もつ者は主人公になる

せにな

文字の大きさ
上 下
15 / 15

第十五話 アイス

しおりを挟む
 1階にあるアイス屋に到着した真斗御一行は自分たちが頼むメニューを決め、会計を済ませていた。

「神月くんはなに頼んだの?」
「ストロベリーアイスだねー」
「あっ私と一緒だ!」
「おぉ!まじ!?」
「まじまじ!私達めっちゃ気が合うね~」
「それなー。好きな食べ物だったり、好きなアイスだったり、すごいよな」
「これって運命ってやつ!?」
「だったりしてなぁ~」

 楽しそうに笑みを浮かべながら「運命」という言葉を発した李恋だったが、内心では美夜のことを心配していた。
(せっかく神月くんと出会ったことで美夜の笑顔を見ることができたのに、私がこんなこと言って良いのかな。もし、本当に運命で、私と神月くんが付き合ったら美夜は悲しい顔になったりして……)
 アイスを受け取る真斗と先に席についている美夜を交互に見ながらそんな事を考える李恋。だが、自分の邪悪な思考を消すかのように首をブンブンと振る。
(まず、神月くんが運命の人って考える時点で私がおかしい!まず付き合わないしね!あくまでも気が合う友達!美夜の笑顔のほうが大切だからね!)
 美夜という親友を理由に自分の薄い気持ちを掻き消した李恋は店員に呼ばれたことによって笑顔を顔に戻した。

「神楽坂さんはチョコチップアイスにしたんだー」
「悪い?」
「いやいやいやいやいやいや!悪いだなんて言ってないよー」
「そう。あなたはストロベリーアイスにしたのね。それ、少し酸っぱいよ?」
「あ~俺が甘いの好きだから心配してくれてんだ。でも、それは大丈夫。アイスの中にあるストロベリーの酸味がいい感じにカモフラージュして甘さと酸っぱさを両方楽しめる寸法だからさ」
「……あっそう。それ、李恋も同じこと言ってた……」
「ほほーう。やっぱり俺と白石さん気が合うなー」

 本人がいないところで話題を出す真斗と美夜に、アイスを受け取った李恋が自分の名前が出たことが気になったのか、食い気味に話し掛けてきた。

「なになに?私の話~?」
「そう。神月が李恋と同じ理由でストロベリーアイスを食べてたから」
「やっぱり気が合うね~神月くんと私は」
「ここまで着たら全部一緒じゃないかと思うわよ」
「あははっ、それならめっちゃ笑えるね」
「逆に気持ち悪いけど……」

 李恋の含み笑いに苦笑を浮かべる美夜、そんな2人は楽しそうにアイスを食べ始める。その横ではやはり不満があるのか、龍馬が真斗にもの言いたげに真斗を睨んでいた。

「なぁ神月。なんでお前はそんな軽々と女子と話ができるんだよ」
「え?睨みつけられると思ったらそんなこと?」
「そんなことで悪いかよ」
「別に悪いだなんて言ってないじゃん~」

 言ってから気まずくなったのか、そっぽを向いた龍馬に対し、ニヤニヤと笑みを浮かべる真斗は口を開く。

「そーだなぁ。俺は特に考えてないけど、とりあえず楽しい会話しとけば話が続くよー」
「その楽しい話がわかんないんだよ……」
「んー、相手の好きなものとかに合わせて話してたら行けるよー」
「そのことについて知らない場合は?」
「その時はドンマイ。次があるさ」
「頼りになんねぇ……」

 頼りにならない真斗の意見を聞いた龍馬は呆れ混じりの溜息を吐いてバニラアイスを口に入れたがやはり、あまり甘いものが好きじゃない龍馬は渋い顔をしていた。
 そんな龍馬をたまたま見ていたのか、李恋は声に出して笑い、美夜はバレないように顔を背けて口元に手をおいて笑う。

「な、なんだよ。いきなり笑ってきて」
「い、いやっ。あはっ、俣野くんの顔が面白すぎて、さっ」

 なんとか笑いを堪えようとしながら言葉を口にする李恋だったが、相当面白かったのか、体をプルプルとさせていた。
 李恋の隣では顔を背けて笑う美夜、そして龍馬の隣では李恋以上に笑う真斗。3人からの総攻撃に合う龍馬は顔を赤らめながらも、どこか嬉しそうに顔を逸してもう一口バニラアイスを食べるのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...