記憶探偵の面倒な事件簿

hyui

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楽園編

闇レストランの噂

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バー「ナポレオン」…。
昼はコーヒー、夜は酒を取り扱う小洒落た店だ。割とマニアックなものも置いているので、コアな客が集まる。…俺もそのうちの一人ではあるんだが。
やや薄暗い店内とジャズの音楽が大人の雰囲気を醸し出す。お気に入りの一店だ。

例の安藤に関わる噂を知る人物とここで待ち合わせることになっている。
「あんたが陳さんの言っていた人か?」
…おいでなすった。
待ち合わせていた人物は少し歳のいったチンピラ。正直当てになるかどうかわからんが、噂程度でも今の俺はとにかく情報が欲しかった。
「…そうだ。路地裏で探偵をやってる西馬ってもんだ。よろしくな。」
「西馬…。聞き覚えあるぞ。何年か前、どこぞの組の下克上を阻止したとかいう…。」
「昔の話だ。あまり思い出したくない。それに今はそっちの筋の人とは商売してない。」
「どうだかなぁ。事実、今そっちの筋の俺と待ち合わせてたじゃないか。」
「…あんた、なかなか面白い人だな。」

組の下克上阻止の事件はアカリが持ち込んだ最初の依頼だった。思えばあれが運の尽きはじめか。
当時まだ表通りで事務所を開いていた頃、おじいさんが何事か困っているから助けてほしい!といきなりアカリがやって来たんだ。
俺、困惑。
じいさんも、困惑。
しかしアカリの勢いに負けて、俺もじいさんも小娘のワガママというか、気まぐれに協力する事になって…。なんやかんやでじいさんがとあるヤクザの組長なのが判明。さらに組の中で不穏な動きがあることが判明。俺の活躍で裏切り者判明。一件落着…で終わればよかったんだが、裏切り者の一派が俺のことを逆恨みし、事務所は荒らされるわ、命は狙われるわ…。そんなこんなで表では事務所を構えることができなくなり、都内の裏の裏まで追いやられた、俺にとっては嫌な思い出だ。(しかもドタバタが原因で依頼料はもらい損ねた。)

「…まあそれはともかく、陳さんから話は聞いてるな?安藤チヒロについての噂を聞きたいんだが。」
「ああ、安藤チヒロだな。俺の飲み仲間から聞いた話なんだが、奴は今レストランを経営してるそうなんだ。」
「レストラン?」
「そう、それもただのレストランじゃない。ありとあらゆる食材を使った会員限定の秘密レストランさ。名前は『ベルゼバブ』と言うんだとか。」
ベルゼバブ…。七つの大罪の一つで「暴食」を司る悪魔、か…。
「しかし殺人鬼がレストラン経営とは。ここんとこ事件が起きないのは、本当に丸くなったからなんだな…。」
「いや、どうだかな。ここだけの話、そのレストラン、人肉を使った料理も出すみたいだぜ。」
「人肉料理!?まさか…。」
「俺も行ったわけじゃないから真偽は分からんがね。でも安藤といえば、人肉を使った料理のレシピ本を残していたって話だろ?ありえなくはないんじゃねえかなあ。」
確かに…。需要があるかどうかはともかく、食人鬼の安藤がレストランを経営すれば自分がレシピで残した料理を商品として出してもおかしくない。
「なんなら、その友人に連れてってもらうか?入れるかどうかは知んねえけどよ。」
「ぜ、是非とも頼む!」

これで奴が生きている可能性はぐっと高まった。
果たして奴が経営しているというレストランはどんなものなのか?
人肉料理はあるのか?その人肉はどうやって調達してるのか?
様々な疑問を浮かべつつ、俺はそのチンピラの飲み仲間を紹介してもらう事にした…。
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