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お泊まり②
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「オムライスきぼうー」
勇と星澤さんを無視して呑気に食べたいものを言ってくる匠海。
「あーいいね。ならせっかくだしみんなで作ろっか」
手を洗いながらみんなに提案するけど、勇や星澤さんに限らず匠海までもが無言になってしまう。
そんな態度に首を傾げるワタシに匠海が目を逸らしながらワタシとは別の提案を出してくる。
「4人で作るのもいいけど、狭いと思うからオレと千咲だけで作らね?」
匠海からのいきなりの裏切りにワタシは少し顔を歪めてしまうが、すぐに取り作り直して勇に手招きをする。
「そんな事言わずに~。ほら勇もおいで~」
拒否権のない勇はワタシの顔を見上げるように睨みつけながら無言で流し台へと移動し、ワタシと入れ違いで手を洗い出す。
すると手を洗い終えたワタシのことをジトッとした目を向けてくる匠海。
「オレの案は……?」
「ゲームで負けた人の案なんて通りませーん」
裏切られたことに怒ったワタシはぷいっと匠海から顔を背けながら言葉を返す。
そんなワタシの態度を見た匠海は溜息を吐きながら「仕方ないなー」と呟き、キッチンに向かってくる。
「そこに立ってないで星澤さんもおいでー」
ワタシが手招きをしながら星澤さんを誘うけど、言葉を返してくるのは匠海だった。
「姉さんはほんの少しだけ、ほんっとうに少しだけ料理が苦手だから……」
「あー……なるほど」
ようやく匠海の案の意味を理解したワタシは眉間に親指を当ててしまう。
こりゃやっちまったな。今からでも勇を外そうか──
ワタシがそんな事を考えていると、手を洗い終えた勇から、
「──フッ……」
星澤さんには聞こえないよう嘲笑うかのように鼻を鳴らす。
そんな勇にワタシとキッチンに到着した匠海が目を見開いて凝視してしまう。
え、今鼻で笑ったよね。え、え?鼻で笑った?
あまりのことに動揺が隠しきれないワタシは心の中で自問自答をしながら匠海と勇の顔を交互に見やる。
どうやら匠海も同じようでワタシと同じようにワタシと勇の顔を交互に見ている。
そんなワタシ達を仲裁したのは椅子から立ち上がった星澤さんだった。
「本当に申し訳ございません。家に泊めさせてもらってご飯も作ってもらって……よかったら手伝いますよ?」
その言葉で正気に戻ったワタシは頭を下げる星澤さんに言葉を返そうと体を向ける。
だがワタシよりも先に匠海が言葉を返す。
「いや姉さんは手伝わなくていいよ。家でオレと練習してから彼氏にご飯作ってあげようね」
微笑みながら言葉を口にすると、隣りにいる勇がわかりやすく顔をしかめる。
髪で顔は見えないけど、星澤さんも同じような顔してるんだろな……。
思わず苦笑を浮かべてしまうワタシは星澤さんに声をかける。
「夕飯はワタシ達が作るからテレビでも見ててー?」
「あ、はい……ありがとうございます」
少し声色が強張っていたが、星澤さんは顔を俯けたままソファーに座ってテレビを見始める。
そんなに俯いていたらテレビ見えないでしょ、というツッコミは心の中に閉まってワタシは冷蔵庫から食材を取り出す。
勇と星澤さんを無視して呑気に食べたいものを言ってくる匠海。
「あーいいね。ならせっかくだしみんなで作ろっか」
手を洗いながらみんなに提案するけど、勇や星澤さんに限らず匠海までもが無言になってしまう。
そんな態度に首を傾げるワタシに匠海が目を逸らしながらワタシとは別の提案を出してくる。
「4人で作るのもいいけど、狭いと思うからオレと千咲だけで作らね?」
匠海からのいきなりの裏切りにワタシは少し顔を歪めてしまうが、すぐに取り作り直して勇に手招きをする。
「そんな事言わずに~。ほら勇もおいで~」
拒否権のない勇はワタシの顔を見上げるように睨みつけながら無言で流し台へと移動し、ワタシと入れ違いで手を洗い出す。
すると手を洗い終えたワタシのことをジトッとした目を向けてくる匠海。
「オレの案は……?」
「ゲームで負けた人の案なんて通りませーん」
裏切られたことに怒ったワタシはぷいっと匠海から顔を背けながら言葉を返す。
そんなワタシの態度を見た匠海は溜息を吐きながら「仕方ないなー」と呟き、キッチンに向かってくる。
「そこに立ってないで星澤さんもおいでー」
ワタシが手招きをしながら星澤さんを誘うけど、言葉を返してくるのは匠海だった。
「姉さんはほんの少しだけ、ほんっとうに少しだけ料理が苦手だから……」
「あー……なるほど」
ようやく匠海の案の意味を理解したワタシは眉間に親指を当ててしまう。
こりゃやっちまったな。今からでも勇を外そうか──
ワタシがそんな事を考えていると、手を洗い終えた勇から、
「──フッ……」
星澤さんには聞こえないよう嘲笑うかのように鼻を鳴らす。
そんな勇にワタシとキッチンに到着した匠海が目を見開いて凝視してしまう。
え、今鼻で笑ったよね。え、え?鼻で笑った?
あまりのことに動揺が隠しきれないワタシは心の中で自問自答をしながら匠海と勇の顔を交互に見やる。
どうやら匠海も同じようでワタシと同じようにワタシと勇の顔を交互に見ている。
そんなワタシ達を仲裁したのは椅子から立ち上がった星澤さんだった。
「本当に申し訳ございません。家に泊めさせてもらってご飯も作ってもらって……よかったら手伝いますよ?」
その言葉で正気に戻ったワタシは頭を下げる星澤さんに言葉を返そうと体を向ける。
だがワタシよりも先に匠海が言葉を返す。
「いや姉さんは手伝わなくていいよ。家でオレと練習してから彼氏にご飯作ってあげようね」
微笑みながら言葉を口にすると、隣りにいる勇がわかりやすく顔をしかめる。
髪で顔は見えないけど、星澤さんも同じような顔してるんだろな……。
思わず苦笑を浮かべてしまうワタシは星澤さんに声をかける。
「夕飯はワタシ達が作るからテレビでも見ててー?」
「あ、はい……ありがとうございます」
少し声色が強張っていたが、星澤さんは顔を俯けたままソファーに座ってテレビを見始める。
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