178 / 188
終幕編
診療所にて 三島の野望
しおりを挟む
日本からの独立、軍国主義の復活、第三次世界大戦……。
闇クラブ最期の相手“サタン”の総統である三島はそんなことを企んでいるらしい。なんだかとんでもなさすぎて違う世界の話のような感じだ。
「流石の君も驚いたかい?」
「ああ…。まあ…。」
正直、嘘みたいな話だ。
平和な日本の片隅で、一個人が国の独立を企んでるなんて……。
「……ありえない。」
「うん?」
「ありえないよ。日本から独立した国を立ち上げるなんて、普通に考えて可能なもんか?」
「できるよ。」
あまりにヒカルが即答したもんで、俺は少々面食らった。
「そ、そうなのか?」
「うん。世界的に見たって、国の独立した事例はいくつもある。ひと昔前には『吉里吉里人』という小説で日本の一地方が独立宣言をする話が書かれていた事だってある。ギャグテイストながらかなりリアルにね。つまり、条件さえ揃えば、決して不可能な話じゃないのさ。」
「へえ……。そんなもんなのか。」
「もちろん、そう簡単にできるもんじゃないけどね。国として独立するには様々な要素が必要だ。実はそれらの要素を担っていたのが闇クラブだったんだ。」
「闇クラブが……?」
ヒカルはうなづき、さらに説明を続けた。
「国が国として機能するのに必要な要素は、一定の国土、人民、さらに加えて、食糧、医療、国防、外交、経済、おまけで娯楽……。思い返して見てほしい。僕や君たちが相手にしてきた闇クラブの面々を。」
……確かにそう言われてみれば。
レストラン「ベルゼブ」は「食糧」を、美容クラブ「レヴィアタン」、麻薬クラブ「ベルフェゴール」は「医療」、風俗クラブ「アスモデウス」は「娯楽」、各クラブの警備等を任される「ルシフェル」は「国防」、カジノクラブ「マモン」は「経済」の要素をそれぞれ含んでいた。これらが大きく発展していれば、なるほど、国として機能していたのかもしれない。……とはいえ、闇クラブのオーナーの面々はそんなご大層な大義を掲げているようには見えなかった。恐らく国家独立というのは、三島とやらの独りよがりな理想だったのだろう。
「さらに加えて……つい先ほどなんだが、成龍から彼の野望のための駒がもう一つ揃った、という話を聞いた。」
「野望のための駒……。アカリのことか!」
魔眼を持つヒカルがボスにいる事で闇クラブは隆盛を誇っていた。ならばそれに成りかわる存在があれば、もう一度闇クラブは元の権威を取り戻せると考えているのでは…。
しかしヒカルは首を横に振った。
「いいや。おそらくアカリはあくまで僕をおびき出す餌だ。切り札は別にある。考えてもみてくれ。魔眼をあてにして国を建てたところで大軍が押し寄せてきたらどうしようもない。」
「それじゃ駒って一体…。」
「政府からも他の国からも簡単には手が出せなくなるようなもの。それそのものが脅威になるようなもの、だよ。」
「……?」
簡単には手が出せなくなるもの……?なんだろう?魔眼以上に恐ろしいもの。そんなバケモンみたいなモンがあるんだろうか?
「…なんなんだ。そりゃ一体?勿体ぶらずに教えてくれ。」
「“核兵器”さ。」
「か…カクカク…⁉︎」
唐突にとんでもないワードが出たもんで、思わずしどろもどろになる俺。一呼吸置いてから、もう一度問い直してみた。
「か、核兵器だと⁉︎なんだってそんな物騒なもんを…?」
「さっきも言った通り、他の国や政府に手を出させないためさ。核抑止の理論は知ってるかい?核の脅威を知っているが故に、核兵器を持っていさえすれば使用する恐れがある以上手が出せない。結果、それが抑止力となって容易に武力による制圧ができなくなる、というものだ。三島はそれを手に入れ、最後の駒、抑止力を手に入れた。」
「無茶苦茶だ…!第一、そんなもん個人が手に入れられるわけない…!」
「できるさ。今や核兵器を作るレシピも技術者も出回ってる時代だ。金さえ積めば、不可能じゃない。もっとも、その為には途方も無い金が必要だけどね。……さっき成龍から聞いたんだ。お買い物は既に終わってると。もう、間違いないだろう。」
「そんな……!なんだってその三島って奴はそんなことを……!」
「全ては“日本の権威の復活”のため……だそうだ。たしか、現役の政治家時代の彼の持論だったね。……ある意味で、純粋な奴さ。全く……。」
なんてこった……。嘘みたいだと思っていた三島の野望の話が現実味を帯びてきた。平和な日本が今、戦火の危機に晒されようとしている……。
闇クラブ最期の相手“サタン”の総統である三島はそんなことを企んでいるらしい。なんだかとんでもなさすぎて違う世界の話のような感じだ。
「流石の君も驚いたかい?」
「ああ…。まあ…。」
正直、嘘みたいな話だ。
平和な日本の片隅で、一個人が国の独立を企んでるなんて……。
「……ありえない。」
「うん?」
「ありえないよ。日本から独立した国を立ち上げるなんて、普通に考えて可能なもんか?」
「できるよ。」
あまりにヒカルが即答したもんで、俺は少々面食らった。
「そ、そうなのか?」
「うん。世界的に見たって、国の独立した事例はいくつもある。ひと昔前には『吉里吉里人』という小説で日本の一地方が独立宣言をする話が書かれていた事だってある。ギャグテイストながらかなりリアルにね。つまり、条件さえ揃えば、決して不可能な話じゃないのさ。」
「へえ……。そんなもんなのか。」
「もちろん、そう簡単にできるもんじゃないけどね。国として独立するには様々な要素が必要だ。実はそれらの要素を担っていたのが闇クラブだったんだ。」
「闇クラブが……?」
ヒカルはうなづき、さらに説明を続けた。
「国が国として機能するのに必要な要素は、一定の国土、人民、さらに加えて、食糧、医療、国防、外交、経済、おまけで娯楽……。思い返して見てほしい。僕や君たちが相手にしてきた闇クラブの面々を。」
……確かにそう言われてみれば。
レストラン「ベルゼブ」は「食糧」を、美容クラブ「レヴィアタン」、麻薬クラブ「ベルフェゴール」は「医療」、風俗クラブ「アスモデウス」は「娯楽」、各クラブの警備等を任される「ルシフェル」は「国防」、カジノクラブ「マモン」は「経済」の要素をそれぞれ含んでいた。これらが大きく発展していれば、なるほど、国として機能していたのかもしれない。……とはいえ、闇クラブのオーナーの面々はそんなご大層な大義を掲げているようには見えなかった。恐らく国家独立というのは、三島とやらの独りよがりな理想だったのだろう。
「さらに加えて……つい先ほどなんだが、成龍から彼の野望のための駒がもう一つ揃った、という話を聞いた。」
「野望のための駒……。アカリのことか!」
魔眼を持つヒカルがボスにいる事で闇クラブは隆盛を誇っていた。ならばそれに成りかわる存在があれば、もう一度闇クラブは元の権威を取り戻せると考えているのでは…。
しかしヒカルは首を横に振った。
「いいや。おそらくアカリはあくまで僕をおびき出す餌だ。切り札は別にある。考えてもみてくれ。魔眼をあてにして国を建てたところで大軍が押し寄せてきたらどうしようもない。」
「それじゃ駒って一体…。」
「政府からも他の国からも簡単には手が出せなくなるようなもの。それそのものが脅威になるようなもの、だよ。」
「……?」
簡単には手が出せなくなるもの……?なんだろう?魔眼以上に恐ろしいもの。そんなバケモンみたいなモンがあるんだろうか?
「…なんなんだ。そりゃ一体?勿体ぶらずに教えてくれ。」
「“核兵器”さ。」
「か…カクカク…⁉︎」
唐突にとんでもないワードが出たもんで、思わずしどろもどろになる俺。一呼吸置いてから、もう一度問い直してみた。
「か、核兵器だと⁉︎なんだってそんな物騒なもんを…?」
「さっきも言った通り、他の国や政府に手を出させないためさ。核抑止の理論は知ってるかい?核の脅威を知っているが故に、核兵器を持っていさえすれば使用する恐れがある以上手が出せない。結果、それが抑止力となって容易に武力による制圧ができなくなる、というものだ。三島はそれを手に入れ、最後の駒、抑止力を手に入れた。」
「無茶苦茶だ…!第一、そんなもん個人が手に入れられるわけない…!」
「できるさ。今や核兵器を作るレシピも技術者も出回ってる時代だ。金さえ積めば、不可能じゃない。もっとも、その為には途方も無い金が必要だけどね。……さっき成龍から聞いたんだ。お買い物は既に終わってると。もう、間違いないだろう。」
「そんな……!なんだってその三島って奴はそんなことを……!」
「全ては“日本の権威の復活”のため……だそうだ。たしか、現役の政治家時代の彼の持論だったね。……ある意味で、純粋な奴さ。全く……。」
なんてこった……。嘘みたいだと思っていた三島の野望の話が現実味を帯びてきた。平和な日本が今、戦火の危機に晒されようとしている……。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる