は思っていたような残忍な顔をしていない。いたって普通の優男といった風態だ。
須田と死神はしばらく話した後、2人して移動を始めた。
「!どこかへ向かうようだ。追うぞ。」
俺たちは2人の後を追った。
…しばらく歩いた後、私の隣の男は立ち止まり、アパートを指差した。
「あそこが僕のアパートだ。もう少しで楽になれるよ。」
死神を名乗るこの男は一見すると普通の男性だ。やや背は高く、顔は優しげで常に微笑みを絶やさない。…だがこの顔の裏はドロドロに血塗られている。こいつはこんな薄ら笑いを浮かべながら、何人もの自殺を手助けして来たんだ。
「…?どうしたんだい?」
「…いいえ。なんでもありません。早く行きましょう。」
「そうだね。あまり待たせちゃ悪いよね。」
死神はアパートの一階の一室の鍵を開けた。ドアが開いた瞬間、まず不快な匂いが私の鼻をついた。これは生活からくる臭気じゃない。…肉の腐敗臭だ。
「さ、どうぞ。プレゼントはこの中で行おう。」
「…分かったわ。」
私は死神の部屋へ足を踏み入れた。
ガチャリ
…!背後で死神が部屋の内鍵を閉めたようだ。
「誰か入ってきたら困るからね。お互いに…。」
「…念入りなのね。それでどうやって死んだらいいの?」
そう言うと、死神は部屋の中のテーブルから注射器を取り出した。
「まず麻薬を注入して、感覚を麻痺させる。それが効いてきたら僕が君の首を絞めるんだ。そうすれば楽に死ねる。」
「そう…。ところで私の他にもそうやって楽にしてあげたの?」
「ああ。そうだよ。みんなこうやって楽にしてあげた。」
「いつもこの部屋で?」
「ああ。」
「そう…。」
会話の最中も死神は着々とその準備を進めていた。
「さ、それじゃあ始めよう。天国への旅行をね。」
「そうね。でも…。」
ゆっくりと近づいてくる死神に向かって、私は…。
「行くのはあんた一人!地獄行きよ!」
そいつのがら空きの股間へ前蹴りを叩き込んだ。
須田と死神が部屋へ入ってしばらく経った。
「へ、部屋に入っちゃったよ。凛さん。」
「密室か。助けに入るのが困難になってきたな…。」
「どうしよう?もしなんかあったら…!」
あんぎゃあああ……!
アパートから男の叫び声が聞こえてきた。
「…どうやらいらん心配だったようだな。行くぞ。」
俺とアカリは、須田の待つ死神の部屋へ向かった。
「そんで?死神がかかった、って言ってたけど?」
「はい。これを見て下さい。」
そう言って、須田が死神との会話のやり取りを見せて来た。
クラリス「死にたい。」
死神「本当に死にたいの?」
クラリス「本当に死にたいです。毎日が辛いです。」
死神「よかったら楽な死に方を教えてあげようか?」…
「クラリス?…って誰だ?」
「私のアカウント名ですよ。本名のままだったら、警察の素性がバレて近づかれないと思ったので。」
「なるほど…。でもなんでクラリス?」
「…別に深い意味はないですよ。なんでもいいじゃないですか。アカウントの名前なんて。」
顔を赤くして須田は答えた。
…死神「僕の言う通りに実行したら楽に死ねるよ。」
クラリス「本当ですか!?」
死神「もちろん。ただし、僕は真剣に死にたいと思っている人にしか教えない。いい加減な気持ちで実行したら逆に苦しむ羽目になるからね。よく考えて、決心がついたらまた返事をして。その時に僕の個人アドレスを教えるから。」…
「ここでしばらく時間をおきました。リアルに悩んだってフリをするためにね。」
…クラリス「決心がつきました。私、やっぱり死にます。」
死神「OK。じゃ、ここからは個人で連絡し合おう。僕のアカウントのページに直接連絡をくれ。」…
「この後、指示どおり死神のアカウントページに飛んでメッセージを送りました。そして来た返事がこれです。」
死神「望みどおり、君に安楽な死をプレゼントしよう。明日、○○公園で午後二時に待っている。」
…!奴からのラブコールだ!
「でかした!これで明日奴をとっ捕まえられる!」
「待って下さい。奴を公園で捕まえてもシラを切られるだけです。慎重なこいつのことです。一度接触に失敗すれば、私たちに二度と尻尾を掴ませないでしょう。」
む…。確かに。死神のやつに、洋子さんの居場所を強引に吐かせるのは良策ではないか。
「私が待ち合わせ場所に行きます。西馬さんたちは私と死神の側で待機していて下さい。」
「危険だぞ。」
「承知の上です。」
須田は力強く答えた。その目は、あのアカリを救う使命に燃えていたあの時と同じ輝きを放っていた。…やれやれ。肝の座った奴だ。
「…分かった。ヘマ、すんじゃねえぞ。」
彼女はふふっと笑ってこう言った。
「お互い様ですよ。」
翌日。午後2時。○○公園。
ここは住宅地の近くの公園で、子供が遊びまわったり、主婦の語らいの場でもある。しかし、平日のこの時間帯は子供は学校。主婦はパートということで人通りも少なくなっていた。
須田は公園の中で死神指定の服装で奴を待っている。その様子を公園の外から俺とアカリが見張っていた。
「大丈夫かな…。凛さん。」
「なに。あいつも元刑事だ。大抵の男なら返り討ちにできるだろう。それにいざとなったら、俺たちがいる。大丈夫だ。」
「そうだといいけど…。」
不安がるアカリをよそに、公園で待つ須田の元に、1人の男が近づいて来た。恐らくこいつが死神か…。
男は思っていたような残忍な顔をしていない。いたって普通の優男といった風態だ。
須田と死神はしばらく話した後、2人して移動を始めた。
「!どこかへ向かうようだ。追うぞ。」
俺たちは2人の後を追った。
…しばらく歩いた後、私の隣の男は立ち止まり、アパートを指差した。
「あそこが僕のアパートだ。もう少しで楽になれるよ。」
死神を名乗るこの男は一見すると普通の男性だ。やや背は高く、顔は優しげで常に微笑みを絶やさない。…だがこの顔の裏はドロドロに血塗られている。こいつはこんな薄ら笑いを浮かべながら、何人もの自殺を手助けして来たんだ。
「…?どうしたんだい?」
「…いいえ。なんでもありません。早く行きましょう。」
「そうだね。あまり待たせちゃ悪いよね。」
死神はアパートの一階の一室の鍵を開けた。ドアが開いた瞬間、まず不快な匂いが私の鼻をついた。これは生活からくる臭気じゃない。…肉の腐敗臭だ。
「さ、どうぞ。プレゼントはこの中で行おう。」
「…分かったわ。」
私は死神の部屋へ足を踏み入れた。
ガチャリ
…!背後で死神が部屋の内鍵を閉めたようだ。
「誰か入ってきたら困るからね。お互いに…。」
「…念入りなのね。それでどうやって死んだらいいの?」
そう言うと、死神は部屋の中のテーブルから注射器を取り出した。
「まず麻薬を注入して、感覚を麻痺させる。それが効いてきたら僕が君の首を絞めるんだ。そうすれば楽に死ねる。」
「そう…。ところで私の他にもそうやって楽にしてあげたの?」
「ああ。そうだよ。みんなこうやって楽にしてあげた。」
「いつもこの部屋で?」
「ああ。」
「そう…。」
会話の最中も死神は着々とその準備を進めていた。
「さ、それじゃあ始めよう。天国への旅行をね。」
「そうね。でも…。」
ゆっくりと近づいてくる死神に向かって、私は…。
「行くのはあんた一人!地獄行きよ!」
そいつのがら空きの股間へ前蹴りを叩き込んだ。
須田と死神が部屋へ入ってしばらく経った。
「へ、部屋に入っちゃったよ。凛さん。」
「密室か。助けに入るのが困難になってきたな…。」
「どうしよう?もしなんかあったら…!」
あんぎゃあああ……!
アパートから男の叫び声が聞こえてきた。
「…どうやらいらん心配だったようだな。行くぞ。」
俺とアカリは、須田の待つ死神の部屋へ向かった。
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