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死神編
ブリーフィング
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「じゃ、入って。どうぞ。」
そうしておずおずと入って来たのは、中年のサラリーマンといった風貌の男だ。昼休み中なのか、くたびれたスーツを着て、手にはこれまた使い込まれた様子のビジネスバッグを持っている。
「どうも…。初めまして。わたくし、田口と申します。今日は折り入って相談がありまして…。」
「お伺いしましょう。でもその前に依頼料なんですけど…。」
いやらしい話だが、こっちも商売だ。依頼料をきちんともらってからでないとな。しかもアカリが持ち込んだ依頼だ。内容を聞いてからだと、受けかねる、なんて言ってもアカリがゴリ押しで受けさせてくるのは目に見えてる。ここは先手を打っとかんとな…。
「ああ、そうですね。おいくらでしょう?」
「そうですね。5万円程…。」
「ご、5万円!?そんなに取るのか!?」
「なにぶん商売なもんで…。でも大丈夫。その分依頼は100パーセントやり切りますよ。」
「ほ、本当でしょうね…。」
「先生はね。一度受けた依頼はどんな依頼でも最後までやり遂げるの。それがポリシーだ、っていつも言ってるし。」
…うん。いいぞ。もっと言ってくれたまえ。アカリくん。
「…分かりました。しかし実績は確かなんでしょうね?」
…疑り深いおっちゃんだな。まあ慎重になるのも無理はないが。
「…分かりました。じゃあ、俺の捜査方法を見てもらいましょう。ご納得頂けるかと思います。」
「そ、捜査方法…?」
「はい。私が超能力であなたの…そうですね。今朝食べた物を当てて見せましょう。」
「今朝食べた物って言ったって…。」
「まあまあ。とにかく、そちらにお座りください。」
そうして、田口さんには俺の向かいに座ってもらった。
「じゃ、あなたの今朝食べた物を言い当てますね。手を出してもらっていいですか?」
「ちょっと待ってください。こんなマジックみたいなこととあなたの実績になんの関係があるんですか?」
「大いに関係ありますよ。とにかく今は、黙ってあなたが今朝食べた物を想像して下さい。」
「はあ…。」
渋々手を出す田口さん。俺はその手を握って目を瞑る。
…映像が見えてくる…。
…ちゃぶ台とその上には料理が置かれている…手前には茶碗に盛られたご飯と味噌汁…奥にししゃも…納豆…それと…錠剤?…「サインバルタ」と書かれている…
「…ええと、朝食はご飯に、味噌汁、ししゃも、納豆…。あと、何かご病気なんですかね?何かの薬を一錠…。」
「な…!どうしてそこまで…?」
俺は得意げに目を開いた。
「これが俺の超能力ですよ。体に触れれば、相手の記憶が見える。…どうです?ちょっとは当てになりそうでしょ?」
「う…うむ。確かにそうですな。」
どうやら、信用してくれるようだ。
田口さんは懐から財布を取り出して、依頼料の5万円を払ってくれた。
「まいどあり。…で、仕事の話に移りましょう。一体、何の御用で?」
「はい。…私の娘を、探して欲しいのです。」
「娘?」
「そうです。この娘なんですが…。」
田口さんはそう言って一枚の写真を取り出した。写真には20歳くらいの女性が写っている。
「…この娘は大学に進学し一人暮らしを始めたのですが、しばらく前から連絡がつかんのです。知り合いの子に聞いても皆知らないと言うし…。警察にも届出たのですがなかなか見つからず…。」
「それで探偵に依頼に来たと。」
田口さんはこくりとうなづいた。
「お願いします!どうか娘を!どうか…!」
必死に訴える依頼人。もちろんほっておけるわけがない。…依頼料ももらっちまったしな。
「安心してください。この西馬探偵にお任せあれ。」
そうしておずおずと入って来たのは、中年のサラリーマンといった風貌の男だ。昼休み中なのか、くたびれたスーツを着て、手にはこれまた使い込まれた様子のビジネスバッグを持っている。
「どうも…。初めまして。わたくし、田口と申します。今日は折り入って相談がありまして…。」
「お伺いしましょう。でもその前に依頼料なんですけど…。」
いやらしい話だが、こっちも商売だ。依頼料をきちんともらってからでないとな。しかもアカリが持ち込んだ依頼だ。内容を聞いてからだと、受けかねる、なんて言ってもアカリがゴリ押しで受けさせてくるのは目に見えてる。ここは先手を打っとかんとな…。
「ああ、そうですね。おいくらでしょう?」
「そうですね。5万円程…。」
「ご、5万円!?そんなに取るのか!?」
「なにぶん商売なもんで…。でも大丈夫。その分依頼は100パーセントやり切りますよ。」
「ほ、本当でしょうね…。」
「先生はね。一度受けた依頼はどんな依頼でも最後までやり遂げるの。それがポリシーだ、っていつも言ってるし。」
…うん。いいぞ。もっと言ってくれたまえ。アカリくん。
「…分かりました。しかし実績は確かなんでしょうね?」
…疑り深いおっちゃんだな。まあ慎重になるのも無理はないが。
「…分かりました。じゃあ、俺の捜査方法を見てもらいましょう。ご納得頂けるかと思います。」
「そ、捜査方法…?」
「はい。私が超能力であなたの…そうですね。今朝食べた物を当てて見せましょう。」
「今朝食べた物って言ったって…。」
「まあまあ。とにかく、そちらにお座りください。」
そうして、田口さんには俺の向かいに座ってもらった。
「じゃ、あなたの今朝食べた物を言い当てますね。手を出してもらっていいですか?」
「ちょっと待ってください。こんなマジックみたいなこととあなたの実績になんの関係があるんですか?」
「大いに関係ありますよ。とにかく今は、黙ってあなたが今朝食べた物を想像して下さい。」
「はあ…。」
渋々手を出す田口さん。俺はその手を握って目を瞑る。
…映像が見えてくる…。
…ちゃぶ台とその上には料理が置かれている…手前には茶碗に盛られたご飯と味噌汁…奥にししゃも…納豆…それと…錠剤?…「サインバルタ」と書かれている…
「…ええと、朝食はご飯に、味噌汁、ししゃも、納豆…。あと、何かご病気なんですかね?何かの薬を一錠…。」
「な…!どうしてそこまで…?」
俺は得意げに目を開いた。
「これが俺の超能力ですよ。体に触れれば、相手の記憶が見える。…どうです?ちょっとは当てになりそうでしょ?」
「う…うむ。確かにそうですな。」
どうやら、信用してくれるようだ。
田口さんは懐から財布を取り出して、依頼料の5万円を払ってくれた。
「まいどあり。…で、仕事の話に移りましょう。一体、何の御用で?」
「はい。…私の娘を、探して欲しいのです。」
「娘?」
「そうです。この娘なんですが…。」
田口さんはそう言って一枚の写真を取り出した。写真には20歳くらいの女性が写っている。
「…この娘は大学に進学し一人暮らしを始めたのですが、しばらく前から連絡がつかんのです。知り合いの子に聞いても皆知らないと言うし…。警察にも届出たのですがなかなか見つからず…。」
「それで探偵に依頼に来たと。」
田口さんはこくりとうなづいた。
「お願いします!どうか娘を!どうか…!」
必死に訴える依頼人。もちろんほっておけるわけがない。…依頼料ももらっちまったしな。
「安心してください。この西馬探偵にお任せあれ。」
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