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第一章
第二話「特別な贈り物」
しおりを挟むあれから数分が経つ。
民の不安から生み出された少年は拳を強く握り締めながら、下を向いている。
これはすぐに決断しなければならない。
俺を呼び出した理由として一番妥当なのは美味しい食べ物が作れる人だったわけだ。
まあ、それが俺なのがびっくりなのだが。
俺はあぐらをかきながら頬を指先でかきながら少年を見つめた。
「ああ、わかったわかった!俺がその世界の人を救えばいいんだろう?」
俺は肩を少し上げて小さくため息をついた。
ここまで誰かに頼られたことがない俺としては少し嬉しい気持ちでもあったからだ。
俺は少年の拳を軽く両手で覆いながら優しい口調で話しかけた。
「そんな顔するなって、俺にできることがあれば言ってくれ」
そう告げると、少年は顔を上げて信じられないという顔をした。
普通なら帰してくれや、勝手にしろって言う人が多いだろうけど、俺はそこまで心がさみしい人間ではない。
できることなら、なんでもする。
というか、この世界に連れてきたのはお前だろう?
なんでそんな顔をするのかそっちのほうが不思議だった。
「そっかそっか!じゃあ、お兄さんにとっておきのプレゼントを贈るよ!」
両手を万歳するように天に向かって伸ばしながら嬉しそうに、にこやかに笑う姿が瞳に映し出されている。
少年は自分の口元に両手を持ってきて合掌するポーズのまま息を吹きかけた。
そして目の前に現れたのは大きな包が5つ地面に並んでいた。
なにこれ!?
一瞬にして包が出て来るとは思いもしなかった。
「お兄さん、ラッキーだよ!僕からの贈り物はこの5つだよ!」
俺の手をつかみながら急かすようにその包に触れさせた。
一瞬にして包みの中身が出たと思ったらそこには何やら文字が浮かび上がっていた。
「ん?生産スキル?こっちは、鑑定スキルにアイテムボックス……、え、これ小虎?それも黒い!」
俺はすべての包みを開けて口々に一番印象に残っている記憶だけを呟いた。
ただ、最後の贈り物の意味がわからなかった。
俺はその贈り物と少年を交互に見つめながら首をかしげた。
「へへっ、最後の贈り物はこの僕だね」
贈り物が少年ってどういうことだよ?
意味が分からずじまいの俺は腕を組みながら、目を細くさせてじっと少年を見つめた。
というか、こいつ使えるのか?
「失敬な!僕はこれでも神様だよ?まあ、不安の神様だけどねー」
俺何も言ってないのに、どうやって考えていたことが分かるのだろうか。
それも多分神様だからだろう。
俺は考えるのを諦めた。
何を言っても多分、同じように返されるだけだろうからな。
「あ、神様ならひとつだけお願いがあるんだけど……」
俺はふと思ったことを頼み込んだ。
この世界で生活していくのに必要なこと。
それは「材料」だ。
小麦粉、卵、牛乳、バター、生クリーム、塩、胡椒など欲しい物がたくさんある。
できればこの世界でも使えるようにしたいからだ。
「わかったよ、僕がその材料がなくなり次第補充するようにしてあげる」
それは助かる。
だって、それがあるのとないのでは俺の生きる目的もなくなってしまうから。
とにかく、これで俺はこの世界でパティシエとして人々を幸せにすることを誓ったのだ。
自分の自宅兼お店に戻る際、少年が肩車をして欲しいとねだってきたのでおぶりながら戻っていった。
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