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死神編
久方ぶりの面倒な依頼
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『…さてお次のコーナーは、すっかりお馴染みとなりました。春木大太郎氏による都市伝説のコーナーです!』
「おお…。オタ郎のやつまた出てるぞ。」
ここは「西馬探偵事務所」。そんで俺はそこの探偵の西馬だ。
助手であるアカリを奪還して2ヶ月はたった…。あれからボスや闇クラブに絡む事件には関わっていない。奴らの目につかない様に、なるべくなりを潜めることにしたんだ。…まあアカリの奴は、兄貴に会いたいとうるさかったが。
焦るのは分かるが、アッチコッチ動き回っても、奴らに見つかってまた捕まるのが関の山だ。慎重に動かんとな…。などと考えながらちょいと遅めのモーニングコーヒーを啜る。うーむ…。香り豊かかな。エチオピアブレンド…。
しかし人生というものは分からんもんだ。画面の中にいる男、春木大太郎。前回のアカリ奪還に有力な情報をくれた奴なんだが、出会った当時の本人はハイエースの中に住む小汚い引きこもりってイメージだった。それが今やお茶の間の人気者ってんだから…。
「…やったじゃないか。オタ郎。」
「お邪魔しまーす!」
「西馬さん。はいりますよ。」
アカリと須田の声だ。
「おう。どうぞ。」
程なくして栗色の髪の女子大生と、眼鏡のショートカット女が入ってきた。ウチの探偵助手のアカリと須田だ。
俺の姿を見るなり、まず須田が俺を詰ってきた。
「…真昼間から暇そうですね。西馬さん。」
「…あー、いや。ほらさ。俺探偵だからさ。依頼が無いとそりゃ暇って訳で…。」
はあ、とため息を吐く須田。
「…じゃ、私は働いて来ますんでアカリちゃんをお願いします。」
「あ、ああ。」
そう言って須田はアカリを置いて出て行った。
アカリをあいつらから取り戻してから、ここしばらくの俺たちの取り決めでアカリを一人にしない様にしようということにしたのだ。アカリの存在が奴らにバレていたとしたら、いつまたアカリが狙われるか分からない。だから基本自宅では須田が、須田が見てやれない時は俺がついてやることになった。
…須田はここ最近働きに出る様になった。さすがに探偵助手だけでは食っていけないのだろう。元々警察の職に就いていたというのに、アカリを連れ戻すために警察を辞めたのだ。だったら須田の奴を食わすのも俺の責任なんだが、あいにくとそうそう何度も依頼がある訳じゃ無い。ここはT市の裏の裏なのだ。普通の探偵事務所と比べて依頼数も少ない。…というか客自体来ない。という訳で給料払うどころか自炊すら怪しい訳だ。ま、今生活できてるのは、たまに秋山が回してくれる仕事の依頼料のおかげというのがほとんどだ。
「全く情けないことこの上ない…。」
本当に人生とはわからんものだ。先月まで無名だったやつがいきなり有名人にもなれば、依頼も甲斐性もない探偵がいきなり助手を二人も雇う羽目にもなるなんて…。
「先生…?泣いてるの?」
「な…泣いてなんかないっ!」
…挙げ句の果てには年下の小娘に心配される始末だ。コンチクショー…。
…ともかくこのままじゃマズイ。
助手は増えたが収入は増えん。おまけに頼みの綱の秋山は未だ休職中でこちらに依頼を回してくれそうにない。(あいつの依頼は全部警察での捜査で行き詰まった時だけなのだ。)なんとかしないと、飢え死にするか、助手のヒモになって生き恥を晒すかの選択になっちまう。なんとかそれだけは避けないといかん。俺にも一応プライドってもんがある。
「…ところで先生。」
不意にアカリが呼びかけてきた。
「…なんだよ。」
「お客さんをね、待たせてるんだけどさ…。」
…!まさか…。
「依頼、受けてくれる?」
来た!…いろんな意味で…。
アカリは今まで助手として様々な依頼人を呼び込んで来た。…がその呼んでくる依頼がことごとく面倒なものばかり。加えて金にならんものばかり。ここ最近のアカリが持ってきた依頼の依頼料の合計は…2件で5010円だったか。
「どうしたの?」
「…いや、うーむ…。」
受けるべきか?絶対割りに合わんぞ。しかしいい加減収入だって欲しいし…。
「…先に聞いとくぞ。依頼人はちゃんと金を持ってる大人だろうな?りえちゃんみたいな子供だとか、記憶がないとか…。」
「大丈夫。ちゃんとお金はある?って聞いといたから。」
…それはそれでどうかと思うが。
「悪いけど、マジでこっちも生活がヤバいんだ。依頼聞く前に言っとくぞ。5万円以下なら断るからな。」
「そんな、人助けに5万円なんて…。」
「死活問題なのっ!」
強く訴える俺に、アカリはプーッと頰を膨らませた。
「…分かった。」
「分かればよろしい。さ、依頼人に入ってもらって。」
「おお…。オタ郎のやつまた出てるぞ。」
ここは「西馬探偵事務所」。そんで俺はそこの探偵の西馬だ。
助手であるアカリを奪還して2ヶ月はたった…。あれからボスや闇クラブに絡む事件には関わっていない。奴らの目につかない様に、なるべくなりを潜めることにしたんだ。…まあアカリの奴は、兄貴に会いたいとうるさかったが。
焦るのは分かるが、アッチコッチ動き回っても、奴らに見つかってまた捕まるのが関の山だ。慎重に動かんとな…。などと考えながらちょいと遅めのモーニングコーヒーを啜る。うーむ…。香り豊かかな。エチオピアブレンド…。
しかし人生というものは分からんもんだ。画面の中にいる男、春木大太郎。前回のアカリ奪還に有力な情報をくれた奴なんだが、出会った当時の本人はハイエースの中に住む小汚い引きこもりってイメージだった。それが今やお茶の間の人気者ってんだから…。
「…やったじゃないか。オタ郎。」
「お邪魔しまーす!」
「西馬さん。はいりますよ。」
アカリと須田の声だ。
「おう。どうぞ。」
程なくして栗色の髪の女子大生と、眼鏡のショートカット女が入ってきた。ウチの探偵助手のアカリと須田だ。
俺の姿を見るなり、まず須田が俺を詰ってきた。
「…真昼間から暇そうですね。西馬さん。」
「…あー、いや。ほらさ。俺探偵だからさ。依頼が無いとそりゃ暇って訳で…。」
はあ、とため息を吐く須田。
「…じゃ、私は働いて来ますんでアカリちゃんをお願いします。」
「あ、ああ。」
そう言って須田はアカリを置いて出て行った。
アカリをあいつらから取り戻してから、ここしばらくの俺たちの取り決めでアカリを一人にしない様にしようということにしたのだ。アカリの存在が奴らにバレていたとしたら、いつまたアカリが狙われるか分からない。だから基本自宅では須田が、須田が見てやれない時は俺がついてやることになった。
…須田はここ最近働きに出る様になった。さすがに探偵助手だけでは食っていけないのだろう。元々警察の職に就いていたというのに、アカリを連れ戻すために警察を辞めたのだ。だったら須田の奴を食わすのも俺の責任なんだが、あいにくとそうそう何度も依頼がある訳じゃ無い。ここはT市の裏の裏なのだ。普通の探偵事務所と比べて依頼数も少ない。…というか客自体来ない。という訳で給料払うどころか自炊すら怪しい訳だ。ま、今生活できてるのは、たまに秋山が回してくれる仕事の依頼料のおかげというのがほとんどだ。
「全く情けないことこの上ない…。」
本当に人生とはわからんものだ。先月まで無名だったやつがいきなり有名人にもなれば、依頼も甲斐性もない探偵がいきなり助手を二人も雇う羽目にもなるなんて…。
「先生…?泣いてるの?」
「な…泣いてなんかないっ!」
…挙げ句の果てには年下の小娘に心配される始末だ。コンチクショー…。
…ともかくこのままじゃマズイ。
助手は増えたが収入は増えん。おまけに頼みの綱の秋山は未だ休職中でこちらに依頼を回してくれそうにない。(あいつの依頼は全部警察での捜査で行き詰まった時だけなのだ。)なんとかしないと、飢え死にするか、助手のヒモになって生き恥を晒すかの選択になっちまう。なんとかそれだけは避けないといかん。俺にも一応プライドってもんがある。
「…ところで先生。」
不意にアカリが呼びかけてきた。
「…なんだよ。」
「お客さんをね、待たせてるんだけどさ…。」
…!まさか…。
「依頼、受けてくれる?」
来た!…いろんな意味で…。
アカリは今まで助手として様々な依頼人を呼び込んで来た。…がその呼んでくる依頼がことごとく面倒なものばかり。加えて金にならんものばかり。ここ最近のアカリが持ってきた依頼の依頼料の合計は…2件で5010円だったか。
「どうしたの?」
「…いや、うーむ…。」
受けるべきか?絶対割りに合わんぞ。しかしいい加減収入だって欲しいし…。
「…先に聞いとくぞ。依頼人はちゃんと金を持ってる大人だろうな?りえちゃんみたいな子供だとか、記憶がないとか…。」
「大丈夫。ちゃんとお金はある?って聞いといたから。」
…それはそれでどうかと思うが。
「悪いけど、マジでこっちも生活がヤバいんだ。依頼聞く前に言っとくぞ。5万円以下なら断るからな。」
「そんな、人助けに5万円なんて…。」
「死活問題なのっ!」
強く訴える俺に、アカリはプーッと頰を膨らませた。
「…分かった。」
「分かればよろしい。さ、依頼人に入ってもらって。」
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