自分隠しのナルシスト達は付き合いたくないようなので、告白します。

せにな

文字の大きさ
上 下
31 / 58

これからは2人の問題②

しおりを挟む
   ♤ ♤


 1枚の壁を挟んだ隣の部屋から星澤さんの叫び声が聞こえてくる。
「朝なのによく声を出すなぁ」なんて思いながら右手にコントローラーを持って疲れ切った目と指を休めるようにだらんとベッドにもたれかかる。

「やっと聞こえてきたな……」

 すると隣で同じようにコントローラーを握った匠海がニヤつきながら天井を見上げてそう呟いてくる。
 そんな匠海と同じようにワタシもニヤつきながら言葉を返す。

「そうだねぇ~成功したね~」
「よっしゃーやっと寝れるー!」

 ベッドから背中を離して伸びをする匠海を見ながらワタシはテレビの電源を消しに立ち上がる。

「寝るならワタシのベッドで寝ていいよ~ワタシもベッドで寝るけどね」
「寝ないよ。地面で寝るから」

   冷たい言葉で返してくる匠海は未だに伸びをしている。
 それにつられてワタシも大きく伸びをしながら口を開く。

「そんな事言わなくていいのにさ~」
「あー……じゃあ」

 やっと伸びを終えた匠海がワタシのベッドの前に立つと、片膝だけベットに上げて何かを取ろうとする。

「お?ワタシのベッドで寝る気になったの?」
「寝ねーよ。これもらうだけ」

 呟きながら匠海はワタシのベッドからたった1つの枕を手にとってそのままカーペットの上に寝転ぶ。
 そんな匠海にワタシは険しい顔を浮かべながら匠海の側へと近づいていく。

「枕取るならベッドで寝ればいいのに」
「だから寝ないって。それじゃおやすみ」
「そんな事言わずに一緒に寝よや~」

 匠海の肩を揺らしながらベッドで寝ることを誘うけど、ワタシを無視して無言を貫かれてしまう。
「面白くないー」と言いながら軽く肩を叩いてワタシはベッドの上からたった1枚の毛布を取る。

「ならワタシもこっちで寝るからねー」

 匠海に毛布をかけ、ワタシもその毛布に潜り込んで自分の腕を枕代わりにカーペットに寝転ぶ。
 結局2人で寝るならベッドで寝ろよ、とツッコまれればワタシに反論の余地はないが、今のワタシはオールしてしまったせいでテンションがおかしくなり、この考えに至ってしまった。
 普段から人との距離感がバグっているワタシ達なら特に気にすることはないものの、普段からこういうことをしていると変な噂が立つので今日が最初で最後かもしれない。
これがバレたら最初もクソもないんだけど……。

「一緒に寝ることは誰にも言わんから安心して大丈夫。千咲も言うなよ?」

 ワタシの思考を推測してきたのか、匠海がそう言ってくる。
 この男は本当に頭が冴えている。ワタシの元彼のことと言い、ワタシのさくせんのことと言い、推測だけでワタシの思考を読み取ってくるのはものすごい才能だと思う。正直ワタシよりも天才かもしれない。

「言わないよ」
「そりゃどうも」

 そう呟いた匠海はワタシの後頭部に柔らかいなにかを押し付けてくる。
 それを素直に受け取ったワタシは匠海と背中が当たるぐらい近づき、

「半分こね」
「……どうも」

 1つの枕にワタシと匠海は頭を置き、背中から感じられる温もりに一気に眠気が押し寄せてくる。

「じゃあおやすみ匠海」
「おやすみ千咲」

 まるでカップルかのような会話をしたワタシ達はゆっくりと目を閉じていく。
 そんな中、ワタシは深夜のことを思い出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...