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花園編
眠り姫の探し物
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一方のアカリたち…。
VIPルームにて、中の住人が一人一人殺されているかもしれないという情報をぼたんから聞いたアカリ。
未だVIPルームが危険だという事を信じない茜たちを信じさせるため、実情を示す手がかりを探す事にしたのだが…。
「ダメダァ…。それらしいものが見つからない。」
「こっちもダメ。やっぱりそんな手がかりなんてないんじゃあ…。」
弱音を吐くぼたんに、アカリは喝を入れる。
「諦めちゃダメ!諦めたらそこで試合終了ですよ!」
「べ…別にこれ、試合じゃないけど…。」
「さ、気合い入れ直して探索、探索!」
再度手がかりになる様なものを探し始めるアカリたちを、茜が止めに入った。
「ねえ。いい加減やめてくれない?見てよ。もう深夜0時。気になって寝苦しいったらありゃしない。」
「あ…ごめんなさい。もうちょっと静かに探すから。」
「その探すのを止めてほしいんだけど。」
茜は腕組みをしながらこちらを睨みつけてる。どうやら相当ご立腹のようだ。
「でも…!」
「わ、わかったわ。ごめんなさい。」
反論しようとするアカリを抑えて、ぼたんは引き下がった。
茜はフン、と二人を鼻で笑うと、また床ヘ就いた。
抑えていたアカリに、ぼたんは申し訳なさげに誤った。
「…ごめんね。アカリちゃん。でも彼女の言うことも最もだわ。夜遅くまでゴソゴソ動かれたら、そりゃ迷惑だものね…。」
「う~…。一刻も早くここから出ないといけないのに…!」
「…焦るのは分かるけど、今は二人とも疲れちゃってる。 また明日にしましょ。ね?」
「…分かった。」
ぼたんにも説得され、アカリはいやおうなしに寝る事にした。
「…う~ん。」
何かの光が目に入って、アカリは目が覚めた。…誰かが電気を点けたようだ。
「あ…。ごめんなさい。起こしちゃった?」
ぼたんがデスク用のライトを使って本を読もうとしていたようだ。ぼたんは起きたアカリに丁寧に謝った。
「ううん。大丈夫。…何してんの?」
「ちょっと寝付けなくて。だからこうして本を読んで暇つぶししてるの。」
「本、好きなの?」
「ええ。好き。…人と話すのが苦手なのもあるけど。」
「ぼたんちゃんが?意外!」
「…そう?」
「だって私には色々話してくれたじゃん。私の言うことも信じてくれたし。」
「…こんな状況だからかな。普段は全然だめ。人とこうやって話すのも稀よ。私、アガリ症だから。」
「アガリ症?」
「人と話す前に色々考えちゃうの。こう言われたらどうしよう、とか。こう思われたらどうしよう、とか…。そんなことグルグル考えちゃって、結局何も喋れなくなっちゃって。その内、人と話すこともしなくなった。その方が楽だから…。」
「でも今だって一杯話してくれてるじゃん。アガリ症には見えないな。」
「…自分でも不思議。なんでこんなに喋れるんだろ。何か、アカリちゃんって話しやすいの。」
「本当?何で?」
「何でだろ…?よくわかんないや。」
「あはは。変なの。」
「そうね。変ね。」
あははは、とアカリとぼたんはお互い笑い合った。こうして笑っているうちは、死が間近に迫っている事を忘れさせてくれる。
「…じゃあ私、そろそろ寝るわ。おやすみなさい。」
「うん。おやすみ…。ってあれ?」
「? どうしたの?」
「そこの壁に何か…。」
アカリは、ぼたんの持たれている壁に何か文字のようなものがあるのを見つけた。
「フクジュソウに想いを込めて」と書かれている。
「…?何だろ?これ。」
「これ…。小説のタイトルね。」
「そうなの?」
ぼたんはこくりと頷いた。
「私が好きな作家の作品よ。高校生の主人公はある一人の先輩に想いを寄せていた。やがてその主人公と先輩は結ばれるんだけど、卒業を機に離れ離れになってしまう。二人は再会を約束してそれぞれの進路に向かう。主人公は約束通り、貞操を貫いたんだけど、再会した先輩は既に妻子を設けていた…。裏切られた主人公は、フクジュソウを挿れた遺書を遺して自殺をしてしまう。そんなお話よ。」
「うわぁ…。なんかかわいそうなお話だね。」
「でもそのタイトルがどうしてここに…。」
よく調べてみると、その下にも文字がかかれてあった。「P15」とかかれている。
「…何だろう?暗号…かな。でも何を意味してるんだろう?」
「うーん。本のタイトルが書かれてるって事は、Pはページかな?このページ数を調べろってこと?」
「…ちょっとこの本探してみる。確か本棚にあったはず…。」
ぼたんは件の本を探し始め、ものの数分も経たぬうちに見つけ出した。
「あったわ。」
「もう!?は、早いね。」
「そうかな?…まあ、ここに来てからずっと本読んでたから。本の配置も覚えちゃったわ。ええと、15ページね…。」
件の本の15ページを調べてみると、そこには一通の少し古びた手紙が挟まれてあった。
「…あ、アカリちゃん。これ…。」
「何かのメッセージ、かな?どれどれ…。」
アカリはその手紙を手に取り広げて見た。手紙には次のように書いてあった。
『この部屋に入った人達へ
この部屋は危険です!今すぐここから出て下さい!この部屋は羽鳥という女が、自分の欲望を満たすために作ったものです。決してあなた方を幸せにする為のものではありません。私がこの部屋に来た時にいた8人の女の子も皆あの羽鳥が殺してしまいました。私もじきに殺されるでしょう。この手紙に気づいたあなた方。どうか逃げ延びて下さい。私はもうきっと助からない…。』
…手紙の最後の文章は、何かに濡れて滲んでいた。
「これ…私達より前にこの部屋に連れてこられた人の手紙だね。」
「…ええ。きっと、死を目前にして泣きながら書いたのね。最後の文章が滲んでる。」
「この人、結局死んじゃったのかな…。」
「多分…。」
…二人はこの手紙を遺していった人のことを想像した。
どれほどの孤独と恐怖に耐えながらこの手紙を書いたのだろう。自らの事よりも、後に来るであろう人達の為にこうしてメッセージを遺すだなんて…。
自然と溢れ出す涙を拭いて、アカリは顔を上げた。
「ぼたんちゃん!この手紙を皆に見せよう!これは立派な手がかりだよ!」
二人は顔を見合わせて力強く頷いた。
VIPルームにて、中の住人が一人一人殺されているかもしれないという情報をぼたんから聞いたアカリ。
未だVIPルームが危険だという事を信じない茜たちを信じさせるため、実情を示す手がかりを探す事にしたのだが…。
「ダメダァ…。それらしいものが見つからない。」
「こっちもダメ。やっぱりそんな手がかりなんてないんじゃあ…。」
弱音を吐くぼたんに、アカリは喝を入れる。
「諦めちゃダメ!諦めたらそこで試合終了ですよ!」
「べ…別にこれ、試合じゃないけど…。」
「さ、気合い入れ直して探索、探索!」
再度手がかりになる様なものを探し始めるアカリたちを、茜が止めに入った。
「ねえ。いい加減やめてくれない?見てよ。もう深夜0時。気になって寝苦しいったらありゃしない。」
「あ…ごめんなさい。もうちょっと静かに探すから。」
「その探すのを止めてほしいんだけど。」
茜は腕組みをしながらこちらを睨みつけてる。どうやら相当ご立腹のようだ。
「でも…!」
「わ、わかったわ。ごめんなさい。」
反論しようとするアカリを抑えて、ぼたんは引き下がった。
茜はフン、と二人を鼻で笑うと、また床ヘ就いた。
抑えていたアカリに、ぼたんは申し訳なさげに誤った。
「…ごめんね。アカリちゃん。でも彼女の言うことも最もだわ。夜遅くまでゴソゴソ動かれたら、そりゃ迷惑だものね…。」
「う~…。一刻も早くここから出ないといけないのに…!」
「…焦るのは分かるけど、今は二人とも疲れちゃってる。 また明日にしましょ。ね?」
「…分かった。」
ぼたんにも説得され、アカリはいやおうなしに寝る事にした。
「…う~ん。」
何かの光が目に入って、アカリは目が覚めた。…誰かが電気を点けたようだ。
「あ…。ごめんなさい。起こしちゃった?」
ぼたんがデスク用のライトを使って本を読もうとしていたようだ。ぼたんは起きたアカリに丁寧に謝った。
「ううん。大丈夫。…何してんの?」
「ちょっと寝付けなくて。だからこうして本を読んで暇つぶししてるの。」
「本、好きなの?」
「ええ。好き。…人と話すのが苦手なのもあるけど。」
「ぼたんちゃんが?意外!」
「…そう?」
「だって私には色々話してくれたじゃん。私の言うことも信じてくれたし。」
「…こんな状況だからかな。普段は全然だめ。人とこうやって話すのも稀よ。私、アガリ症だから。」
「アガリ症?」
「人と話す前に色々考えちゃうの。こう言われたらどうしよう、とか。こう思われたらどうしよう、とか…。そんなことグルグル考えちゃって、結局何も喋れなくなっちゃって。その内、人と話すこともしなくなった。その方が楽だから…。」
「でも今だって一杯話してくれてるじゃん。アガリ症には見えないな。」
「…自分でも不思議。なんでこんなに喋れるんだろ。何か、アカリちゃんって話しやすいの。」
「本当?何で?」
「何でだろ…?よくわかんないや。」
「あはは。変なの。」
「そうね。変ね。」
あははは、とアカリとぼたんはお互い笑い合った。こうして笑っているうちは、死が間近に迫っている事を忘れさせてくれる。
「…じゃあ私、そろそろ寝るわ。おやすみなさい。」
「うん。おやすみ…。ってあれ?」
「? どうしたの?」
「そこの壁に何か…。」
アカリは、ぼたんの持たれている壁に何か文字のようなものがあるのを見つけた。
「フクジュソウに想いを込めて」と書かれている。
「…?何だろ?これ。」
「これ…。小説のタイトルね。」
「そうなの?」
ぼたんはこくりと頷いた。
「私が好きな作家の作品よ。高校生の主人公はある一人の先輩に想いを寄せていた。やがてその主人公と先輩は結ばれるんだけど、卒業を機に離れ離れになってしまう。二人は再会を約束してそれぞれの進路に向かう。主人公は約束通り、貞操を貫いたんだけど、再会した先輩は既に妻子を設けていた…。裏切られた主人公は、フクジュソウを挿れた遺書を遺して自殺をしてしまう。そんなお話よ。」
「うわぁ…。なんかかわいそうなお話だね。」
「でもそのタイトルがどうしてここに…。」
よく調べてみると、その下にも文字がかかれてあった。「P15」とかかれている。
「…何だろう?暗号…かな。でも何を意味してるんだろう?」
「うーん。本のタイトルが書かれてるって事は、Pはページかな?このページ数を調べろってこと?」
「…ちょっとこの本探してみる。確か本棚にあったはず…。」
ぼたんは件の本を探し始め、ものの数分も経たぬうちに見つけ出した。
「あったわ。」
「もう!?は、早いね。」
「そうかな?…まあ、ここに来てからずっと本読んでたから。本の配置も覚えちゃったわ。ええと、15ページね…。」
件の本の15ページを調べてみると、そこには一通の少し古びた手紙が挟まれてあった。
「…あ、アカリちゃん。これ…。」
「何かのメッセージ、かな?どれどれ…。」
アカリはその手紙を手に取り広げて見た。手紙には次のように書いてあった。
『この部屋に入った人達へ
この部屋は危険です!今すぐここから出て下さい!この部屋は羽鳥という女が、自分の欲望を満たすために作ったものです。決してあなた方を幸せにする為のものではありません。私がこの部屋に来た時にいた8人の女の子も皆あの羽鳥が殺してしまいました。私もじきに殺されるでしょう。この手紙に気づいたあなた方。どうか逃げ延びて下さい。私はもうきっと助からない…。』
…手紙の最後の文章は、何かに濡れて滲んでいた。
「これ…私達より前にこの部屋に連れてこられた人の手紙だね。」
「…ええ。きっと、死を目前にして泣きながら書いたのね。最後の文章が滲んでる。」
「この人、結局死んじゃったのかな…。」
「多分…。」
…二人はこの手紙を遺していった人のことを想像した。
どれほどの孤独と恐怖に耐えながらこの手紙を書いたのだろう。自らの事よりも、後に来るであろう人達の為にこうしてメッセージを遺すだなんて…。
自然と溢れ出す涙を拭いて、アカリは顔を上げた。
「ぼたんちゃん!この手紙を皆に見せよう!これは立派な手がかりだよ!」
二人は顔を見合わせて力強く頷いた。
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