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終幕編
岩田襲来 高松の報せ
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陳さんの診療所内…。
ヒカルから引き続き話を聞いていた俺たちの元に、そいつは突然やってきた。
「大変だ!おい!」
勢いよく病室にやってきたのは高松。どこぞのヤクザの若頭で成龍のダンナの救出に協力してくれた。そんな男がなんだか珍しく焦った様子だ。
「ど、どうしたんだよ。」
「陳爺さんのセガレはどこだ!」
「成龍さんなら陳さんの病室だ。定期健診に…。」
「わかった!」
何も言わずに高松は立ち去ろうとする。相当急いでるらしい。
「ま、待てよ。何があったんだよ。」
「あいつが来やがったんだ!」
「あいつ?」
「岩田だよ。あの時のハゲ眼鏡の化け物がここにやって来やがったんだ!」
岩田……!
たしか成龍さんを救出する時に立ちはだかった黒服の大男だ。
銃で撃たれてもビクともしない。鉄のような体をもつまさにバケモノ。
それがまたこの診療所に来てるってのか…!
「今は住吉が止めてくれてる。奴の狙いは多分あのセガレだ。一刻も早くここから連れ出さないと…!」
「住吉って…。たしかあの人、片腕折れて使えないはずだろう!あのバケモノ相手じゃ殺されちまう!」
「それでも残ったんだよ!ホント、バカヤロウだよ…。くそっ…。」
苦々しい顔で吐き捨てるように言う高松。何か一悶着あったのか。
「とにかく、あんたらもここは危ない!早くこの場から離れるんだ!いいな!」
それだけ言うと、高松はまた駆け出していってしまった。
あの岩田がすぐそこまで来ている。
なんとかここから離れないと。正直、あんなバケモノを相手にするのはゴメンだ。
「さ、ヒカル。早いとこ移動しよう。その岩田とかいう奴に見つかったらあんたの妹…アカリを助けに向かうどころじゃなくなっちまう。」
「……。」
内心焦る俺とは裏腹に、ヒカルは何か考え込んでいた。
「どうしたんだ?」
「いや…。何故今このタイミングなんだろう、と思ってね。」
「え…。」
「彼…岩田を動かしているのが、闇クラブの首領の三島であるなら、何故まだ陳成龍を追う理由があるのか。」
「そりゃあ、裏切り者の粛清とかそういう…。」
「僕を誘き出そうとするこの肝心な時に?」
「……うーむ……。」
「何か変だ。何か、彼らの行動に辻褄が合わない気がする。」
「辻褄って?」
「それは……。」
ヒカルが口を開こうとした矢先、病室にまたしても来客が来た。
秋山と助手の須田だ。
「おい。聞いたか。すぐそこまであの岩田が来てるらしいぞ。」
「西馬さん、急いでここを離れましょう。」
俺と同じく移動を勧める二人。だがヒカルはそんな二人に待ったをかけた。
「皆、今しばらく動くのは待ってくれないか。」
「なんだと?」
「気になることがある。お願いだ。」
秋山、須田はしばし顔を見合わせ、俺に目配せしてきた。おおかた俺に判断を仰ぎたいんだろう。
俺も急ぎたいのが本心だが、しかしさっきのヒカルの言葉が気になるのも事実。
何が引っかかるのか。俺は明らかにしたかった。
「わかった。話を聞こう。」
「おい、西馬。そんな悠長なこと言ってられんぞ。」
秋山が横槍を入れてきたが俺の気持ちは変わらない。
「それは分かってる。ここに留まるのは危険だ。しかしこんな状況でヒカルは待てと言ったんだ。もしかしたら今下手に動くとさらに危険なことになる可能性がある。そうじゃないか?」
俺の問いにヒカルはうなづいた。
その反応を見て、秋山と須田もしぶしぶ腰を下ろした。
「……しゃあねえな。おら、とっとと言ってみろい。」
「ありがとう……。」
そう言ってヒカルは半身を起こして一呼吸おいた。
ヒカルから引き続き話を聞いていた俺たちの元に、そいつは突然やってきた。
「大変だ!おい!」
勢いよく病室にやってきたのは高松。どこぞのヤクザの若頭で成龍のダンナの救出に協力してくれた。そんな男がなんだか珍しく焦った様子だ。
「ど、どうしたんだよ。」
「陳爺さんのセガレはどこだ!」
「成龍さんなら陳さんの病室だ。定期健診に…。」
「わかった!」
何も言わずに高松は立ち去ろうとする。相当急いでるらしい。
「ま、待てよ。何があったんだよ。」
「あいつが来やがったんだ!」
「あいつ?」
「岩田だよ。あの時のハゲ眼鏡の化け物がここにやって来やがったんだ!」
岩田……!
たしか成龍さんを救出する時に立ちはだかった黒服の大男だ。
銃で撃たれてもビクともしない。鉄のような体をもつまさにバケモノ。
それがまたこの診療所に来てるってのか…!
「今は住吉が止めてくれてる。奴の狙いは多分あのセガレだ。一刻も早くここから連れ出さないと…!」
「住吉って…。たしかあの人、片腕折れて使えないはずだろう!あのバケモノ相手じゃ殺されちまう!」
「それでも残ったんだよ!ホント、バカヤロウだよ…。くそっ…。」
苦々しい顔で吐き捨てるように言う高松。何か一悶着あったのか。
「とにかく、あんたらもここは危ない!早くこの場から離れるんだ!いいな!」
それだけ言うと、高松はまた駆け出していってしまった。
あの岩田がすぐそこまで来ている。
なんとかここから離れないと。正直、あんなバケモノを相手にするのはゴメンだ。
「さ、ヒカル。早いとこ移動しよう。その岩田とかいう奴に見つかったらあんたの妹…アカリを助けに向かうどころじゃなくなっちまう。」
「……。」
内心焦る俺とは裏腹に、ヒカルは何か考え込んでいた。
「どうしたんだ?」
「いや…。何故今このタイミングなんだろう、と思ってね。」
「え…。」
「彼…岩田を動かしているのが、闇クラブの首領の三島であるなら、何故まだ陳成龍を追う理由があるのか。」
「そりゃあ、裏切り者の粛清とかそういう…。」
「僕を誘き出そうとするこの肝心な時に?」
「……うーむ……。」
「何か変だ。何か、彼らの行動に辻褄が合わない気がする。」
「辻褄って?」
「それは……。」
ヒカルが口を開こうとした矢先、病室にまたしても来客が来た。
秋山と助手の須田だ。
「おい。聞いたか。すぐそこまであの岩田が来てるらしいぞ。」
「西馬さん、急いでここを離れましょう。」
俺と同じく移動を勧める二人。だがヒカルはそんな二人に待ったをかけた。
「皆、今しばらく動くのは待ってくれないか。」
「なんだと?」
「気になることがある。お願いだ。」
秋山、須田はしばし顔を見合わせ、俺に目配せしてきた。おおかた俺に判断を仰ぎたいんだろう。
俺も急ぎたいのが本心だが、しかしさっきのヒカルの言葉が気になるのも事実。
何が引っかかるのか。俺は明らかにしたかった。
「わかった。話を聞こう。」
「おい、西馬。そんな悠長なこと言ってられんぞ。」
秋山が横槍を入れてきたが俺の気持ちは変わらない。
「それは分かってる。ここに留まるのは危険だ。しかしこんな状況でヒカルは待てと言ったんだ。もしかしたら今下手に動くとさらに危険なことになる可能性がある。そうじゃないか?」
俺の問いにヒカルはうなづいた。
その反応を見て、秋山と須田もしぶしぶ腰を下ろした。
「……しゃあねえな。おら、とっとと言ってみろい。」
「ありがとう……。」
そう言ってヒカルは半身を起こして一呼吸おいた。
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