記憶探偵の面倒な事件簿

hyui

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死神編

プロローグ 騒ぎ出す闇

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「安藤に続き…羽鳥もやられただと!?」
…都内某所の地下。光も届かぬ奥深くに「彼ら」はいた。
彼らはひっそりと、静かに。
だれにも知られぬように。

だがこのところ、立て続けに支部をやられたことで、彼らは焦り始めていた。
「…既に会員の何割かはクラブから離れ始めています。2つのクラブが壊滅して危機を感じ取ったのでしょう。あの報道が何よりの証拠です。羽鳥の死はもみ消されず、警察が捜査し、マスコミが発表した。彼らの上層部が我々のクラブを脱会したものと思って良いでしょう。」
「くそっ…!」
闇クラブ統括組織「サタン」の首領、三島は忌々しげに机を叩いた。
「羽鳥が死んだのは我々としては手痛い損害だ。彼女は美容クラブの経営以外にも、新規のクラブ会員を集めるでもあった。彼女が死んでしまった以上、新しい会員を募るのも困難だ。ボスめ…!」
「…既に『アスモデウス』のオーナーも行方不明になっています。襲撃されたわけではないようですが…。」
「…勘のいいのことだ。何かを感じ取って逃げ出したのだろう。全く、次から次へと…!」
「大分参ってるようですな…。」
ひょひょひょ…と不快な笑いをしながら三島をなじるのは、闇クラブのスタッフ部門「ルシフェル」の首領、東郷。
「…東郷。何が可笑しい。」
「いや、失礼。しかしそんなにいきり立っていては、せっかくの解決の糸口も見落としますぞ…。」
「解決の…糸口だと?」
東郷はうなづき、三島にある情報を告げた。
「…ボスの襲撃当日、『レヴィアタン』に派遣したメンバーから報告された内容だ。『ボスの妹に遭遇した』。」
「ボスの妹が…!?あの場にいたというのか?」
不敵な笑みを浮かべたまま、東郷は何も言わずにゆっくりと頷いた。
「そうか…!これは朗報だ。」
次第に顔が緩み始める三島。彼はそのこぼれそうな笑みを隠すように口元を手で覆い、考えを巡らせる。
「ボスの妹を捕らえれば、ボスは我々に迂闊に手は出せないだろう。きっと我々の元に戻って来てくれる…!」
「戻らなかったら…?」
「その時はその妹を首領にすげ替えるさ。形だけでもボスさえ戻れば、闇クラブの信頼は回復。また会員は集まる…。」
三島の眼に、再び灯がもどった。ギラギラとした野望の灯が。
「至急その妹を探し出せ!どんな方法を使っても構わん!生け捕りにするんだ!」
「はっ!」
闇の中に号令が走る。やがてそれは蜘蛛の子を散らしたかのようにワラワラと、それぞれが散り散りに蠢いていた。

…その様子を、東郷はまたニヤつきながら陰で眺めていた。
「…ここも、そろそろ潮時かね…。」
そうして東郷は、不敵な笑いを浮かべたままいずこかへと消えていった…。
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