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終幕編
診療所にて 三島の野望
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日本からの独立、軍国主義の復活、第三次世界大戦……。
闇クラブ最期の相手“サタン”の総統である三島はそんなことを企んでいるらしい。なんだかとんでもなさすぎて違う世界の話のような感じだ。
「流石の君も驚いたかい?」
「ああ…。まあ…。」
正直、嘘みたいな話だ。
平和な日本の片隅で、一個人が国の独立を企んでるなんて……。
「……ありえない。」
「うん?」
「ありえないよ。日本から独立した国を立ち上げるなんて、普通に考えて可能なもんか?」
「できるよ。」
あまりにヒカルが即答したもんで、俺は少々面食らった。
「そ、そうなのか?」
「うん。世界的に見たって、国の独立した事例はいくつもある。ひと昔前には『吉里吉里人』という小説で日本の一地方が独立宣言をする話が書かれていた事だってある。ギャグテイストながらかなりリアルにね。つまり、条件さえ揃えば、決して不可能な話じゃないのさ。」
「へえ……。そんなもんなのか。」
「もちろん、そう簡単にできるもんじゃないけどね。国として独立するには様々な要素が必要だ。実はそれらの要素を担っていたのが闇クラブだったんだ。」
「闇クラブが……?」
ヒカルはうなづき、さらに説明を続けた。
「国が国として機能するのに必要な要素は、一定の国土、人民、さらに加えて、食糧、医療、国防、外交、経済、おまけで娯楽……。思い返して見てほしい。僕や君たちが相手にしてきた闇クラブの面々を。」
……確かにそう言われてみれば。
レストラン「ベルゼブ」は「食糧」を、美容クラブ「レヴィアタン」、麻薬クラブ「ベルフェゴール」は「医療」、風俗クラブ「アスモデウス」は「娯楽」、各クラブの警備等を任される「ルシフェル」は「国防」、カジノクラブ「マモン」は「経済」の要素をそれぞれ含んでいた。これらが大きく発展していれば、なるほど、国として機能していたのかもしれない。……とはいえ、闇クラブのオーナーの面々はそんなご大層な大義を掲げているようには見えなかった。恐らく国家独立というのは、三島とやらの独りよがりな理想だったのだろう。
「さらに加えて……つい先ほどなんだが、成龍から彼の野望のための駒がもう一つ揃った、という話を聞いた。」
「野望のための駒……。アカリのことか!」
魔眼を持つヒカルがボスにいる事で闇クラブは隆盛を誇っていた。ならばそれに成りかわる存在があれば、もう一度闇クラブは元の権威を取り戻せると考えているのでは…。
しかしヒカルは首を横に振った。
「いいや。おそらくアカリはあくまで僕をおびき出す餌だ。切り札は別にある。考えてもみてくれ。魔眼をあてにして国を建てたところで大軍が押し寄せてきたらどうしようもない。」
「それじゃ駒って一体…。」
「政府からも他の国からも簡単には手が出せなくなるようなもの。それそのものが脅威になるようなもの、だよ。」
「……?」
簡単には手が出せなくなるもの……?なんだろう?魔眼以上に恐ろしいもの。そんなバケモンみたいなモンがあるんだろうか?
「…なんなんだ。そりゃ一体?勿体ぶらずに教えてくれ。」
「“核兵器”さ。」
「か…カクカク…⁉︎」
唐突にとんでもないワードが出たもんで、思わずしどろもどろになる俺。一呼吸置いてから、もう一度問い直してみた。
「か、核兵器だと⁉︎なんだってそんな物騒なもんを…?」
「さっきも言った通り、他の国や政府に手を出させないためさ。核抑止の理論は知ってるかい?核の脅威を知っているが故に、核兵器を持っていさえすれば使用する恐れがある以上手が出せない。結果、それが抑止力となって容易に武力による制圧ができなくなる、というものだ。三島はそれを手に入れ、最後の駒、抑止力を手に入れた。」
「無茶苦茶だ…!第一、そんなもん個人が手に入れられるわけない…!」
「できるさ。今や核兵器を作るレシピも技術者も出回ってる時代だ。金さえ積めば、不可能じゃない。もっとも、その為には途方も無い金が必要だけどね。……さっき成龍から聞いたんだ。お買い物は既に終わってると。もう、間違いないだろう。」
「そんな……!なんだってその三島って奴はそんなことを……!」
「全ては“日本の権威の復活”のため……だそうだ。たしか、現役の政治家時代の彼の持論だったね。……ある意味で、純粋な奴さ。全く……。」
なんてこった……。嘘みたいだと思っていた三島の野望の話が現実味を帯びてきた。平和な日本が今、戦火の危機に晒されようとしている……。
闇クラブ最期の相手“サタン”の総統である三島はそんなことを企んでいるらしい。なんだかとんでもなさすぎて違う世界の話のような感じだ。
「流石の君も驚いたかい?」
「ああ…。まあ…。」
正直、嘘みたいな話だ。
平和な日本の片隅で、一個人が国の独立を企んでるなんて……。
「……ありえない。」
「うん?」
「ありえないよ。日本から独立した国を立ち上げるなんて、普通に考えて可能なもんか?」
「できるよ。」
あまりにヒカルが即答したもんで、俺は少々面食らった。
「そ、そうなのか?」
「うん。世界的に見たって、国の独立した事例はいくつもある。ひと昔前には『吉里吉里人』という小説で日本の一地方が独立宣言をする話が書かれていた事だってある。ギャグテイストながらかなりリアルにね。つまり、条件さえ揃えば、決して不可能な話じゃないのさ。」
「へえ……。そんなもんなのか。」
「もちろん、そう簡単にできるもんじゃないけどね。国として独立するには様々な要素が必要だ。実はそれらの要素を担っていたのが闇クラブだったんだ。」
「闇クラブが……?」
ヒカルはうなづき、さらに説明を続けた。
「国が国として機能するのに必要な要素は、一定の国土、人民、さらに加えて、食糧、医療、国防、外交、経済、おまけで娯楽……。思い返して見てほしい。僕や君たちが相手にしてきた闇クラブの面々を。」
……確かにそう言われてみれば。
レストラン「ベルゼブ」は「食糧」を、美容クラブ「レヴィアタン」、麻薬クラブ「ベルフェゴール」は「医療」、風俗クラブ「アスモデウス」は「娯楽」、各クラブの警備等を任される「ルシフェル」は「国防」、カジノクラブ「マモン」は「経済」の要素をそれぞれ含んでいた。これらが大きく発展していれば、なるほど、国として機能していたのかもしれない。……とはいえ、闇クラブのオーナーの面々はそんなご大層な大義を掲げているようには見えなかった。恐らく国家独立というのは、三島とやらの独りよがりな理想だったのだろう。
「さらに加えて……つい先ほどなんだが、成龍から彼の野望のための駒がもう一つ揃った、という話を聞いた。」
「野望のための駒……。アカリのことか!」
魔眼を持つヒカルがボスにいる事で闇クラブは隆盛を誇っていた。ならばそれに成りかわる存在があれば、もう一度闇クラブは元の権威を取り戻せると考えているのでは…。
しかしヒカルは首を横に振った。
「いいや。おそらくアカリはあくまで僕をおびき出す餌だ。切り札は別にある。考えてもみてくれ。魔眼をあてにして国を建てたところで大軍が押し寄せてきたらどうしようもない。」
「それじゃ駒って一体…。」
「政府からも他の国からも簡単には手が出せなくなるようなもの。それそのものが脅威になるようなもの、だよ。」
「……?」
簡単には手が出せなくなるもの……?なんだろう?魔眼以上に恐ろしいもの。そんなバケモンみたいなモンがあるんだろうか?
「…なんなんだ。そりゃ一体?勿体ぶらずに教えてくれ。」
「“核兵器”さ。」
「か…カクカク…⁉︎」
唐突にとんでもないワードが出たもんで、思わずしどろもどろになる俺。一呼吸置いてから、もう一度問い直してみた。
「か、核兵器だと⁉︎なんだってそんな物騒なもんを…?」
「さっきも言った通り、他の国や政府に手を出させないためさ。核抑止の理論は知ってるかい?核の脅威を知っているが故に、核兵器を持っていさえすれば使用する恐れがある以上手が出せない。結果、それが抑止力となって容易に武力による制圧ができなくなる、というものだ。三島はそれを手に入れ、最後の駒、抑止力を手に入れた。」
「無茶苦茶だ…!第一、そんなもん個人が手に入れられるわけない…!」
「できるさ。今や核兵器を作るレシピも技術者も出回ってる時代だ。金さえ積めば、不可能じゃない。もっとも、その為には途方も無い金が必要だけどね。……さっき成龍から聞いたんだ。お買い物は既に終わってると。もう、間違いないだろう。」
「そんな……!なんだってその三島って奴はそんなことを……!」
「全ては“日本の権威の復活”のため……だそうだ。たしか、現役の政治家時代の彼の持論だったね。……ある意味で、純粋な奴さ。全く……。」
なんてこった……。嘘みたいだと思っていた三島の野望の話が現実味を帯びてきた。平和な日本が今、戦火の危機に晒されようとしている……。
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