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迷子編
秋山と合流 探偵事務所にて
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「さて…と。秋山を待ちますか。」
夕方に事務所に帰ってきた俺たち。とりあえず新情報もあったので秋山と合流する手はずになっていた。
「秋山さん、何かわかったかなぁ。」
「さあな。何しろあっちは本職の仕事もあるからなあ。」
警察が依然として忙しいのは俺も知ってる。数ヶ月前から続いている暴力団の勢力争いは依然として活発だった。何が目的かは知らんが、あちこちで騒ぎを起こしてやがる。おかげで事態の収拾のために毎度毎度警察が駆り出される始末。あいつが暇なはずがない。
…それでも、俺はあいつに会わなきゃならなかった。この依頼の解決のためだけじゃない。気になること、分からないことがありすぎる。
あの少女の引取手の両親の末路。何者かに縊り殺され、横たえられた夫婦は誰に殺されたのか。何故あの少女の両親の引き取り手をあの孤児院は話したがらないのか。少女を引き取った男は何者なのか…。
「うーむ…。」改めて考えるとますます不安になってきた。あの少女は、やはり危険な存在なんじゃないか?
「だいじょぶ?先生。」
アカリが心配そうに覗きこんできた。今回こいつに心配させっぱなしだな…。
「大丈夫だ。秋山を待とう…。」
とにかく秋山を待つんだ。今はそうするしかない。
「それにしても遅いなぁ。秋山さん。何かあったのかなぁ。」
確かに遅い…。もう約束の時間はとうに過ぎている。まさか…。秋山の身になにか…?
「いやぁすまんすまん!すっかり待たせちまったな!」
俺の不安を打ち消すように、秋山が豪快にドアを開けて入ってきた。
「遅かったじゃないか。秋山。心配したぞ。」
「悪い悪い。そんな怒んな。」
「こんにちわ。」秋山の頭の上からりえちゃんが挨拶してきた。秋山に肩車されている。すっかり秋山に懐いているようだ。
「お、ちゃんと挨拶できたね。えらいぞ、りえちゃん。」
「えへへ。」秋山に褒められて無邪気に笑うりえちゃん。このやり取りはまるで親子のようだ。
…こんな少女に、はたして人が殺せるものだろうか?こんないたいけな少女が…。
…いかんいかん。また悪い考えがよぎってしまった。
「どうして遅れたんだ?ちゃんとした理由があるんだろな。」
「まあな。…いやりえちゃんを職場に連れてきたことを部下に散々とっちめられてな。」
「部下?…ああ、このまえ電話越しにお前に怒鳴ってたキツイ女部下か。」
「ああ。全くあいつときたらくどくどと…。職場に子供を連れて何考えてるんだ!なんて言いおって…。」
「言われても仕方ないだろ。警察は子守やるほどヒマじゃないんだろ?」
「いや、まあ…。そうなんだがなあ。」
ポリポリと頭をかきながら、渋い顔をする秋山。どうやらこってり絞られたらしいな。
「で、何か新しくわかったか?」
「ああ。俺もただで説教食らった訳じゃない。この子に関わると思われる事件の資料を持ってきたぞ。」
秋山は、ブリーフケースから山のような資料をドサドサと取り出した。
「こ、こんなにか?」
「そうだ。いかんせん、この子の証言だけが頼りだからな。関係ありそうなものは片っ端から拾ってきた。」
「にしても、すごい量だなこりゃ。」
「…この子のためだからな。早いとこ家を見つけて落ち着かせてやりたいんだ。」秋山は頭上できゃっ、きゃっとはしゃぐりえちゃんの頭を愛おしげに撫でた。
「…本当に早く解決してもいいんだろな?その子と長くいれなくなるぞ。」
「馬鹿いえ。元の家に戻るのが一番なんだ。俺は…父親ではないんだからな。」
「秋山…。」
秋山は笑ってはいるが、どこか寂しげな表情だ。俺はこいつの過去をある程度知ってるだけに、なんだかその表情がなんだか辛い。
「ま、俺からの情報はこの通りだ。そっちは何かわかったか?」
「ああ、あの子の一番始めにいたと思われる家を見つけた。」
「!? 本当か?」
「ああ、だがもう別の住人が住んでいたよ。りえちゃんはその後ひまわり孤児院というところに預けられた。」
「孤児院に…。それで?」
「だがその後の引き取り手が不明だ。その孤児院の保母さんは何か知ってる風だったが、ひたすら隠そうとしていたな。」
「引き取り手が不明…?その保母さんを問い詰めたのか?」
「いや問い詰めるまでもない。記憶を読めば一発…。」
「そうか。お前ならその手があったな。」
「…と、思ってたんだがな。意外とすんなりいかないもんだ。」
「というと?」
「引き取り手らしき男の映像は見つかったんだがな。そいつの顔がどういうわけか分からない。おまけに保母さんはだんまり決め込んで引っ込んじまった。」
「男か…。それだけじゃわからんな。顔がわからんというのも妙だ。」
「あとの頼みは…。」俺は秋山の頭上でキョトンとしているりえちゃんに目を移した。
「この子の記憶だよりか…。」
「そういうこったな。」
再度、俺はシャツの襟を正して気合いを入れた。
夕方に事務所に帰ってきた俺たち。とりあえず新情報もあったので秋山と合流する手はずになっていた。
「秋山さん、何かわかったかなぁ。」
「さあな。何しろあっちは本職の仕事もあるからなあ。」
警察が依然として忙しいのは俺も知ってる。数ヶ月前から続いている暴力団の勢力争いは依然として活発だった。何が目的かは知らんが、あちこちで騒ぎを起こしてやがる。おかげで事態の収拾のために毎度毎度警察が駆り出される始末。あいつが暇なはずがない。
…それでも、俺はあいつに会わなきゃならなかった。この依頼の解決のためだけじゃない。気になること、分からないことがありすぎる。
あの少女の引取手の両親の末路。何者かに縊り殺され、横たえられた夫婦は誰に殺されたのか。何故あの少女の両親の引き取り手をあの孤児院は話したがらないのか。少女を引き取った男は何者なのか…。
「うーむ…。」改めて考えるとますます不安になってきた。あの少女は、やはり危険な存在なんじゃないか?
「だいじょぶ?先生。」
アカリが心配そうに覗きこんできた。今回こいつに心配させっぱなしだな…。
「大丈夫だ。秋山を待とう…。」
とにかく秋山を待つんだ。今はそうするしかない。
「それにしても遅いなぁ。秋山さん。何かあったのかなぁ。」
確かに遅い…。もう約束の時間はとうに過ぎている。まさか…。秋山の身になにか…?
「いやぁすまんすまん!すっかり待たせちまったな!」
俺の不安を打ち消すように、秋山が豪快にドアを開けて入ってきた。
「遅かったじゃないか。秋山。心配したぞ。」
「悪い悪い。そんな怒んな。」
「こんにちわ。」秋山の頭の上からりえちゃんが挨拶してきた。秋山に肩車されている。すっかり秋山に懐いているようだ。
「お、ちゃんと挨拶できたね。えらいぞ、りえちゃん。」
「えへへ。」秋山に褒められて無邪気に笑うりえちゃん。このやり取りはまるで親子のようだ。
…こんな少女に、はたして人が殺せるものだろうか?こんないたいけな少女が…。
…いかんいかん。また悪い考えがよぎってしまった。
「どうして遅れたんだ?ちゃんとした理由があるんだろな。」
「まあな。…いやりえちゃんを職場に連れてきたことを部下に散々とっちめられてな。」
「部下?…ああ、このまえ電話越しにお前に怒鳴ってたキツイ女部下か。」
「ああ。全くあいつときたらくどくどと…。職場に子供を連れて何考えてるんだ!なんて言いおって…。」
「言われても仕方ないだろ。警察は子守やるほどヒマじゃないんだろ?」
「いや、まあ…。そうなんだがなあ。」
ポリポリと頭をかきながら、渋い顔をする秋山。どうやらこってり絞られたらしいな。
「で、何か新しくわかったか?」
「ああ。俺もただで説教食らった訳じゃない。この子に関わると思われる事件の資料を持ってきたぞ。」
秋山は、ブリーフケースから山のような資料をドサドサと取り出した。
「こ、こんなにか?」
「そうだ。いかんせん、この子の証言だけが頼りだからな。関係ありそうなものは片っ端から拾ってきた。」
「にしても、すごい量だなこりゃ。」
「…この子のためだからな。早いとこ家を見つけて落ち着かせてやりたいんだ。」秋山は頭上できゃっ、きゃっとはしゃぐりえちゃんの頭を愛おしげに撫でた。
「…本当に早く解決してもいいんだろな?その子と長くいれなくなるぞ。」
「馬鹿いえ。元の家に戻るのが一番なんだ。俺は…父親ではないんだからな。」
「秋山…。」
秋山は笑ってはいるが、どこか寂しげな表情だ。俺はこいつの過去をある程度知ってるだけに、なんだかその表情がなんだか辛い。
「ま、俺からの情報はこの通りだ。そっちは何かわかったか?」
「ああ、あの子の一番始めにいたと思われる家を見つけた。」
「!? 本当か?」
「ああ、だがもう別の住人が住んでいたよ。りえちゃんはその後ひまわり孤児院というところに預けられた。」
「孤児院に…。それで?」
「だがその後の引き取り手が不明だ。その孤児院の保母さんは何か知ってる風だったが、ひたすら隠そうとしていたな。」
「引き取り手が不明…?その保母さんを問い詰めたのか?」
「いや問い詰めるまでもない。記憶を読めば一発…。」
「そうか。お前ならその手があったな。」
「…と、思ってたんだがな。意外とすんなりいかないもんだ。」
「というと?」
「引き取り手らしき男の映像は見つかったんだがな。そいつの顔がどういうわけか分からない。おまけに保母さんはだんまり決め込んで引っ込んじまった。」
「男か…。それだけじゃわからんな。顔がわからんというのも妙だ。」
「あとの頼みは…。」俺は秋山の頭上でキョトンとしているりえちゃんに目を移した。
「この子の記憶だよりか…。」
「そういうこったな。」
再度、俺はシャツの襟を正して気合いを入れた。
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