46 / 58
料理下手な仮の彼女
しおりを挟む
「ねね!なにすればいい?」
「ほら、勇呼んでるよ?」
「……俺、調子悪い気がする」
「気のせいだから。星澤さん1人で料理させたら、怪我するかもしれないから早く言ってあげて?」
「……はい」
自分の感情が変わりだすことを体調不良だと千咲に訴える勇だが、勝手に冷蔵庫を見始める紗夜と強引に背中を押される千咲によってキッチンに向かうことになる。
「勝手に冷蔵庫見るな」
コテッと頭を優しく叩くと「いだっ」と大げさに頭を抑える紗夜は腰をかがめながら勇を上目遣いに眺める。
「冷蔵庫は家の中でも1番デリケートと言っても過言じゃない場所なんだからな?」
「なんで冷蔵庫がデリケートなの?」
「理由聞くな。今回は俺の優しい心に免じて許してやるが、次はないと思えよ」
「…………人の頭叩く人がなに言ってるの」
「わざと聞こえるように言うな」
頭を抑えたままそっぽを向いた紗夜は、決して小声ではない声で勇に聞こえるように呟いた。無論、聞こえていた勇はツッコミ待ちである紗夜に言葉を返し、今回は頭を叩くことはなかったが、優しく背中を押す。
「それで、やることを伝えるんだったな。お前、なにができるんだ?」
勇の質問とツッコミをされて満足した紗夜は顎に指を当て、んーと自分がなにができるのかを思い出す。
「全部できるよ?」
「……絶対ウソだろ」
「ほんとだって!匠海に『上手すぎるからもう二度と料理しなくていいよ』って言われたぐらいだもん!」
「………………………………そ…………っか…………」
紗夜の純粋な気持ちに水を差す事もできない勇は匠海をジッと睨み、1つ溜め息をつく。
「え、なに?私、変なこと言ったかな」
「いや、別に変なことは言ってないよ。可哀想だなと思っただけ」
「だよね。二度と料理しないでいいよは流石に私を褒め過ぎだよね。料理が上手なのは知ってるけどそんな褒めなくてもね」
「…………お前ポジティブで良いな」
「ありがと~。匠海にもよく言われる」
「そっすか……」
「うん~」
あまりにも純粋さに眉間を指で抑える勇は悲しさもあり、これからの心配もしていた。
(終わったぁあ……!こいつ、絶対料理できないやつじゃん。実質俺一人でハヤシライス作ることになるじゃん)
「カレーにしとけばよかったぁ……!」
思わず、心の中だけでとどめておこうとしていた言葉が口からこぼれ、台所の前で左右に体を振っていた紗夜の動きがピタッと止まった。
「え?カレーにしとけばよかったってどういうこと?」
「……いや、別に深い意味じゃないけど……」
「けど?」
「……朝、次は私が作ってあげるって言ったじゃん?それで、なら今回は俺の好物であるカレー作ってもらえばよかったなぁ~って意味でして……」
探り探りに言葉を口から出していく勇の言い訳はかなり完成度が高く、目を泳がしていたのにも関わらず嘘だということがバレることはなかった。
「あ~確かに。なら私1人でカレー作ろっか?」
「いややめとく。器具の場所とかわからないだろうから今回はハヤシライスで我慢しとく」
即答だった。紗夜が提案を持ちかけたときには勇の口は開いており、紗夜が言い終わると同時に言葉を発した勇は冷蔵庫から食材を取り出しながら、またもや言い訳を並べた。
「それもそっか。ならハヤシライス頑張っちゃお~」
「……今回は大変になりそうだな」
紗夜には聞こえない声でそう呟いた勇は食材を台所に置き、米を炊くために内釜を取り出す。
「ほら、勇呼んでるよ?」
「……俺、調子悪い気がする」
「気のせいだから。星澤さん1人で料理させたら、怪我するかもしれないから早く言ってあげて?」
「……はい」
自分の感情が変わりだすことを体調不良だと千咲に訴える勇だが、勝手に冷蔵庫を見始める紗夜と強引に背中を押される千咲によってキッチンに向かうことになる。
「勝手に冷蔵庫見るな」
コテッと頭を優しく叩くと「いだっ」と大げさに頭を抑える紗夜は腰をかがめながら勇を上目遣いに眺める。
「冷蔵庫は家の中でも1番デリケートと言っても過言じゃない場所なんだからな?」
「なんで冷蔵庫がデリケートなの?」
「理由聞くな。今回は俺の優しい心に免じて許してやるが、次はないと思えよ」
「…………人の頭叩く人がなに言ってるの」
「わざと聞こえるように言うな」
頭を抑えたままそっぽを向いた紗夜は、決して小声ではない声で勇に聞こえるように呟いた。無論、聞こえていた勇はツッコミ待ちである紗夜に言葉を返し、今回は頭を叩くことはなかったが、優しく背中を押す。
「それで、やることを伝えるんだったな。お前、なにができるんだ?」
勇の質問とツッコミをされて満足した紗夜は顎に指を当て、んーと自分がなにができるのかを思い出す。
「全部できるよ?」
「……絶対ウソだろ」
「ほんとだって!匠海に『上手すぎるからもう二度と料理しなくていいよ』って言われたぐらいだもん!」
「………………………………そ…………っか…………」
紗夜の純粋な気持ちに水を差す事もできない勇は匠海をジッと睨み、1つ溜め息をつく。
「え、なに?私、変なこと言ったかな」
「いや、別に変なことは言ってないよ。可哀想だなと思っただけ」
「だよね。二度と料理しないでいいよは流石に私を褒め過ぎだよね。料理が上手なのは知ってるけどそんな褒めなくてもね」
「…………お前ポジティブで良いな」
「ありがと~。匠海にもよく言われる」
「そっすか……」
「うん~」
あまりにも純粋さに眉間を指で抑える勇は悲しさもあり、これからの心配もしていた。
(終わったぁあ……!こいつ、絶対料理できないやつじゃん。実質俺一人でハヤシライス作ることになるじゃん)
「カレーにしとけばよかったぁ……!」
思わず、心の中だけでとどめておこうとしていた言葉が口からこぼれ、台所の前で左右に体を振っていた紗夜の動きがピタッと止まった。
「え?カレーにしとけばよかったってどういうこと?」
「……いや、別に深い意味じゃないけど……」
「けど?」
「……朝、次は私が作ってあげるって言ったじゃん?それで、なら今回は俺の好物であるカレー作ってもらえばよかったなぁ~って意味でして……」
探り探りに言葉を口から出していく勇の言い訳はかなり完成度が高く、目を泳がしていたのにも関わらず嘘だということがバレることはなかった。
「あ~確かに。なら私1人でカレー作ろっか?」
「いややめとく。器具の場所とかわからないだろうから今回はハヤシライスで我慢しとく」
即答だった。紗夜が提案を持ちかけたときには勇の口は開いており、紗夜が言い終わると同時に言葉を発した勇は冷蔵庫から食材を取り出しながら、またもや言い訳を並べた。
「それもそっか。ならハヤシライス頑張っちゃお~」
「……今回は大変になりそうだな」
紗夜には聞こえない声でそう呟いた勇は食材を台所に置き、米を炊くために内釜を取り出す。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた
ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。
俺が変わったのか……
地元が変わったのか……
主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。
※他Web小説サイトで連載していた作品です
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる