破滅の足音

hyui

文字の大きさ
29 / 36

ゲノムカード制度

しおりを挟む
政府からこの度新しい制度が発表された。マイナンバーに変わり、ゲノムカードというものが発行されるというのだ。
このゲノムカードは、個人の遺伝子を識別してその個人のあらゆる情報を一括で管理できるカードらしい。

「そんなもん、本当に必要なのかね?」
Aは新しい制度の必要性について疑問を抱いていた。
「さあなぁ。お上の考えることはようわからん。」
Bも同調する。
「以前のマイナンバーも、実際あまり便利とは感じなかったぜ。当時は役所の手続きが便利になりますよ~みたいなこと言ってたけどよ。」
「まあ、こっち側の便利さは建前で、裏には別の狙いがあるんじゃないか?」
「別の狙いって?どんな狙いだよ。」
「俺が知るわけないだろ?」
 「それもそうだな…。っと、俺たちの番らしい。」

新制度導入に際して、政府は各地にゲノムカード作成所を開いていた。ゲノムカードを使わなければ、今後様々な役所手続きができないことから、全国民は従わざるを得なかった。

「ゲノムカード作成、はんたーい!ゲノムカード作成、はんたーい!」
会場の近くではプラカードを持ったデモ団体が叫んでいる。
「なんだありゃ?」
「今回の制度改革に反対のデモ団体だよ。個人の遺伝子まで管理されるのが気に入らんらしい。」
「ご苦労なことだねぇ…。」
「さ、お前の番が来たぜ。」
「おっと、はいはいはい…。」

「カード検査の方、こちらへどうぞ。」
検査会場では様々な検査がなされた。
血液検査、指紋照合、網膜、骨髄の採取などなど…。
「随分色んな検査するんですねぇ。」
「すべてゲノムカードの情報を確かなものにするためです。お疲れ様でした。粗品をどうぞ。」
「はあ、どうも…。」 
粗品のタオルを受け取って、Aは会場を後にした。

検査から一時間程して、ゲノムカードは発行された。
「お待たせしました。こちらになります。」
ゲノムカードはキャッシュカードほどの大きさで、銀色の無地のデザインだった。
「これで何がどう便利になるんすかねぇ…。」
「はい。あなたについての住所、血液型などの情報がこのカードに一括で保存されます。この情報は同一の遺伝子でしか閲覧できないため、万一紛失された場合も悪用されることはありません。」
「ふむふむ。」
「また、あなたの遺伝子情報がスマホと連動し、あなたにオススメの商品情報などが表示されるようになります。あなたが潜在的に欲しいと思う情報が見つかりますよ。」
「へえ。そりゃ、面白そうだな。」
「どうぞ。大事に保管して下さい。」
新しい制度に期待を抱きつつ、Aは会場を後にした。




制度改革から10年…。
Aはゲノムカード機能に依存していた。
スマホにはゲノムカードからのオススメ情報が出ている。
『あなたにオススメの料理です。さっそく食べてみましょう。』
「お、今日はこの料理か。いいね。さすが遺伝子連動システム。俺が求めるものをよく分かってる。」
Aの身の回りはゲノムカードがオススメするものばかりになっていた。
オススメの服、オススメの家具、オススメの物件…。
Aはもう深く考えることもなく、そのオススメのものを選び続けていた。
『あなたにオススメの議員です。この方に投票しましょう。』
「へえ。とうとう議員までオススメし始めたな。ま、俺の遺伝子が求めてるんだ。この人に間違いないんだろう。」
Aはその議員に投票することに決めた…。


「ゲノムカード計画の方はどうなっている?」
「順調に進行中です。国民はゲノムカードの情報に依存し、すべてその指示通りに動いています。」
「計画通りだな。これで国民はなにも考えず、盲目的にゲノムカードを信じるようになった。我々にとって都合の良いように世論を動かすこともできる。国民は遺伝子が求めてるんだと疑問にも思わない。我々の意のままだ…。」
政府の高官たちは愚かな民衆を嘲笑い続けた…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...