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作戦実行③

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 聡善さんが言う家の前に近づいてくると、タイミングよくポツポツと雨粒が落ちてくる。

「あれ、雨?」

 この事を知っていたのにも関わらず、聡善さんはなにも知らなかったかのように呟き、空を見上げる。
 それにつられてオレも空を見上げると、ポツポツと降っていた雨粒はどんどん勢いを増していく。

「これ結構やばくね?」
「かなりやばいかもね。とりあえず落ち着くまでワタシの家で雨宿りする?ここからもうすぐだし」

 自然な流れで聡善さんがそう提案すると、反応したのはオレでもお兄さんでもなく、姉さんだった。

「いやそれはやめておきます。流石に迷惑が過ぎますから」

 表では慌てる素振りを見せる姉さんだったが、内心は相当怒っているだろうな。
   早くお兄さんと離れたいって心の中で思っているのだろうけど、そう簡単に話すわけがなかろう。
 当然姉さんが否定的な言葉を言ったのなら彼氏であるお兄さんも姉さんのフォローに回る。

「そうだよ千咲。親も心配するだろうから帰ってもらうほうがいいよ」

 そんな否定的な2人に聡善さんは「まぁまぁ」と言いながら話し始める。

「2人とも恋人同士なんだから気にすることないでしょー?」

 それに続いてオレも言葉を足す。

「そうだよ。それに今週は親出張だし」
「ワタシのところも親が出張だから遅くまで雨宿り出るよー」

 オレ達の主張を聞いた2人だが、相当意思が硬いのか中々肯定してくれない。
 まぁ否定的になるのは予想済み。ここからは聡善さんが提案したあれで乗り切ろう。
 オレと聡善さんは顔を見合わせ、頷き合った後にオレは姉さんに、そして聡善さんはお兄さんの耳元に口を近づける。

「姉さんのメイクのこと千咲には全てバレてるから言動には注意したほうがいいよ。下手したらお兄さんにもバレるよ」

 脅しの言葉を囁いたオレと聡善さんは耳元から離れ、二人の様子を観察する。
 当然自分のメイクのことをバレたくない2人なら答えは、

「「わかった……」」

 申し訳無さはあるが、これも2人のためなんだ。きっと将来的には幸せになれるはずだからさ。

 姉さんとお兄さんはしかめっ面をオレたちに向けてくるけど、そんなのは無視してオレと聡善さんはルンルンで家の中に入っていく。
 その後に続きながら2人も渋々と玄関をくぐる。
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