記憶探偵の面倒な事件簿

hyui

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楽園編

いざ、対決!

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耳障りな警報が鳴り響く中、俺と秋山はまだ安藤と向き合っていた。

さて、どうしたものか。
俺は当初、奴をとっ捕まえて色々と聞き出す腹づもりだった。「催眠男」のこと。奴が所属しているであろう組織のことなどなど…。
しかし、状況が変わった。
アカリと須田が奴らのいう「VIPルーム」とやらに連れて行かれているのだ。
アカリと須田刑事が奴らの手の内にある以上、俺はそちらの救出を優先したい。しかし、対する安藤もタダでは通してくれそうにないし…。
「さて、あなた方の相手をするにしても、2対1ではいささか不利だ。こちらも1人呼ばせていただきますか。」
安藤がパチンと指を鳴らすと、黒服の男が1人やってきた。見覚えのある男だ…。
「はっ。お呼びでしょうか?オーナー。」
「竹田。お前は彼らに付いていたウェイターだったな。」
「はい。左様でございます。」
「よろしい。ではあちらの秋山様の相手をして差し上げなさい。私1人では彼ら2人をもてなすのは難しい。」
「かしこまりました。」
…あのレストランで俺たちをもてなしていたウェイターだ。竹田は二つ返事でそういうと、こちらをに対してやや横に向いて、少しお辞儀をする形で部屋の奥の扉へ手をむけた。
「…秋山様。それではあちらでお相手いたします。どうぞ。」
「お、おう。」
俺も秋山も戸惑っている。今から一戦やろうというのに、対応が馬鹿丁寧だ。
「秋山様。お連れの方の須田刑事でしたかな?その方はこの扉を抜けた廊下をまっすぐ行った先に運び込まれている。竹田を倒したらそのまままっすぐ進めば良いでしょう。」
「…アドバイス恐れ入る。だがあいにくとあんたは殺人鬼。犯罪者だ。何かそれを証明する根拠はあるのか?」
「ないですな。だがここでは他に情報はない。あなたは私の言葉を信用する以外ない。」
「…。」
安藤に一瞥をくれた後、秋山が、続いて竹田が出て行った。

「さて、西馬様。ようやく2人きりになれましたな。」
「…イカれた50半ばのおっさんと2人きりになれても嬉しかないね。できれば俺もその扉を通してもらいたいんだが。」
「そういう訳には参りませんな。あなたを残したのは訳がある。あなたも私に聞きたいことがおありでしょう?」
「訳ね…。大方、警察官の秋山じゃ敵わんと見て探偵の俺を残したんだろう。」
「いいえ。違います。まあ、その理由は後ほどお話しましょう。私を倒せたら、あなたの聞きたい事を全てお答えします。」
「そいつはいい条件だ。もし俺が負けたら?」
「そうですな。私の酒の肴になっていただきましょうか。」
「…笑えない冗談だ。」

俺は足をやや広げ、無防備のまま、奴を軸に時計回りに回り始めた。
奴は俺がボクシングを習っていた事を知らない。いくら何十人も殺したとはいえ、格闘技については素人のはず…。
奴はというと、ニヤニヤと余裕の笑みを浮かべながら、グルグル動く俺に常に正面を向けていた。どういうつもりかは知らんが、こちらとしては思うようにスキが突けずやりにくい。
…まあ、やりにくいとはいえ相手は老人だ。俺のジャブはかわせまい。
シュッ!と俺は短く息を、噛み締めた歯の間から吐き、安藤の顔めがけてジャブを打った。
「っ!?痛ッ…!」
打ったジャブには手応えがなかった。寸でのところで奴は避けたのだ。しかも…。
「お、俺の腕が…!」
引き戻した左腕の手首部分の肉が抉れている。安藤を見やると、口元をクチャクチャと動かしていた。俺の肉を喰いやがったんだ…!
「…これは失礼。何分悪食なものでね。君の肉は中々美味いぞ。…少しコーヒーの風味がするな。よく飲むのかね?」
「ほめられても嬉しかねえよ。コンチクショウ…!」
その後も、二連ジャブ、ワンツーとパンチを繰り出すも、安藤は僅かな挙動でこれを避け、その度に俺の腕を食いちぎっていった。
「くそっ…!なんで当たんねえんだ…!」
「ふふふ…。あなたは今とても焦っている。焦ると人間の視界は狭まり、行動は単調で読みやすい。自然、避けるのも容易になるというものだ。」
「くそっ!うるせえ!次こそ当ててやる!」
…両腕が痛え…。もたもたしてられないってのに…!これ以上何か打開策はないか?何か…!


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