記憶探偵の面倒な事件簿

hyui

文字の大きさ
上 下
54 / 188
花園編

目覚める眠り姫 花園の花たちと貪る主

しおりを挟む
ここは「リヴィアタン」が管轄するVIPルーム。
ここに集められる住人は、全て10代後半の女の子ばかり。部屋の中は若者向けのファッション雑誌や、化粧品で溢れていた。
そんな彼女たちが今取り囲んでいる人物がいた。数時間前にこの部屋に運び込まれた少女。アカリである。
アカリはソファに横たえられ、気持ち良さそうに眠っていた。しかし一向に目が覚める様子がないため、一同は心配しながらこの少女を見守っていたのだった。

「う、うーん…。」
「あ、みんな!この子目が覚めたみたいよ!」
ムクリと起き上がり、眠そうに目をこするアカリ。
「…ここ…は。?」
「『VIPルーム』よ。あなた、ずっと寝てたけど大丈夫?」
「『VIPルーム』…。」
(…何だろう?なんか凄く大事な事を忘れてる気がする…。)
目覚めたてで、まだ頭がボーっとするアカリ。自分がどういう経緯でここに連れてこられたのかを覚えていないようだった。

「ねー、ねー!あなた名前なんてーの?」
ショートカットな元気な女の子が声をかけてきた。
「あたし?あたしは…アカリっていうの。あなたは?」
「私は茜。よろしくね!アカリちゃん!」
茜は右手を差し出し、アカリと握手した。
「やっと念願のVIPルームだね!あなたはどれくらい楽園にいたの?」
「え?どれくらい…。」
(えーと、順を追って思い出さないと。そもそもなんで私、ここにいるんだっけ?)
腕組みをして悩むアカリの姿を見て、茜は吹き出してしまった。
「あはは…!そんな真剣に考えなくてもいいよ。あなた、おもしろい子ね。」
「そっかな?そう言うあなたは?」
「私は三カ月でここに来れたわ。元々陸上部で鍛えてたしね。他は一年かかってる子もいるみたいだけど。」
「ふーん…。」

アカリは部屋の住人を見渡した。
住人はアカリを入れて全員で6人。茜を始め、皆歳が近そうな少女ばかりだった。
「一年かかったのは私よ。よろしくね。アカリちゃん。私はすみれ。そんで右から順に、楓、蘭、ぼたんよ。」
すみれと名乗る長髪の女の子も、茜に倣ってアカリと握手する。
「よろしく…。あなたはここ長いの?」
「?  あら、どうして?」
「だってなんか落ち着いてるし。全員の名前知ってるし。」
「ああ、よく言われるわ。なんか落ち着いてて大人っぽいって。私は普段通りしてるんだけどな…。」
「…あ。ごめんなさい。なんか気に障った?」
「ううん。大丈夫よ。ありがとう。私達、ここには同時期に来たの。本当はもう一人いたんだけど、昨日別室に行っちゃって…。」
「別室?」
「ここの隣の部屋よ。あそこの扉からスタッフの人が来て、その女の子を連れて行ったわ。」
「多分そこが本当のVIPルームね!早く行きたいなぁー。」
茜という子は、VIPルームにひどく憧れているようだ。その横で、何かに怯えたように震えている女の子もいた。
(…あの子は確か、えーと、ぼたんちゃんだったかな。何を怖がってるんだろ?)
「あの…。」
アカリがぼたんに話しかけようとした時、隣の部屋に続く扉が開き、黒服の男が入ってきた。

「お待たせしました。昨日に続いて、またお一人、隣の部屋にご案内します。…そうですね。ではあなた。どうぞこちらへ。」
「わ、私?」
楓と呼ばれた少女が黒服に促されて扉の向こうに連れていかれた。
「あ!ちょっと待ってよ!私も一緒に…。」
茜が扉に割り込もうとしたが、黒服がそれを制止した。
「申し訳ございませんが、1日に2名様以上はご案内できません。」
「ケチ!だいたい隣の部屋には何があんのよ!なんで一人ずつじゃないと駄目なの!?おかしいじゃん!」
黒服は茜の問いに答えず、「規則ですので。」とだけ述べて楓と共に扉の向こうへと行ってしまった。
「ああ!もう、なによ!ムカつく!私は『VIP』なのよ!扱い酷いんじゃない!?」
「まあまあ。茜落ち着いて。明日もまた来るでしょうし、その時まで待ちましょうよ。」
プリプリと怒る茜をなだめるすみれ。
その横で、アカリは「忘れ物」を必死に思い出そうとしていた。
(…えーと、なんで私、ここに来たんだっけ?『楽園』てところに凛さんと来て、ニャン太郎とかいうクソ男の金◯マを凛さんが蹴り上げてそれから…。)
順を追って思い起こす内に、アカリはようやく何のために自分がここに来たのかを思い出した。
「そうだ!私…!」



「VIPルーム」の隣の部屋にたどり着いた楓。
隣の部屋は6ほどの小部屋で、白い箱の様なものがポツンと置かれているだけだった。箱には無数のチューブが繋がれていて、そのチューブは部屋の外にまで続いている様だ。
「あ、あの、ここで何をするんですか?」
「…最新のデトックスです。あなたにはあの箱に入ってもらって、体内の毒素を抜いて頂きます。」
「わぁ…!」
黒服は白い箱を開けた。中は人1人が丁度入る大きさの様だ。
「さ、どうぞ。お入りください…。」
「は、はいっ!」
促されるままに箱に入る楓。彼女が入るのを確認し、黒服は箱のフタを閉じた。
(デトックスなんて私初めて!どんな感じなのかな…?)
初めての体験に、楓はワクワクしていた。
「…始めろ。」
黒服の合図と共に、ウィーン、という機会の作動する音がし始めた。その途端、楓の全身から刺すような激痛が走った。
「イッ…!ギャアアアっ!」
白い箱から断末魔の声が漏れてくる。箱に繋がれたチューブからは、赤い赤い液体が部屋の外へと送り込まれていた。
「た、助けて…!痛い痛い痛い痛い痛い痛い!開けて!もう止めてエエェ…!!」
必死に訴える楓。その間にもチューブは液体をどんどん部屋の外へ送り込んで行く。
…しばらく続いていた楓の悲鳴も、やがて聞こえなくなった。頃合いを見て黒服は白い箱を開けた。
中にいた楓は全身が穴だらけにされ、血が全て抜き取られ変わりはてた遺体となっていた。黒服は楓を取り上げると、「処分しろ」と部下に預けた。

「羽鳥様。本日の分は終了致しました。いかがでございますか?」
「…とても良いわ。やはり生娘の生き血は心地いい…。」
別室にて、「リヴィアタン」のオーナー羽鳥は先ほどの楓の生き血を使った「血風呂」に浸かっていた。
「私よりも若い娘の生き血で私はもっと美しくなる…。いつまでも、いつまでもよ…。」
悦に浸る羽鳥は、紅い湯船の中で妖しく微笑んでいた…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

髪を切った俺が芸能界デビューした結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 妹の策略で『読者モデル』の表紙を飾った主人公が、昔諦めた夢を叶えるため、髪を切って芸能界で頑張るお話。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

オレは視えてるだけですが⁉~訳ありバーテンダーは霊感パティシエを飼い慣らしたい

凍星
キャラ文芸
幽霊が視えてしまうパティシエ、葉室尊。できるだけ周りに迷惑をかけずに静かに生きていきたい……そんな風に思っていたのに⁉ バーテンダーの霊能者、久我蒼真に出逢ったことで、どういう訳か、霊能力のある人達に色々絡まれる日常に突入⁉「オレは視えてるだけだって言ってるのに、なんでこうなるの??」霊感のある主人公と、彼の秘密を暴きたい男の駆け引きと絆を描きます。BL要素あり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...