25 / 188
迷子編
渦中の秋山
しおりを挟む
「大丈夫か?りえちゃん。」
西馬の事務所で体調を崩したりえちゃんを俺は家まで運んで来た。
りえちゃんは相変わらず頭を痛そうに抱え、額からは汗が吹き出ていた。
「待ってろ。すぐに救急車呼んでやるからな。」
「うん…。ありがと。おじちゃん…。」
…この子の家はいつになればわかるのだろう?調査が進むほど不安は増すばかりだ。
調べてみれば、孤児を預かった夫婦についての記事はすぐ見つかった。過去に2件。いずれも夫婦は絞殺されていた。
「田中夫妻」と「黒沢夫妻」。りえちゃんの記憶に残っていたという「おじさん」の名前も「たなか」と「くろさわ」…。これは偶然の一致だろうか?
そして驚いたことにこの事件は犯人不明のまま未解決事件として早々に捜査が打ち切られている。明らかな他殺であり、凶器もはっきりとしているのに、ろくな捜査もされてないのだ。何故なのか…。
おそらく、この少女がこの事件に関わってるのは間違いない。いやもしかしたら、夫妻を殺したのはりえちゃんかもしれない…。だがそんなことは信じたくなかった。だから西馬には関係ない記事を渡した…。約束を破っちまったな…。
しかし、こんな少女に大の大人が殺せるのか?そんなことをする理由もないのに?
そう思って少年少女の事件を調べてみたら意外とあった。
弟に嫉妬して射殺した10歳くらいの少年、顔のことを貶されたことに腹を立てて同級生を刺し殺した13歳の少女、親子を殺した挙句母親を死姦した少年…。我ながら信じられない事件の数々だ。
なぜ、こんなことができるんだろうか?やっちゃいけないことの区別もつけられないのか?誰かが教えてやらねば分からないのか?
少年少女のこういった事件を通して、俺はそんな疑問を抱くようになった。
中でも印象に残ったのが、11歳の少女による殺人事件だ。近くに住む3歳と4歳の幼児2人を殺した少女は警察に対してこう語ったという。
ー 殺人はそんなに悪い事じゃないもの、人はいつかは死ぬのよ ー
…もし、この少女と同じ感性をこの子も持っているとしたら?誰かが教えてやらなければならないのだろうか。教えてやれば、この子は果たして考えを改めるだろうか…。
…いかん。いかん。今はそんなことより、りえちゃんの容態の方が心配だ。救急車も呼んだ。後は体が冷えないように体を温めないと。
「救急車を呼んだぞ。もうちょっとで着くからな。さあ、毛布を被ってあったまってなさい。」
「うん…。ありがとう…。おじちゃん…。」
りえちゃんは俺に無垢な笑顔を見せた。…違う。こんな子に人が殺せるものか。きっとあの事件は何か事故があったんだ。そうに違いない。
「おとなしく待ってるんだぞ。そうだ。暖かいミルクでもいれてやろう。」
「ありがと…。おじちゃん…。」
『だいすき』
…ん?今、りえちゃんが何かいったような?気のせいか…?
西馬の事務所で体調を崩したりえちゃんを俺は家まで運んで来た。
りえちゃんは相変わらず頭を痛そうに抱え、額からは汗が吹き出ていた。
「待ってろ。すぐに救急車呼んでやるからな。」
「うん…。ありがと。おじちゃん…。」
…この子の家はいつになればわかるのだろう?調査が進むほど不安は増すばかりだ。
調べてみれば、孤児を預かった夫婦についての記事はすぐ見つかった。過去に2件。いずれも夫婦は絞殺されていた。
「田中夫妻」と「黒沢夫妻」。りえちゃんの記憶に残っていたという「おじさん」の名前も「たなか」と「くろさわ」…。これは偶然の一致だろうか?
そして驚いたことにこの事件は犯人不明のまま未解決事件として早々に捜査が打ち切られている。明らかな他殺であり、凶器もはっきりとしているのに、ろくな捜査もされてないのだ。何故なのか…。
おそらく、この少女がこの事件に関わってるのは間違いない。いやもしかしたら、夫妻を殺したのはりえちゃんかもしれない…。だがそんなことは信じたくなかった。だから西馬には関係ない記事を渡した…。約束を破っちまったな…。
しかし、こんな少女に大の大人が殺せるのか?そんなことをする理由もないのに?
そう思って少年少女の事件を調べてみたら意外とあった。
弟に嫉妬して射殺した10歳くらいの少年、顔のことを貶されたことに腹を立てて同級生を刺し殺した13歳の少女、親子を殺した挙句母親を死姦した少年…。我ながら信じられない事件の数々だ。
なぜ、こんなことができるんだろうか?やっちゃいけないことの区別もつけられないのか?誰かが教えてやらねば分からないのか?
少年少女のこういった事件を通して、俺はそんな疑問を抱くようになった。
中でも印象に残ったのが、11歳の少女による殺人事件だ。近くに住む3歳と4歳の幼児2人を殺した少女は警察に対してこう語ったという。
ー 殺人はそんなに悪い事じゃないもの、人はいつかは死ぬのよ ー
…もし、この少女と同じ感性をこの子も持っているとしたら?誰かが教えてやらなければならないのだろうか。教えてやれば、この子は果たして考えを改めるだろうか…。
…いかん。いかん。今はそんなことより、りえちゃんの容態の方が心配だ。救急車も呼んだ。後は体が冷えないように体を温めないと。
「救急車を呼んだぞ。もうちょっとで着くからな。さあ、毛布を被ってあったまってなさい。」
「うん…。ありがとう…。おじちゃん…。」
りえちゃんは俺に無垢な笑顔を見せた。…違う。こんな子に人が殺せるものか。きっとあの事件は何か事故があったんだ。そうに違いない。
「おとなしく待ってるんだぞ。そうだ。暖かいミルクでもいれてやろう。」
「ありがと…。おじちゃん…。」
『だいすき』
…ん?今、りえちゃんが何かいったような?気のせいか…?
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
金沢ひがし茶屋街 雨天様のお茶屋敷
河野美姫
キャラ文芸
古都・金沢、加賀百万石の城下町のお茶屋街で巡り会う、不思議なご縁。
雨の神様がもてなす甘味処。
祖母を亡くしたばかりの大学生のひかりは、ひとりで金沢にある祖母の家を訪れ、祖母と何度も足を運んだひがし茶屋街で銀髪の青年と出会う。
彼は、このひがし茶屋街に棲む神様で、自身が守る屋敷にやって来た者たちの傷ついた心を癒やしているのだと言う。
心の拠り所を失くしたばかりのひかりは、意図せずにその屋敷で過ごすことになってしまいーー?
神様と双子の狐の神使、そしてひとりの女子大生が紡ぐ、ひと夏の優しい物語。
アルファポリス 2021/12/22~2022/1/21
※こちらの作品はノベマ!様・エブリスタ様でも公開中(完結済)です。
(2019年に書いた作品をブラッシュアップしています)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

夢の中でもう一人のオレに丸投げされたがそこは宇宙生物の撃退に刀が重宝されている平行世界だった
竹井ゴールド
キャラ文芸
オレこと柊(ひいらぎ)誠(まこと)は夢の中でもう一人のオレに泣き付かれて、余りの泣き言にうんざりして同意するとーー
平行世界のオレと入れ替わってしまった。
平行世界は宇宙より外敵宇宙生物、通称、コスモアネモニー(宇宙イソギンチャク)が跋扈する世界で、その対策として日本刀が重宝されており、剣道の実力、今(いま)総司のオレにとってはかなり楽しい世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる