75 / 188
死神編
ブリーフィング
しおりを挟む
「じゃ、入って。どうぞ。」
そうしておずおずと入って来たのは、中年のサラリーマンといった風貌の男だ。昼休み中なのか、くたびれたスーツを着て、手にはこれまた使い込まれた様子のビジネスバッグを持っている。
「どうも…。初めまして。わたくし、田口と申します。今日は折り入って相談がありまして…。」
「お伺いしましょう。でもその前に依頼料なんですけど…。」
いやらしい話だが、こっちも商売だ。依頼料をきちんともらってからでないとな。しかもアカリが持ち込んだ依頼だ。内容を聞いてからだと、受けかねる、なんて言ってもアカリがゴリ押しで受けさせてくるのは目に見えてる。ここは先手を打っとかんとな…。
「ああ、そうですね。おいくらでしょう?」
「そうですね。5万円程…。」
「ご、5万円!?そんなに取るのか!?」
「なにぶん商売なもんで…。でも大丈夫。その分依頼は100パーセントやり切りますよ。」
「ほ、本当でしょうね…。」
「先生はね。一度受けた依頼はどんな依頼でも最後までやり遂げるの。それがポリシーだ、っていつも言ってるし。」
…うん。いいぞ。もっと言ってくれたまえ。アカリくん。
「…分かりました。しかし実績は確かなんでしょうね?」
…疑り深いおっちゃんだな。まあ慎重になるのも無理はないが。
「…分かりました。じゃあ、俺の捜査方法を見てもらいましょう。ご納得頂けるかと思います。」
「そ、捜査方法…?」
「はい。私が超能力であなたの…そうですね。今朝食べた物を当てて見せましょう。」
「今朝食べた物って言ったって…。」
「まあまあ。とにかく、そちらにお座りください。」
そうして、田口さんには俺の向かいに座ってもらった。
「じゃ、あなたの今朝食べた物を言い当てますね。手を出してもらっていいですか?」
「ちょっと待ってください。こんなマジックみたいなこととあなたの実績になんの関係があるんですか?」
「大いに関係ありますよ。とにかく今は、黙ってあなたが今朝食べた物を想像して下さい。」
「はあ…。」
渋々手を出す田口さん。俺はその手を握って目を瞑る。
…映像が見えてくる…。
…ちゃぶ台とその上には料理が置かれている…手前には茶碗に盛られたご飯と味噌汁…奥にししゃも…納豆…それと…錠剤?…「サインバルタ」と書かれている…
「…ええと、朝食はご飯に、味噌汁、ししゃも、納豆…。あと、何かご病気なんですかね?何かの薬を一錠…。」
「な…!どうしてそこまで…?」
俺は得意げに目を開いた。
「これが俺の超能力ですよ。体に触れれば、相手の記憶が見える。…どうです?ちょっとは当てになりそうでしょ?」
「う…うむ。確かにそうですな。」
どうやら、信用してくれるようだ。
田口さんは懐から財布を取り出して、依頼料の5万円を払ってくれた。
「まいどあり。…で、仕事の話に移りましょう。一体、何の御用で?」
「はい。…私の娘を、探して欲しいのです。」
「娘?」
「そうです。この娘なんですが…。」
田口さんはそう言って一枚の写真を取り出した。写真には20歳くらいの女性が写っている。
「…この娘は大学に進学し一人暮らしを始めたのですが、しばらく前から連絡がつかんのです。知り合いの子に聞いても皆知らないと言うし…。警察にも届出たのですがなかなか見つからず…。」
「それで探偵に依頼に来たと。」
田口さんはこくりとうなづいた。
「お願いします!どうか娘を!どうか…!」
必死に訴える依頼人。もちろんほっておけるわけがない。…依頼料ももらっちまったしな。
「安心してください。この西馬探偵にお任せあれ。」
そうしておずおずと入って来たのは、中年のサラリーマンといった風貌の男だ。昼休み中なのか、くたびれたスーツを着て、手にはこれまた使い込まれた様子のビジネスバッグを持っている。
「どうも…。初めまして。わたくし、田口と申します。今日は折り入って相談がありまして…。」
「お伺いしましょう。でもその前に依頼料なんですけど…。」
いやらしい話だが、こっちも商売だ。依頼料をきちんともらってからでないとな。しかもアカリが持ち込んだ依頼だ。内容を聞いてからだと、受けかねる、なんて言ってもアカリがゴリ押しで受けさせてくるのは目に見えてる。ここは先手を打っとかんとな…。
「ああ、そうですね。おいくらでしょう?」
「そうですね。5万円程…。」
「ご、5万円!?そんなに取るのか!?」
「なにぶん商売なもんで…。でも大丈夫。その分依頼は100パーセントやり切りますよ。」
「ほ、本当でしょうね…。」
「先生はね。一度受けた依頼はどんな依頼でも最後までやり遂げるの。それがポリシーだ、っていつも言ってるし。」
…うん。いいぞ。もっと言ってくれたまえ。アカリくん。
「…分かりました。しかし実績は確かなんでしょうね?」
…疑り深いおっちゃんだな。まあ慎重になるのも無理はないが。
「…分かりました。じゃあ、俺の捜査方法を見てもらいましょう。ご納得頂けるかと思います。」
「そ、捜査方法…?」
「はい。私が超能力であなたの…そうですね。今朝食べた物を当てて見せましょう。」
「今朝食べた物って言ったって…。」
「まあまあ。とにかく、そちらにお座りください。」
そうして、田口さんには俺の向かいに座ってもらった。
「じゃ、あなたの今朝食べた物を言い当てますね。手を出してもらっていいですか?」
「ちょっと待ってください。こんなマジックみたいなこととあなたの実績になんの関係があるんですか?」
「大いに関係ありますよ。とにかく今は、黙ってあなたが今朝食べた物を想像して下さい。」
「はあ…。」
渋々手を出す田口さん。俺はその手を握って目を瞑る。
…映像が見えてくる…。
…ちゃぶ台とその上には料理が置かれている…手前には茶碗に盛られたご飯と味噌汁…奥にししゃも…納豆…それと…錠剤?…「サインバルタ」と書かれている…
「…ええと、朝食はご飯に、味噌汁、ししゃも、納豆…。あと、何かご病気なんですかね?何かの薬を一錠…。」
「な…!どうしてそこまで…?」
俺は得意げに目を開いた。
「これが俺の超能力ですよ。体に触れれば、相手の記憶が見える。…どうです?ちょっとは当てになりそうでしょ?」
「う…うむ。確かにそうですな。」
どうやら、信用してくれるようだ。
田口さんは懐から財布を取り出して、依頼料の5万円を払ってくれた。
「まいどあり。…で、仕事の話に移りましょう。一体、何の御用で?」
「はい。…私の娘を、探して欲しいのです。」
「娘?」
「そうです。この娘なんですが…。」
田口さんはそう言って一枚の写真を取り出した。写真には20歳くらいの女性が写っている。
「…この娘は大学に進学し一人暮らしを始めたのですが、しばらく前から連絡がつかんのです。知り合いの子に聞いても皆知らないと言うし…。警察にも届出たのですがなかなか見つからず…。」
「それで探偵に依頼に来たと。」
田口さんはこくりとうなづいた。
「お願いします!どうか娘を!どうか…!」
必死に訴える依頼人。もちろんほっておけるわけがない。…依頼料ももらっちまったしな。
「安心してください。この西馬探偵にお任せあれ。」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい
凍星
キャラ文芸
幽霊が視えてしまうパティシエ、葉室尊。できるだけ周りに迷惑をかけずに静かに生きていきたい……そんな風に思っていたのに⁉ バーテンダーの霊能者、久我蒼真に出逢ったことで、どういう訳か、霊能力のある人達に色々絡まれる日常に突入⁉「オレは視えてるだけだって言ってるのに、なんでこうなるの??」霊感のある主人公と、彼の秘密を暴きたい男の駆け引きと絆を描きます。BL要素あり。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる