記憶探偵の面倒な事件簿

hyui

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仮面編

仮面の最期

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『何!奴を捕まえた!?』
「おうともよ。俺の推理がズバリ当たってなぁ~。」
奴を仕留めた後、俺は秋山に報告の電話をしていた。推理も当たり、格闘戦でも返り討ちにして、俺は鼻高々だった。まさにテングである。


『…よし!今からそっちにむかう!霊安室前でいいんだな!?』
「ああ、大丈夫だ。報酬、楽しみに待ってるぜ~。」
『まあ、そう急かすな。犯人はそっちで捕まえてるんだな!?』
「ああ、俺のKOパンチを喰らってこっちで伸びて…。」

…あれ?

『…?どうした!?』
「…すまん。逃げられた。」
『なぁにぃぃぃっ!?』
…心のどこかでポキンと、俺の鼻が折れる音がした…。






「ハァ…、ハァ…。」
…あの忌々しい探偵め。だがここまでくれば、見つかるまい。奴が有頂天になっていたおかげで、かろうじて動き回れるくらいには回復できた。
病院の裏の物陰で、とりあえず一休み…。

「依頼人さん?」

…またしても聞き慣れた女の子の声。確か…。

「き、君は…?」
「忘れたの?アカリだよ。」

…そう。アカリだ。彼女がここに来たって事は、奴も近くに?

「あ、あの探偵は!?」
「先生のこと?知らないよ。ここには私一人で来たから。」

…安心した。この娘一人ならなんとかなる。メスで脅して…
「『メスで脅して盾にすれば逃げられる』、って考えてる?」

え……?

「依頼人さんが思ってること、全部私には聞こえてるよ。陳さんにやったことも知ってる。せっかく記憶を戻してくれたのに…あなた、先生を裏切ったんだね。」
彼女が僕を覗きこんできた。気のせいか、片目が徐々に金色に変わっているように見える…。


「悪い子にはお仕置きしなきゃね。」


そう言い放ったあと、彼女はどこかに行ってしまった。
まずい。あの探偵を呼ぶ気だ。あるいは警察か。いずれにせよ、どうにかしなければ…。

…エセ。…カ…セ。

ん?どこからか、声が聞こえる。どこからだ…?

…オレノ…カエセ…。

すぐ近くだ…。

…オレノ…カオヲ…カエセ…。

窓ガラスを見て、声の出どころがわかった。
「う、うわぁぁぁぁっ!!」
俺の顔だ…!俺の顔から、「顔」が湧いて出ている…!その「顔」が喋っているんだ!
「顔」は俺の右頬、左頬、眉間と、俺の顔の空いたところから湧いていた。
この顔は…俺が殺して来た奴らだ…!

…カエセ…!カオヲ…カエセ…!

「う、煩い!この顔は俺の顔だ!お前らによこすものか!」

湧いてくる「顔」をメスで削ぎ落とす。だがその下からまた「顔」が湧いてくる。その湧き出た「顔」をまた削ぎ落とす。また湧き出る。削ぎ落とす。湧く。削ぐ。湧く。削ぐ。湧く。削ぐ。湧く。削ぐ。湧く。削ぐ………
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