記憶探偵の面倒な事件簿

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離愁編

血戦!マモン その男、住吉

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「それにしても……おまわりさん、あんたの腕っ節には驚いたな。」
「あん?」
陳成龍を探すため、「ブラックバンク」を探索する中、高松が秋山を見て言った。
「あの黒服連中を一人で、しかも素手で吹っ飛ばすなんてよ。いや恐れいったぜ。」
「ふん……。ヤクザに褒められても嬉しくもなんともない。」
秋山はムスッとした仏頂面で答えた。……あの高松の強引な策にはノリノリだったくせに……。
「カカカ…!ま、そう照れんなよ。しっかしあんたのあの暴れっぷりはなんか住吉の奴を間近で見てるみたいだなぁ。」
「住吉?」

住吉……というと、あの陳さんにつきっきりで介抱していたあの無口なコワモテヤクザか。

「ああ。住吉はあんたみたいにバケモンみたいな強さでよ。しかも信じられないことに、常に素手喧嘩スデゴロなんだよ。相手が銃を持ってようが御構い無しにな。」
「へえ…。」
「俺が頭でのし上がったが、住吉あいつは純粋な腕っぷしでのし上がった。“鬼の住吉”といえば俺らの業界じゃちょっとした伝説さ。」
「“鬼の住吉”……か。」

俺は住吉という男を今一度思い返していた。
無口で無愛想でコワモテ、という特徴はたしかに鬼だ。だがあの老体の陳さんをいたわる姿などから、俺にとっては鬼というより不器用で根は優しい奴、という印象だった。

「……あいつもここに来ていれば心強いんだがな。」
「連絡は取り合ってないのか?」
「無理だ。そもそもあいつの組とは敵対関係なんだ。仲良く連絡なんぞ取り合う訳ねえ。そもそもあいつは群れるより一人で勝手気ままに動く方が好きな一匹狼のタイプだ。一緒に団体行動なんざ、どだい無理な話だ。」
「一匹狼ねえ……。」
「ま、来てるとしたら今頃一人で乗り込んで、黒服相手に喧嘩仕掛けてるだろうよ。」



同時刻……。
ブラックバンクに右方向から突入した別働隊。
彼らは待ち構えていたルシフェルの黒服たちによって全滅させられていた。死屍累々と横たわる様は、まるで地獄絵図である。
「……これでここの侵入者は始末したな。」
「そうだな。しかし信じがたい話だが連絡によると正面口からの侵入者を迎え撃った奴らが壊滅させられたらしい。」
「何⁉︎それは本当か⁉︎」
「同行していた奴らとも連絡が取れんからおそらく間違いないだろう。援護に回るぞ。」
侵入者の全滅を確認し、ルシフェルの黒服は次の行動へと移ろうとしていた……。


「おい。」


背後から突然の男の声が聞こえたかと思うと、衝撃音と共に黒服が一人後方へ吹き飛ばされる。
「な、何だ⁉︎新手か!」
彼らは身構えて背後の敵を確認した。
そこには一人の大柄な男がポケットに片手を突っ込んで立っていた。ギラギラと鬼気迫る眼光から、この男が只者ではないことは容易に感じ取れた。
黒服たちは銃を構えて男に尋ねる。
「……な、なんだ。貴様は。こいつらの仲間か。」
「……いや。同業者だが、仲間ではない。」
「じゃあ一体何の用だ!」
「……人探しに来た。」
そう言うと男は懐から一枚の写真を取り出し、黒服たちに見せた。
「『陳成龍』という男だ。ここにいるらしいときいたんだが?」
「……知らん。知っていても喋る訳がないだろう。とっとと帰れ。」
「そうかい……。しゃあねえな……。」

男は頭をうなだれたと思うと、身体をゆらりとさながら陽炎のように揺らし、一瞬にして黒服の一人の懐に潜り込んだ。

「!」
とっさにその黒服は身構えたが時すでに遅し。男はその黒服の首を片手で捉え締めあげる。
「き、貴様…!」
他の黒服は持っていた銃を男に向けて発砲し応戦した。しかし男は締めあげた黒服を盾代わりにしてこの銃撃を防ぐ。そして弾が撃ち止めになったと見るや、蜂の巣になった黒服を放り投げ、一人、また一人と殴り飛ばしていった。
そして最後の一人を抱え上げると、男は詰問する。
「さあ、陳成龍の居場所を言え。」
「ぐ……!」
「答えないとこのままお前の首をへし折るぞ。」
「だ…誰が言うか……!」
「……強情な奴だ。もういい。自分で探す。」
男は黒服の首を掴むと渾身の力を込めはじめた。ゴキリ、となにかが折れた音がした後、最後の黒服は糸の切れた人形のように両腕をだらりと垂らし、事切れた。


「……さて、では探すとするか。じじいの息子、無事にいるといいが……。」
黒服の迎撃を難なく退け、その男、住吉はブラックバンクの探索を開始した……。
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