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迷子編
渦中の秋山
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「大丈夫か?りえちゃん。」
西馬の事務所で体調を崩したりえちゃんを俺は家まで運んで来た。
りえちゃんは相変わらず頭を痛そうに抱え、額からは汗が吹き出ていた。
「待ってろ。すぐに救急車呼んでやるからな。」
「うん…。ありがと。おじちゃん…。」
…この子の家はいつになればわかるのだろう?調査が進むほど不安は増すばかりだ。
調べてみれば、孤児を預かった夫婦についての記事はすぐ見つかった。過去に2件。いずれも夫婦は絞殺されていた。
「田中夫妻」と「黒沢夫妻」。りえちゃんの記憶に残っていたという「おじさん」の名前も「たなか」と「くろさわ」…。これは偶然の一致だろうか?
そして驚いたことにこの事件は犯人不明のまま未解決事件として早々に捜査が打ち切られている。明らかな他殺であり、凶器もはっきりとしているのに、ろくな捜査もされてないのだ。何故なのか…。
おそらく、この少女がこの事件に関わってるのは間違いない。いやもしかしたら、夫妻を殺したのはりえちゃんかもしれない…。だがそんなことは信じたくなかった。だから西馬には関係ない記事を渡した…。約束を破っちまったな…。
しかし、こんな少女に大の大人が殺せるのか?そんなことをする理由もないのに?
そう思って少年少女の事件を調べてみたら意外とあった。
弟に嫉妬して射殺した10歳くらいの少年、顔のことを貶されたことに腹を立てて同級生を刺し殺した13歳の少女、親子を殺した挙句母親を死姦した少年…。我ながら信じられない事件の数々だ。
なぜ、こんなことができるんだろうか?やっちゃいけないことの区別もつけられないのか?誰かが教えてやらねば分からないのか?
少年少女のこういった事件を通して、俺はそんな疑問を抱くようになった。
中でも印象に残ったのが、11歳の少女による殺人事件だ。近くに住む3歳と4歳の幼児2人を殺した少女は警察に対してこう語ったという。
ー 殺人はそんなに悪い事じゃないもの、人はいつかは死ぬのよ ー
…もし、この少女と同じ感性をこの子も持っているとしたら?誰かが教えてやらなければならないのだろうか。教えてやれば、この子は果たして考えを改めるだろうか…。
…いかん。いかん。今はそんなことより、りえちゃんの容態の方が心配だ。救急車も呼んだ。後は体が冷えないように体を温めないと。
「救急車を呼んだぞ。もうちょっとで着くからな。さあ、毛布を被ってあったまってなさい。」
「うん…。ありがとう…。おじちゃん…。」
りえちゃんは俺に無垢な笑顔を見せた。…違う。こんな子に人が殺せるものか。きっとあの事件は何か事故があったんだ。そうに違いない。
「おとなしく待ってるんだぞ。そうだ。暖かいミルクでもいれてやろう。」
「ありがと…。おじちゃん…。」
『だいすき』
…ん?今、りえちゃんが何かいったような?気のせいか…?
西馬の事務所で体調を崩したりえちゃんを俺は家まで運んで来た。
りえちゃんは相変わらず頭を痛そうに抱え、額からは汗が吹き出ていた。
「待ってろ。すぐに救急車呼んでやるからな。」
「うん…。ありがと。おじちゃん…。」
…この子の家はいつになればわかるのだろう?調査が進むほど不安は増すばかりだ。
調べてみれば、孤児を預かった夫婦についての記事はすぐ見つかった。過去に2件。いずれも夫婦は絞殺されていた。
「田中夫妻」と「黒沢夫妻」。りえちゃんの記憶に残っていたという「おじさん」の名前も「たなか」と「くろさわ」…。これは偶然の一致だろうか?
そして驚いたことにこの事件は犯人不明のまま未解決事件として早々に捜査が打ち切られている。明らかな他殺であり、凶器もはっきりとしているのに、ろくな捜査もされてないのだ。何故なのか…。
おそらく、この少女がこの事件に関わってるのは間違いない。いやもしかしたら、夫妻を殺したのはりえちゃんかもしれない…。だがそんなことは信じたくなかった。だから西馬には関係ない記事を渡した…。約束を破っちまったな…。
しかし、こんな少女に大の大人が殺せるのか?そんなことをする理由もないのに?
そう思って少年少女の事件を調べてみたら意外とあった。
弟に嫉妬して射殺した10歳くらいの少年、顔のことを貶されたことに腹を立てて同級生を刺し殺した13歳の少女、親子を殺した挙句母親を死姦した少年…。我ながら信じられない事件の数々だ。
なぜ、こんなことができるんだろうか?やっちゃいけないことの区別もつけられないのか?誰かが教えてやらねば分からないのか?
少年少女のこういった事件を通して、俺はそんな疑問を抱くようになった。
中でも印象に残ったのが、11歳の少女による殺人事件だ。近くに住む3歳と4歳の幼児2人を殺した少女は警察に対してこう語ったという。
ー 殺人はそんなに悪い事じゃないもの、人はいつかは死ぬのよ ー
…もし、この少女と同じ感性をこの子も持っているとしたら?誰かが教えてやらなければならないのだろうか。教えてやれば、この子は果たして考えを改めるだろうか…。
…いかん。いかん。今はそんなことより、りえちゃんの容態の方が心配だ。救急車も呼んだ。後は体が冷えないように体を温めないと。
「救急車を呼んだぞ。もうちょっとで着くからな。さあ、毛布を被ってあったまってなさい。」
「うん…。ありがとう…。おじちゃん…。」
りえちゃんは俺に無垢な笑顔を見せた。…違う。こんな子に人が殺せるものか。きっとあの事件は何か事故があったんだ。そうに違いない。
「おとなしく待ってるんだぞ。そうだ。暖かいミルクでもいれてやろう。」
「ありがと…。おじちゃん…。」
『だいすき』
…ん?今、りえちゃんが何かいったような?気のせいか…?
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