記憶探偵の面倒な事件簿

hyui

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迷子編

りえちゃんのその後

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秋山宅での一件があった後、りえちゃんは少年院に入ることとなった。本人の自供から、以前の夫婦殺人事件に関与していることが明らかになったからだ。

「りえちゃん。しばらくの間窮屈な思いをさせるかもしれない。 だが、人は悪いことをしたら、かならずその罪を償わなきゃならないんだ。いい子にしていたら、きっとすぐに出られるからな。」
「うん…。わかった。」
「大丈夫だ。おじさんが毎日面会に行く。」
「ほんとう!?」
「ああ。だから、頑張るんだぞ。りえちゃんは一人じゃない。」
「うん。」
秋山は少女の頭を撫でて、別れを告げた。

「さ、こっちに来るんだ。」
刑務官はりえちゃんの腕を掴み、少年院へと連れて行…

「?…どうしたの?」
腕を掴んだまま、少年院へ連れて行こうとする刑務官は動かなくなった。眼は一点を見つめたまま。まるでそのまま時間が止まったようだ。
「…ねえ。」
少女は刑務官の服を引っ張って読んだが反応がない。
「やあ、りえちゃん。」
若い男の声がした。刑務官の視線の先に、全身黒ずくめの男が立っていた。
「可哀想に…。捕まっちゃったのかい?」
優しく語りかける男がゆっくりと少女に近づいていく。
「お、おにいちゃん…。」
男を見た少女は身をこわばらせた。
「どうしたんだい?僕は迎えに来たんだよ?りえちゃん。」
「…おにいちゃんはわるいひとなんでしょ?」
「?   なんでそんなこと思うんだい?」
「おじちゃんがおしえてくれた。『ひとをころす』のはいけないことだって。わたしはそれがただしいことだっておもう。だから『ひとをころす』ようにおしえたおにいちゃんはわるいひとだ!」
「ふむ。…誰かが余計な知恵をつけちゃったみたいだね。」
男はピクリとも表情を変えず、少女の目の前に立つと、屈んで少女の目をその金色の目で見つめた。

「…一応、君を回収する為に来たんだが、仕方ない。聞き分けの悪い子にはおしおきしないとね。」


しばらく少女を見つめていた男はゆっくりと立ち上がり、翻って出口に歩き出した。

「僕が『わるいひと』だと言うなら、りえちゃんも立派な『わるいひと』だよ。君も何人も殺してきたんだからね。その事実に目を向けないでここに逃げるなんて、いけないよ。自分の罪にきちんと目を向けなきゃぁね…。」

出口の暗闇に向かって歩く男は、やがて闇に吸い込まれるように消えていった。
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