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離愁編
血戦!マモン 鬼の頼み
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「お、俺にどうしろってんだ?」
自分でも声が震えているのが分かる。それほどに今の住吉には見るものを恐れさせる迫力があった。まさに「鬼気」迫るといった感じだ。
「お前に……一つ俺から依頼したい。」
そう言って、住吉は懐から何かを俺に手渡した。彼の血にまみれたくしゃくしゃの紙幣だった。
「これは……。」
「……依頼料だ。こんな汚ねえ金ですまないが、今はこれしか手元にない。この金で、俺からの依頼を受けてほしい。……頼めるか?」
……住吉が俺の手を握った途端、彼の記憶が流れ込んで来た。
彼の頭の中にあった映像、それは陳さんとの記憶の断片であった。
悪戯っぽく笑う顔、厳しい顔で叱りつける顔、哀しげに涙を流す顔、優しく微笑みかける顔……。
そんな彼の陳さんの無数の記憶の映像が、俺の瞼に映し込まれるのだった。
……それだけで彼がどれだけ陳さんを大事に思っているのか、よく分かる。断る理由はない。
俺はその金を受け取り、何も言わずに頷いた。
「……ありがとよ。」
本当に、嬉しそうに、住吉はその時だけニッコリと笑いかけてくれた。
「俺から依頼したいことはただ一つ。ここから逃した陳の爺さんの息子の護衛だ。あの岩田を俺が食い止めてる間にあそこの抜け穴から後を追いかけてくれ。多分……まだそんな遠くには行ってないはずだ。」
住吉はあくまで成龍氏を陳さんの元に送りたいらしい。実直な彼らしい依頼といえばらしいが、しかし……。
「あの男を食い止めるって……そんな体でどうやって?」
「それは……なんとかする。」
……なるほど。ノープランって訳ね。
困った顔をした住吉を見かねてか、高松が割り込んで来た。
「大丈夫だ。俺もここに残る。俺と一緒なら、無茶はさせねえ。」
「……余計なことを。」
「別にいいだろ?なんやかやで俺たちゃ腐れ縁じゃねえか。カッカッカ……!」
ブスッとした顔の住吉を、いつもの調子で高松が笑う。その様子は抗争中のヤクザというより、まるで古くからの友人同士のやり取りを見ているようだった。
「話はまとまったか?」痺れを切らしたのか、岩田が遠くから横槍を入れてきた。「何をするか知らんが、やるならとっととかかって来い。」
「へっ……。言われずとも……!」
いうや否や、住吉は岩田に向かって突進し、その巨体をぶちかました。咄嗟に反応できなかったのか、岩田はこれをもろに喰らい後方へと吹っ飛んでいく。
「よし…!今だ!行け!」
「お、おう!」
促されるまま、俺と秋山は成龍氏の出ていった穴へと向かった。途中、俺は振り返って高松と住吉へ叫んだ。
「息子さんは俺たちが必ず連れ帰る!あんたたちも死なないでくれよ!」
遠くに見える二人は俺たちに向けて親指を立てて応えた。
……よし、行こう。グズグズはしていられない。
「行くぜ。秋山。」
「ああ。」
陳さんの息子、成龍氏の元まであと一歩。
帰りを待つ陳さんの為にも、道を開いてくれた高松、住吉の為にも、なんとしても彼を無事に連れ帰らなければ……!
自分でも声が震えているのが分かる。それほどに今の住吉には見るものを恐れさせる迫力があった。まさに「鬼気」迫るといった感じだ。
「お前に……一つ俺から依頼したい。」
そう言って、住吉は懐から何かを俺に手渡した。彼の血にまみれたくしゃくしゃの紙幣だった。
「これは……。」
「……依頼料だ。こんな汚ねえ金ですまないが、今はこれしか手元にない。この金で、俺からの依頼を受けてほしい。……頼めるか?」
……住吉が俺の手を握った途端、彼の記憶が流れ込んで来た。
彼の頭の中にあった映像、それは陳さんとの記憶の断片であった。
悪戯っぽく笑う顔、厳しい顔で叱りつける顔、哀しげに涙を流す顔、優しく微笑みかける顔……。
そんな彼の陳さんの無数の記憶の映像が、俺の瞼に映し込まれるのだった。
……それだけで彼がどれだけ陳さんを大事に思っているのか、よく分かる。断る理由はない。
俺はその金を受け取り、何も言わずに頷いた。
「……ありがとよ。」
本当に、嬉しそうに、住吉はその時だけニッコリと笑いかけてくれた。
「俺から依頼したいことはただ一つ。ここから逃した陳の爺さんの息子の護衛だ。あの岩田を俺が食い止めてる間にあそこの抜け穴から後を追いかけてくれ。多分……まだそんな遠くには行ってないはずだ。」
住吉はあくまで成龍氏を陳さんの元に送りたいらしい。実直な彼らしい依頼といえばらしいが、しかし……。
「あの男を食い止めるって……そんな体でどうやって?」
「それは……なんとかする。」
……なるほど。ノープランって訳ね。
困った顔をした住吉を見かねてか、高松が割り込んで来た。
「大丈夫だ。俺もここに残る。俺と一緒なら、無茶はさせねえ。」
「……余計なことを。」
「別にいいだろ?なんやかやで俺たちゃ腐れ縁じゃねえか。カッカッカ……!」
ブスッとした顔の住吉を、いつもの調子で高松が笑う。その様子は抗争中のヤクザというより、まるで古くからの友人同士のやり取りを見ているようだった。
「話はまとまったか?」痺れを切らしたのか、岩田が遠くから横槍を入れてきた。「何をするか知らんが、やるならとっととかかって来い。」
「へっ……。言われずとも……!」
いうや否や、住吉は岩田に向かって突進し、その巨体をぶちかました。咄嗟に反応できなかったのか、岩田はこれをもろに喰らい後方へと吹っ飛んでいく。
「よし…!今だ!行け!」
「お、おう!」
促されるまま、俺と秋山は成龍氏の出ていった穴へと向かった。途中、俺は振り返って高松と住吉へ叫んだ。
「息子さんは俺たちが必ず連れ帰る!あんたたちも死なないでくれよ!」
遠くに見える二人は俺たちに向けて親指を立てて応えた。
……よし、行こう。グズグズはしていられない。
「行くぜ。秋山。」
「ああ。」
陳さんの息子、成龍氏の元まであと一歩。
帰りを待つ陳さんの為にも、道を開いてくれた高松、住吉の為にも、なんとしても彼を無事に連れ帰らなければ……!
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